木造耐火建築物は高齢者の転倒事故などにおいて大変優しい構造・株式会社ヨシダデザインワークショップ 吉田明弘さん


 
木造耐火建築物は断熱性が高くて木の発する内部の空気は大変暖かく、床も振動を柔らかく人の歩行を受け止めます。特に高齢者の転倒事故などにおいて大変優しい構造です。
 
木造耐火建築物について株式会社ヨシダデザインワークショップ 吉田明弘さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー 株式会社ヨシダデザインワークショップ 吉田明弘 の写真
東京都文京区本駒込5−2−5フローラ本駒込101
03-6902-0108

 

貴社が木造耐火建築物を手がけるようになったきっかけを教えてください

 
2011年に山口市内の法人様から大規模な高齢者施設を耐火木造とすることで、高齢者に優しい温かみのある建築を実現し、地球環境や地域の林業の活性化に貢献したいというご要望がありました。
 
私どもはこれまで多く実現している2×4による耐火木造よりも開口部が大きく取れ、設計上の自由度が高い在来軸組工法による耐火木造の実現を提案したところご採用頂けました。 
当時は大きな軸組による耐火建築の事例が少なく大変チャレンジングな仕事でしたが、その革新性に対して国庫補助をもらうなど私にとって木造の将来を考える良い機会になりました。
 

 

耐火建築物とはなんですか?

 
耐火建築物とは、特殊建築物や防火(準防火)地域内で一定の規模以上の建物の主要構造部が耐火構造(法令で定められた一定時間内に建物の倒壊や、周囲への延焼を防ぐ造り)であるものや耐火性能検証法等により火災が終了するまで耐えられることが確認されたもので、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸等を有する建築物のことをいいます。
 

木造で耐火建築物が作れるのでしょうか?

 
木造でも可能です。
メンブレン型(被覆型)と燃え止まり型があり、一般的な不燃ボードで構造材を覆うメンブレン型では木造軸組工法、枠組壁(2×4)工法とも大臣認定を受けた工法があります。
 
現在では住宅や共同住宅の実例も増え大変実施しやすい状況となっています。燃え止まり型は木材を見せる表現が可能ですが、大規模建築に適している工法で種類も多く個別に検討を要するものです。
 

耐火建築物を木造で作るメリットを教えてください

 
木造と言うと「安いのでは?」と誤解されますが、一般的な鉄筋コンクリート による耐火構造と変わらないか場合によってはそれよりも高くなります。
 
ではメリットとはなんでしょうか。
木造は二酸化炭素の固形化による地球温暖化を抑止し、地域によっては木材の入手が有利で、地域産業の活性化にも繋がります。
つまりオーナー様が積極的に社会貢献できる構造なのです。
 
また、木の構造を被覆材(ボード)で覆ってしまう木造耐火構造は見た目は鉄筋コンクリート造となんら変わりません。
しかし、実際に建ててみなければわからないメリットが見えてきます。断熱性が高くて木の発する内部の空気は大変暖かく、床も振動を柔らかく人の歩行を受け止めます。
特に高齢者の転倒事故などにおいて大変優しい構造です。
よく「空間がやわらかい」と表現しますが、体験しなければ分かり難いものです。
 
また、大規模施設で燃え止まりを採用した場合は木の素材がそのまま表れた温かみのある空間が可能になります。
  

省令準耐火とはなんですか?

 
省令準耐火と耐火構造・準耐火構造は全く別物です。
 
耐火構造や準耐火構造が建築基準法に基づいた建築の基本的性能を定めていることに対して、省令準耐火はもともとは2×4住宅向けの構造ですが、一般の木造住宅よりも少しだけ耐火性能を高める(15分の耐火性能など)ことで火災保険料の料率計算時に割安とするものです。
財務省・国交省の省令で定められた構造となります。
 

防火地域とはなんですか?

