細長い土地に視覚的広がりのある家・岩瀬隆広建築設計 岩瀬隆広さん


 
細長い土地の場合、正方形に近い同じ面積の敷地と比べると、奥行きを強調した視線の抜ける住まい空間が出来ます
 
細長い土地について岩瀬隆広建築設計 岩瀬隆広さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

  

ユーザー 岩瀬隆広建築設計 岩瀬隆広 の写真
熊本市東区健軍1-13-1 青山ビル201号
096-360-4316

 
  

貴社が細長い土地を手がけたきっかけを教えて下さい

 
江津の家は土地探しから関わった家でした。
なかなか条件に合う土地が見つからずにいたクライアントから、目ぼしい土地を見つけたという連絡がありました。
 
その土地は、希望するエリアでクライアント自身の足で探しまわりようやく見つけた土地でした。
(仕事終わりや休みの時など時間をつくっては自転車で探しまわっていたそうです。)
 
はじめて資料を提示された時には私も驚きました。
奥行のない長細い台形状の変形土地で、土地の面積は35坪弱の広さです。
 
現地を見るまでは、希望が薄いかなと思っていました。
現地へ行ってみると、確かに土地自体は狭く、細く長く、南に閉じていく台形状の土地でした。
 
ところが、その土地の周辺環境を見渡すと、「これはいける!!」とという確信じみた感覚が生じたことを今でも覚えています。
 
そこから、この土地に建つ家の計画がスタートしました。
 

  

細長い土地のメリット・デメリットを教えて下さい

 
細長い土地と言えば、南北に奥行きの深い「ウナギの寝床」を思い浮かべると思います。
 
このような場合、一般的にはメリットよりデメリットの方が多いように考えます。
まずメリットとしては正方形に近い同じ面積の敷地と比べると、奥行きを強調した視線の抜ける住まい空間が出来ます。
 
次にデメリットですが最初に想像できることは狭さからくる窮屈な空間だと思います。
また南に面する面が少ないことから、日当たりの乏しい部屋が出てくる可能性があります。
 
さらに木造在来工法の場合など間口が狭いことより、耐力壁によって間取りに制限される場合が出てくることもあります。
 

細長い土地の設計で気をつけているポイントを教えて下さい

 
細い土地となるとやはり「狭さ」という問題が一番にあげられるのではないでしょうか。
 
この土地での計画にあたりクライアントとの最初のヒアリングでの一番の要望は、当然、広がりのあるすまい空間をつくってほしいでした。
 
そこで私が広がりを考える時は、大きく分けて2つのこと軸に計画しています。
 
一つは「動的広がり」で、もう一つは「視覚的広がり」です。
「動的広がり」とは、簡単に言いますと人体が動ける範囲の大きさことです。
 
もちろん個人や各家族での広がりの感じ方は違いますが、日常生活で歩いたり、走ったり、座ったり、寝たり、立ったり等々・・・人の動ける広さのことです。
 
次に「視覚的広がり」とは簡単に言いますと視覚が感じる空間の大きさです。
これもまたそれぞれ感じ方は違いますが、認識できる視野の広さと視線の抜ける長さによって感じられる広がりです。
 
そこで細い長い土地など限られたスペースで考える場合は、動的広がりには限界があるのですまい空間に視覚的広がりをどのように取り入れていくかが非常に大切となります。
 
そのカギとなるのが奥行き強調した空間をどのように構成できるか、と周辺の環境をどのように取り込めることができるかです。
 
例えば周辺環境で住宅が密集している中にもしっかり観察すると隣家の狭間の先に桜並木が見えたりと思わぬ発見もあります。
 
その狭間に照準を合わせた開口はすまい空間に広がりだけでなく豊かさまで引込むことができた実例の住まいもあります。
 
設計するものにとって長さをいかした空間構成や周辺環境をどのように読み解き空間に溶け込ませていくかということは、建築家それぞれの個性が現れるところでもあります。
 

「江津の家(Shipな家)」で工夫した点を教えて下さい

 
今計画の主な問題提示として2点
 
1点目は、前述のようにクライアントの一番の要望である、広がりのあるすまい空間をつくってほしいです。
前提として、プライベート確保がありました。
 
2点目は、この土地の環境問題として、江津湖周辺の水はけの悪さがありました。
周辺情報によると最近のゲリラ豪雨時、一時的に水路が氾濫するとのこと。
 
そんな条件の中でも今回の土地は、細長い土地ではありますが、北から南へと狭くなっていく様が1点に向かって収束していくようなパースペクティブな空間で奥深さを感じる土地でした。
 
それは、限られたスペースにプライベート確保という閉塞的になりそうなところに今後の広がりの可能性を期待させてくれました。
 
また、「水に浸かる」土地として見ていると、形状が「舟」を連想させてくれるようでした。
 
そんな土地に建つShipな家は、水に浮かぶ舟のような基礎の器をベースに奥深さを強調した空間と視線の流れにこだわりより広がりを感じられる空間を追求した家です。
 
ところで「視線の流れ」ですが、上記以外のその他の要望にも起因しています。
 
ご主人の要望は
「黒い家が欲しい、
 居間はソファーに座ってくつろぎたい、
 暗くてこもれる趣味室がほしい」
に対し
 
奥様の要望は
「白い家が欲しい、
 居間では畳で座ったり寝そべったりしてくつろぎたい
 明るく全体を意識できる趣味室が欲しい」
などで正反対の要望でした。
 
そこで、この住空間の中で生活する夫婦各々の視線の先を考慮し空間構成や仕上げの配置を決定しています。
 
プライベート確保をしながら周辺環境、空へと垣間見られる窓。
そして周辺の屋根を超え江津湖や花火大会を望める物見台。
 
視線の先は、内から外へどんどん抜けていきます。
Shipな家は、閉塞なコートハウスのようでどんどん外に広がるオープンな家になっています。
 

 

「江津の家(Shipな家)」の間取り図

 

江津の家(Shipな家)・間取り図

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岩瀬隆広建築設計 岩瀬隆広さんの細長い土地・設計事例

   

画像 建物の名称 紹介文
江津の家(Shipな家)

敷地は江津湖近郊にある約35坪で細長い先細りしている三角形の土地であります。問題も多い中、一番の懸念することは、豪雨の際の水路の氾濫でありました。様々な制限の中で、基礎を防水処理し船底のような基礎の器を作りました。

 

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