プライバシーを考慮した北側道路の家・三浦尚人建築設計工房 三浦尚人さん


 
北側道路の土地の場合、玄関やカーポートといった日当たりを必要としないスペースが北側に配置されるケースが多く、反対にリビングやダイニングスペースといった家族団欒スペースで採光が重要視される空間を南側に配置することが容易になります。
 
北側道路の土地について三浦尚人建築設計工房 三浦尚人さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー 三浦尚人建築設計工房 三浦尚人 の写真
練馬区石神井町1-15-16-203
03-6326-2141

 

北側道路のメリット・デメリットを教えてください

 
メリットとしましては、一般的な住宅地では、真北からの北側斜線制限と道路側からの道路斜線制限の二つの斜線制限を受けますが、この場合、<北道路>の土地は、真北から北側斜線制限を、同じ北側から道路斜線制限を受けるので、建築可能な空間ボリュームは北側からのみ制限を受ける分大きくなり、設計の幅が広がります。
 
また、北側道路ですと、玄関やカーポートといった日当たりを必要としないスペースが北側に配置されるケースが多く、反対にリビングやダイニングスペースといった家族団欒スペースで採光が重要視される空間を南側に配置することが容易になります。
 
一方、デメリットは、庭が隣地に面するケースが多くなるため、隣家からの視線を遮るための対策が必要です。と同時に庭を介して室内の採光や風通しを確保するので、ある程度の広さの庭を設けること、その庭と調和の取れた建物の配置も考慮しなければなりません。
 

北側道路の家の間取りで工夫している点がありましたら教えてください

 
日当たりを必要とされない玄関をはじめ、シューズクローゼットや納戸、ウォークインクローゼット等の収納スペースを出来るだけ北側や西側に配置します。
と言いましても、北側だからといって採光が望めないわけではなく、あくまでも直射日光が入らないだけで北側はむしろ日中一定の明るさを確保出来るので、書斎や家事室、趣味室といったスペースに向いています。
 
ただし、北面に大きな窓を設けると道路からの視線が気になるので、窓の位置や大きさを考慮したりトップライト(天窓)を設けたり、目隠し用のルーバーや格子、植栽などで対処します。
 

 

北側道路の家で日当りを確保するために注意している点を教えてください

 
上記の回答と重複しますが、家族団欒スペース(リビング・ダイニング等)に面するかたちで日当たりと風通しを確保するための庭を配置することです。
 
その庭も大きく一箇所にしてそこから採光を取り込むのか、それとも中小程度の庭を二箇所ぐらいに分散して採光を取り込むほうが良いのかといった点もプランニングする上で検討していきます。
 

北側道路の家の外構で工夫している点がありましたら教えてください

 
この点については、特に北側道路だからと言ってとりわけ工夫している点はありませんが、強いて挙げるとするならば道路境界に面した部分の植栽は、日陰でも育つものや花や実が付く樹木などを選んだり、道路側には単なるブロック塀やメーカー既成品によるフェンスは極力避け、住宅デザインと調和の取れたオリジナルな外構にすることです。
 

北側道路の家の庭で工夫している点がありましたら教えてください

 
これも上記の回答と重複しますが、北側道路の土地の場合、庭は東あるいは南に設けるケースが多く隣地と面するため、プライバシーを考慮した対策が必要となります。
したがいまして、垣根や植栽、デザインされた格子やフェンス等による目隠しを施すようにしています。
 

 

北側道路の家の外観で注意している点を教えてください

 
この点についてもとりわけ北側道路の家だからということで注意している点はないですが、湿式工法による吹付けや左官の外壁の場合、直射日光が当たらない北側外壁面を考慮した色使いに注意を払います。
 

