プライバシーも両立する 日当たりの良い家づくり・てらさき建築設計 寺崎悠真さん


日当たりは明るさや暖かさだけでなく、季節や時刻によって移ろう光の表情を感じられるという点でも、暮らしの豊かさに直結する要素です。
方角にとらわれず、隣地との隙間や上空の空間を活かす工夫、そしてプライバシーとの両立をどう図るかが設計の腕の見せどころになります。
日当たりについててらさき建築設計 寺崎悠真さんに伺いました
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー てらさき建築設計 寺崎悠真 の写真
金沢市長坂2-6-6
0762595734

貴社が「日当たり」を特に重視した設計に力を入れるようになったきっかけを教えてください

 
特にきっかけがあったというわけではなく、やはり日当たりや風通しの良さは快適な住空間をつくる上で必要不可欠な要素だと考えています。
 
ただ僕自身がこれまで、じめじめしたワンルームマンションから大きな庭のある戸建てまで様々なタイプの家にすむ中で、日当たりの良し悪しで暮らしの快適さ豊かさが全く違うことを実感してきたことは大きいかもしれません。

家づくりにおいて日当たりがなぜそれほど重要なのか、日当たりを軽視してしまうとどんな後悔につながりやすいか教えてください

 
日当たりから享受できるものとしてまず明るさと暖かさが挙げられますが、その重要性は生物としての健やかさにも関わる根源的なものです。
それに加えて私が特に大切だと考えているのが、様々な光の変化を感じられることです。季節、天気、時刻によって家の中に入り込む光の表情は全く違います。
その違いを感じられること、時間の流れを感じられることも、実は日常を豊かにするとても大切なものだと考えています。
 
ですので、日当たりを軽視するということは、そこでの暮らしの健やかさと豊かさを軽視することと同義だと言えます。
たとえ空調が完備されて便利な設備が充実した空間であっても、全く日当たりが無ければ、そこは健やかで豊かな空間だとは言えないはずです。

「南向きの土地が一番日当たりが良い」というイメージがありますが、方角と日当たりの本当の関係について教えてください

 
南向き(道路が南側)の土地が日当たりが良いのは間違いないです。
ですが、日当たりの良い快適な住まいを作りやすいかと言えば、必ずしもそうとは言えません。
例えば南側に道路があるということは、1階を無防備に南に開くことはできませんし、車を置く場所との関係も考える必要があります。
また、南面の窓からは一日中強い日差しが入ることになるので、しっかり日射をコントロールすることも不可欠となります。
 
一方で、北面に設けた窓からは一日中穏やかで安定した明るさが得られますし、東面からは朝の爽やかな光を入れることができます。
西日は嫌われがちですが、うまくコントロールすれば暗くなりがちな夕刻に明るさだけを取り入れることもできます。
南向きの土地の方が日当たりの良い家を作りやすい、というのは半分正解ですがコントロールは不可欠ですし、どの方角を向いていようが工夫次第で日当たりを得ることはできます。
このあたりは建築家に腕の見せどころですね。

住宅密集地や狭小地など、周囲の建物に囲まれた敷地で日当たりを確保するために、どのような設計上の工夫をされていますか?

 
たいていの敷地には、どこかに日当たりを得るための拠り所があります。
それは隣地との隙間であったり、隣家がセットバックした部分であったり。その拠り所からの日当たりをいかに最大化できるか、いかに家全体に広げられるかを考えます。
 
そして敷地外周に拠り所が一切無くても、必ず上空は空いています。
敷地に余裕があれば中庭や坪庭のような空間を作れますし、屋根や外壁の形状を工夫して、隙間やズレから光を取り込むこともできます。

隣の家との距離が近い敷地で、プライバシーを保ちながら光を取り込むために意識していることはありますか?

 
隣家や通りを歩く人の視線と高さをずらす、という操作はよく行います。
例えば道路に面した掃き出しサッシも、道路より1.5m上がるとプライバシーが保てます。
スキップフロアの構成にするとこのような操作が可能になります。
 
また、私たちの事務所では障子をよく採用します。
障子は、プライバシーをしっかり確保できる、光を拡散して空間全体を柔らかく明るくしてくれる、開けていても閉めていても美しい、という利点があります。
ブラインド等よりも操作感が軽いという長所もあります。

むやみに窓を設けると、結局カーテンを閉めっぱなしで過ごしてしまうという結果になりかねません。
できるだけカーテンに頼らず、プランや開口部の作り方の工夫でコントロールするようにしています。

「長坂の浮輪」では、中庭型にするとプライバシーは守れても日当たりが望めないという課題に対し、住居部分をロの字形に持ち上げるという大胆な解決策を取られていますが、このアイデアに至った経緯を教えてください

 
この住宅では、大きな庭を敷地内にどう確保するか、そしてその庭にいかに住空間を開き、日当たりとプライバシーを確保するかがテーマでした。
まず、北東側に道路、それ以外の三方は隣家が近接しているという立地から、中庭型のプランが導かれました。
日当たりの観点からは、メインの住空間は2階に、それ以外の空間(客間、事務所、倉庫など)を1階に設けるという構成が素直です。
 