 
防火地域とは、都市計画法で定められた市街地から火災の危険性を防ぐために建物を構造の面から規制する地域で、商業業務地など、市街地の中心部で、建物の密集度が特に高く、火災の危険度が高い地域に定めまられています。
防火地域内では階数が3以上でまたは述べ面積が100平方メートルを超える建築物は耐火建築物としなければなりません。
 
敷地が防火地域内かどうか確認したい場合は、役所で入手できる都市計画図やネット内の各行政庁による行政地図情報提供シッステムで調べることが可能です。
 

 

耐火被覆とはなんですか?

 
建物の主要な構造 材である木や鉄は大変火に弱いので、火災の時はそのままでは建物が燃え尽きて倒壊してしまいます。
そこで柱や梁を耐火性・断熱性の高い材料(石膏ボードやロックウール)で覆うことで火災による温度の上昇に対して耐火性能を持たせる必要があります。
このような被覆を耐火被覆と言います。
 

木造耐火の告示とはなんですか?

 
木造はそもそも火災に弱い構造ですが、耐火構造を普及させるためには大臣認定をそれぞれの個別の物件で採用して許可をもらっていていたのでは大変です。
そこで木造による耐火建築物が大臣認定によらずに国内の木材の需要を高めるために積極的な利用を可能にするために告示ができました。
 
様々な告示がありますが、平成12年告示第1399号では木造の間仕切壁・外壁の構造方法が追加されました。
大臣認定を受けたものでなくてもこの仕様に適合していれば、木造でありながら耐火構造として認められることになります。
 
ただし、主要構造部については、現段階では木造の耐火構造は告示では示されていません。
  

木造耐火建築物のコストはどれくらいでしょうか?

 
メリットの質問でお答え致しましたが、鉄筋コンクリート造と比べてコスト的なメリットはありません。
鉄筋コンクリート造と同じ程度か、地域によってはそれよりも高くなります。
木材の入手が容易な地位では安く、都市部では高くなる傾向があるようです。
また、建築の形態でも大きな差が出ます。
これら地域的個別的理由から一概に金額を申し上げることができません。
 
木造なのにコストが下がらない理由として、木造で構造を作った後に被覆材として厚いボードを2重に貼り、天井も床も通常より厚いボードの施工が必要となること、照明器具やエアコン、コンセントなどを室内に露出せずに綺麗に隠蔽する場合、通常はそのまま下地のボードに穴を開けて設置することになりますが、耐火木造の場合は天井裏や壁裏を全てそれらの機器を囲い込むようにする必要があり、普通木造の2倍手間がかかることがあります。
 
しかし、鉄筋コンクリート造と同じ工事費で同じ耐火性能があり、環境への貢献や温かみのある空間を求めるのであれば決して高いものではないと思います。
  

 

「ハートホーム宮野」の設計で工夫した点を教えてください

  
「ハートホーム宮野」は私が以前社長・管理建築士を務めた設計事務所アプルデザインワークショップにおいて大野秀俊(東大名誉教授)氏の指導のもとで設計した高齢者施設です。
 
旗竿の特異な敷地形状と、不燃ボードで木軸が隠されてしまう耐火木造特有の最大の欠点を補うため、単一モジュールを繰り返した雁行平面を採用することで、書院建築に似た木造らしい空間構成を創り出し、プランを45度傾けることで隣接建物間に三角形の空地による程よい距離感を作り出しました。
 
外壁は白のリブ付きサイディングと縦樋や換気口を隠す木製ルーバーの対比によって、モダンで引き締まった外観とし、3箇所の中庭は外壁を歌舞伎の緞帳色に塗り分けることで、室内が植栽の緑と色で柔らかく満たされる効果をもたらしています。
 
このプロジェクトは国土交通省による木のまち整備促進事業補助金事業による国庫補助に選定され、木造軸組耐火構造としては当時国内最大の規模(延べ床面積4,730.60㎡)で実現しました。
  

 

株式会社ヨシダデザインワークショップ 吉田明弘さんの木造耐火建築物設計事例

  

画像 建物の名称 紹介文
ハートホーム宮野

「ハートホーム宮野」はサービス付き高齢者住宅、特別養護老人ホーム、ショートステイの機能を持つ高齢者住宅の複合建築です。