北側道路の家の斜線制限で注意している点を教えてください

 
道路幅員が狭い場合、北側斜線制限よりも道路斜線制限の影響を受けるので、建物の位置を道路境界からある程度の距離を離すことでクリアするように気をつけています。
 

北側道路の家の駐車場で工夫している点がありましたら教えてください

 
特に北側道路の家だからということで駐車場について工夫している点はありません。
 

「借景を取り込んだ家」の設計で工夫した点を教えてください

 
周りには驚くほど緑が豊かに残っており、傾斜によって敷地から東側の公園に向かって低くなっているため2階北側のテラスからは隣家や公園の樹木が借景として眺めることができ、あたかも公園が自分達の庭であるような気分にさせてくれるようなプランと開口部にしました。
 
土地の地盤レベルが北側道路面から少し高くなっていたので、道路の正面に玄関ドアがありますが、道路から高い位置にあるため通行する人とも視線が合いません。
また、2階北側テラスの道路側に面する部分をアルミアングル材によるルーバーで覆うことで内外に対して圧迫感を与えずに風を通しつつプライバシーも確保しています。
 
見晴らしの良い2階にリビング・ダイニング・キッチンといった家族団欒スペースと子供室を、1階にご主人の書斎とプライベートスペースである寝室を真ん中に配した廊下と階段でつなぐプランになっていて、寝室と浴室、洗面脱衣室は南側に設けた庭に面しています。
 
南側に設けた庭もある程度の広さを確保し、敷地境界には垣根を設けてシンボリックな落葉樹を植えることで夏は日差しの強い直射日光を遮り、冬は暖かい日の光を室内へ取り込むようにしました。
 
内玄関から1階室内すべての段差を無くしているため、玄関扉を開けて入ると上がり框の無い白いタイル貼りの玄関廊下がまっすぐに伸び南側の庭へと続いています。
 
2階リビング南のハイサイドライトと階段上部のスリット窓からの光が1階の玄関・廊下へと差込み、とかく暗くなりがちな中廊下式プランの欠点を解消しています。
 

 

北側道路の土地に家を建てたい方にアドバイスがあればお願いします

 
不動産の観点から言わせると、北側道路の土地は最も不動産価値の高いと言われる「南側道路」の土地よりもだいぶ評価は低いですが、むしろこちらのほうがメリットは多く、希望に沿った住まいが実現する可能性が高いと思います。
 
しかも土地の価格が安い分、住まいのほうに予算配分をより多く振り分けられます。
 

ハウスメーカーではなく、貴社に北側道路の家の設計を依頼するメリットを教えて下さい

 
ハウスメーカーの住宅は、決められたモジュールの範囲内での自由設計であり、ある程度型にはまったプランになってしまうのに対して、私どもの設計事務所は、その土地に住まわれる建て主のための唯一無二のオンリーワン住宅で、同じ北側道路の土地であっても広さも異なれば、場所、敷地形状、道路幅員、周辺の住環境などといった様々な条件が異なる土地に、異なる家族構成と生活スタイル、趣向をお持ちになる建て主のためだけに設計を行うので、この点が私どもの設計事務所へ依頼する唯一かつ最大のメリットであると考えます。
 

建築家紹介センターで掲載していただいている設計事例のうち、「北側道路の家」に該当する作品は、どれでしょうか?

 
・「借景を取り込んだ家」
・「ギャラリーのる二世帯住宅」
・「旗竿地のコートハウス」
の3作品です。
 

三浦尚人建築設計工房 三浦尚人さんの北側道路・設計事例

 

画像 建物の名称 紹介文
旗竿地のコートハウス

敷地の東南に大きな中庭を設け、それを囲むように片流れ屋根の平屋建てと切妻屋根の二階建てを組み合わせたL字型のコートハウスにして、採光と風通しを確保するプランにしました。

借景を取り込んだ家

公園の入り口につながる幅員が4mに満たない北側道路に面して建つ夫婦と子供1人の3人家族のための住宅です。

ギャラリーのある二世帯住宅

二世帯住宅とギャラリースペースからなるコンクリート打ち放しの2階建てのオール電化住宅です。
最寄り駅から続くバス通りから少し入った閑静な住宅街にこの住宅は建っています。