ですがそのままでは、建物自身が庭に大きく影を落とす上、住空間と庭との繋がりも得られません。
試行錯誤する中で、中庭に土を盛り南向きに傾斜する丘をつくるというアイデアに辿り着きました。
2階のエントランスへのアプローチとなる丘にはさんさんと日が当たりますし、住空間は丘に大きく開いて庭と繋がりながら、周囲の視線からは守られています。
辿り着いたプランはスタンダードなものではないですが、求めていたものはごくごくスタンダードな内容で、それをこの立地の中で最高の形で叶えようと検討していった結果このような住宅になりました。

「臼井の家」ではノコギリ屋根に3つのトップライトを設け、光をレフ板のように柔らかく家全体に落とす工夫をされていますが、天窓(トップライト)を使う際に気をつけていることはありますか?

 
臼井の家でノコギリ屋根に設けている窓は、正確にはハイサイドライトと呼ばれるものになります。
トップライト(天窓)は、以前より止水性能が大きく向上していると言われていますが、それでも雨漏れの要因になりやすいですし、金沢など多雪地域では積雪時には塞がってしまうので極力採用しません。
 
やはり開口部は雨を垂直に受けない外壁面に設けるべきだと考えています。
その考えに則って、臼井の家では空間のボリュームをノコギリ状に突出させ、その刃の部分に開口部を設ける形をとりました。

「上目黒の家」のようなリノベーションで、既存の建物の日当たりや通風を改善する際、新築とは違う難しさや工夫があれば教えてください

 
リノベーションの場合、日当たりや通風の悪さが具体的な問題として顕在化しているケースがほとんどです。
どんよりした部屋になっている、壁のカビや傷みに繋がっている、カーテンを開けられない、などです。
 
ですので、まずは問題解決型のアプローチになることが多いですね。
そこから先は、立地の特性、周辺環境をよく読んでより豊かな空間をつくる工夫をこらす、という点で新築と大きな違いはありません。

「建築基準法の日影規制」など、日当たりに関わる法律上の制限について、設計の際にどのように向き合っていますか?

 
建築基準法において日当たりに関わる規制としては、「日影規制」と「採光基準」があります。
 
「日影規制」については計画建物が周辺の日照に与える影響について規制するものなので、あくまでその規制の範囲内で建物を計画するという基本的な法適合対応が基本となります。
また、一定の高さ以上の建物にかかる規制なので、一戸建ての住宅で日影規制がかかるケースはほとんどありません。
 
次に「採光基準」についてですが、これはあくまで法律で定められている最低限の基準ですので、実際の明るさや快適性を担保するものとは考えていません。
採光基準は満たした上で、その基準とは違う様々な観点から、明るさ、気持ちよさ、豊かさを検討しています。

設計の段階で、実際に日当たりのシミュレーションはどのように行っていますか?

 
CAD等でのシミュレーションも行いますが、模型での検討を重視しています。
建物全体の1/50の模型で検討することもありますし、開口部の詳細を検討するために1/30や1/10といった部分模型を作ることもあります。
アナログですが、実際に模型を敷地に持ち込んで光の入り方を検証すると、お客様にも実感していただきやすいですね。

「日当たりが心配な土地しか見つからない」と悩んでいる方に向けて、アドバイスをお願いします

 
これまでの経験上、どんな土地であっても日当たりを確保する手掛かりは必ずあります。
その手掛かりからどのようにアイデアを展開して、快適で豊かな住空間を実現するか、そこはまさに建築家が得意とするところかと思います。
日当たりなどの条件が難しい土地ほど、建築家にご相談されるのが良いかと思います。

貴社に設計・監理を依頼できるエリアを教えてください

 
当事務所は石川県金沢市を拠点としています。
2022年までは東京に事務所を構えていたということもあり、北陸三県と東京神奈川でのプロジェクトが多いですが、基本的に全国どこでも対応可能です。
 
この記事の中でご紹介した「長坂の浮輪」は私の自宅兼事務所なので、いつでも見学していただけます。
日当たりについての課題を解決されたい方には参考になるかと思います。
ぜひお気軽にお越しください

てらさき建築設計 寺崎悠真さんの日当たり・設計事例

 

画像 建物の名称 紹介文
長坂の浮輪

『いかに明るくおおらかな庭と住まいをつくるか』
敷地は350年前ほど前に開村した閑静な住宅地。はす向かいには神社があり、前面を小さな用水が流れています。車の無い時代のまちの構造がそのままのスケールで残っており、親しみのある雰囲気が漂います。

臼井の家

『原っぱのような家』
建主さんからのリクエストは「原っぱのようなおおらかな家」でした。

上目黒の家

『大家族が付かず離れず気持ちよく暮らせる家に』

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