漆喰・インタビュー・フィールドネット一級建築士事務所 山中文彦さん


 
漆喰とは古くから塗り壁材として使われている建材です。
湿気を吸ったり、吐いたりする調湿性です。
調湿効果により日本の夏の湿度の高い気候でも湿気を取り込み、冬の乾燥時期には湿気を放出して、四季を通じて室内環境を快適に保ってくれます。
 
漆喰についてフィールドネット一級建築士事務所 山中文彦さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー 木の家づくりネットワーク 山中文彦 の写真
世田谷区松原5-27-11-201
03-5301-2828

貴社が漆喰を手がけるきっかけがありましたら教えて下さい

 
私が木造住宅の設計、研究、開発を始めた1980年代の関東圏は、木造住宅といえば洋風大壁住宅で、木材は輸入木材で、ビニールクロスや塗装の内装仕上げがほとんどといった状況でした。
 
日本の伝統的な住宅とは似て非なる家が増え、ビニールクロスや新建材からの揮発性有機化合物によるシックハウス症候群が社会問題となり始めていました。
 
在来工法による新しい木の家をどのように造るかを、トータルシステムで研究していく中で、民家のように国産材の木組みを見せて耐久性を高めること、柱が見える真壁(しんかべ)工法により木材の表情を生かすこと、壁の仕上げは自然素材の木材、和紙漆喰を採用して家全体が呼吸する快適な空間とすることなどを基本としました。
 
特に、漆喰はその当時は住宅では珍しかったと思います。
 

漆喰のメリット・デメリットを教えて下さい。

 
メリットは、湿気を吸ったり、吐いたりする調湿性です。
調湿効果により日本の夏の湿度の高い気候でも湿気を取り込み、冬の乾燥時期には湿気を放出して、四季を通じて室内環境を快適に保ってくれます。
 
また、臭いも吸着し、室内の結露を防ぐことが出来ます。
新建材に多く含まれる揮発性有機化合物も含まれず、原材料の消石灰はアルカリ性のため、カビや菌類の発生を抑制する効果も期待できます。
 
もともと、石灰石ですから不燃材料で、キッチンなどに火気使用室にも使えます。
もともとは白い色が基本でしたが、最近は柔らかい色がついたものや、現場で顔料を混ぜて色調整も出来ますので、インテリア的にもバリエーションが増えました。
 
あえてデメッリといえば、施工価格が高いため、イニシャルコストがかかることです。
しかし、メンテナンスコストがほぼかからないので、長い目で見ると安くなります。
 
また、他の施工工事と一緒に仕事が出来ないことなどから施工に時間がかかるため、工期が取れない現場では採用が難しいことが上げられます。
 
商品としては、一口に漆喰といっても様々なメーカーがあり、メーカーによっては期待する調湿機能が発揮できていないものがあります。
そうした製品の性能表示がされていないことが、施主さんにとってどれがいいのか分かり難いということが課題です。
 

 

漆喰のメンテナンスはどうすればよいのでしょうか?

 
まず、手垢などの汚れですが、固く絞った雑巾で拭いた後、消しゴムで擦るとほとんどが取れます。
どうしても取れない場合は、目の細かいサンドペーパー(#440番程度)で優しく擦り取って下さい。
 
また、油汚れなどは、中性洗剤を薄めたキッチン用スポンジで擦り、その後雑巾で拭き取るときれいになります。
 
傷や割れが生じた場合は、あらかじめ窪んだところを水で湿らせて、水で粘土のように練った漆喰をヘラや定規で塗り込み、固まったらカッターやヘラ、サンドペーパーなどで平滑になるように擦るとほとんど気がつかない程度に補修できます。
色がついたものもありますので、工事のときに使った漆喰の粉を、左官屋さんから少しだけ頂いておくことがいいでしょう。
 

漆喰の下地はどのようにすればよいのでしょうか?

 
伝統的民家や土蔵のような土壁の下地は、現代では予算や断熱性の確保などから難しくなってきています。
 
壁の下地として、柱の間に一回り小さい部材の間柱(まばしら)という縦の木材を建てた上から、横方向にさらに小さい部材の胴縁(どうぶち)を留めて、その上から石膏ボードや石膏ラスボードを張って下地とすることが多いです。
漆喰の下には石膏系下塗り材を塗って、乾いた後に漆喰を塗ります。
 
最近は、コストダウンと工期短縮から、石膏ボード(厚さ12.5ミリ)の上から、約3ミリほどの下塗り材を塗り、その上から仕上げる方法なども増えてきています。
 

漆喰のひび割れを防ぐ方法はありますか?

 
一番肝心なのは大工さんの作る木材下地です。特に柱や下地木材が十分に乾燥していないと、施工後の木材乾燥収縮により漆喰に割れを発生させます。
下地木材の間隔や大きさ、釘留めなどの強度にも注意が必要です。
また、石膏ボードの下地のジョイント部分は、必ずパテ処理とグラスファイバーなどのメッシュテープを張る必要があります。
 

 

山中さんは木の家づくりネットワークという団体の代表をなさっているということですが、どのような団体なのでしょうか?

 
よく工務店や設計事務所のフランチャイズですかということを聞かれますが、そうではありません。
 
設計をクライアントのために一生懸命行うことは当然ですが、実際に木の家を造るのは、木材を生産する産地、製材、乾燥する製材所、それらを加工する大工、仕上げを行う左官屋、屋根工事職人などの、約20職種以上にも及ぶ職人、技術者、生産者です。
そうした木の家の材料の生産・流通、施工の細部にわたって、品質に責任を持つことが設計監理者にとって、設計とともに重要になります。
 
そのために、木材産地や建材産地などに直接赴き、木材生産や製品の特徴、品質を確認し、また優秀な技能を持つ大工などの職人と直接にコンタクトを取ることを、設計とともに行って来ました。
そうした優良な素材と優秀な職人のネットワークを生かして、少しでも良い家を造ろうとしたのが木の家づくりネットワークです。
 

熱意ある設計事務所とよい工務店によって、よい木の家を造ることも可能ではないでしょうか。

 
確かに、今でも良い家が設計事務所と工務店の共同作業によって作られていますので可能です。
ただ、そのような家づくりの方法は、明治以降の近代建築の移入によって作られた大きな建築の造り方を木の家に持ち込んだ、クールな、歴史の浅い方法です。
 
それ以前は、施主さんと大工さん、屋根やさんなどの気心知れた職人仲間、地域コミュニティのかなで、すべてをシェアしながら造られて来た長い歴史があります。
その造り方そのままでは通用しませんが、設計士、建築家がコーディネートしながら、一昔前のように、施主と優秀な技能を持った職人たちが相互に信頼関係を持って、気持ちを一つにして共に造っていくことが出来れば、心のこもった、品質の高い家づくりが出来るのではないでしょうか。
 
また、現場での職人さんとのふれあいや木材産地訪問など、施主さんご家族のエピソード豊かな物語が生まれ、みんなで造ったと言う達成感もあって、自然に家を大切にして、入居後のお手入れやメンテナンスにも気持ちがこもります。
 

 

設計事務所、建築家がきちんと工務店の見積査定をすることで、適正な工事価格によって工事が出来ると思いますが、木の家づくりネットワークではいかがでしょうか。

 
設計事務所の見積査定業務は設計内容と共にとても重要な業務です。単に複数の工務店の見積を比較したり、予算に合わせるために値引きを要求することではなく、その価格が設計内容と比べて適正かどうかの判定が出来なくてはなりません。
職人や木材、建材生産者と打ち合わせしていく中で、本当の工事原価が確認できます。
そうした適正な工事原価と品質、施工内容を施主さんとシェアしながら、相互信頼の元に工事が出来ることが、安心して家を造ることの基本となります。
 

フィールドネット一級建築士事務所 山中文彦さんの漆喰・設計事例

  

画像 建物の名称 紹介文
和みの木の家

クライアントご家族にとっての和み軒の家とはどんなものかと、土地を見ながら考えました。
旗竿敷地は道路に面している部分が小さく、奥に入っているために、車の通行、喧騒から離れ
静かな環境という良さがあります。

音楽ホールのような木の家

敷地の中のどこに、どの方位で、木の家を最適に配置するかは
最後まで、お施主さんと現場で確認を重ねました。

野草と野鳥、クラフトを楽しむ木の家

道路側の庭の南側から、家の周りをぐるっと回るように庭のゾーンを設定しました。
道路に沿って家をセットバックさせて、庭を確保し、徐々に雁行するプランニングとしました。
庭のゾーン設定から家のゾーンを決めると言う手法ですが、敷地に余裕がありましたので

木のパオの家

正倉院のような校倉工法をイメージしながら、朽ち果てても自然に還る木の家の造り方を
新・あぜくらの家と呼んで、5棟設計監理してきました。
それらの成果を生かして、南西向きの変形敷地でも、プランニングに柔軟に対応して
成立させることができました。

木で包まれた温泉を楽しむ家

伸びやかな敷地を活かして、どのように外観は控えめで
中に入ると、都会の喧騒を一瞬で忘れるような空間が
提案できるかに腐心しました。