数寄屋

ユーザー ❨株❩アトリエ Y&R 栗城裕一 の写真

 数寄屋あるいは数寄屋造りの建築は、最近ではあまり見かけませんし、建築されなくなりました。建築基準法の防火上の規制の厳しさや、敷地の広さにゆとりがなくなってきたことなども影響しているのでしょう。
 この手の建築で最も有名なのは桂離宮ではないでしょうか。木造しかも日本の伝統的な柱と梁とで構成された軸組み工法というもので造られたものです。明るく、外部とつながる空間構成などは西洋の人々にも多くの感動を与えてきました。
 茶室は数寄屋建築の典型的なもので、自由な素材の使い方、また自由自在の設計手法、そしてなんといっても日本の文化の、気風・気質である人の想像力で補完される空間構成、流れるような空間のつながり方等々で世界的に見ても類がない魅力的な建築の一つです。
西洋的な壁で閉ざされたものと違い、自在に外部とも空間をつなげられる自由さを持ち合わせていることは大事な特徴だと思います。小さい茶室が一見、外部と区切られた閉じられた空間と思われても、そこには自在に外部空間ともつながる工夫がなされています。障子による閉じ方は極めて日本的なものです。閉じられているときは、内部に人がいることを表現しており、外の者は内部の様子を窺うことは作法としてしないことになっています。このように、遮音性などの性能について、より高いものを求めることをせず、人の想像力で補う日本の建築の原点ともいえるものが数寄屋にはあります。
 これらのことを念頭に置いて住宅の設計を考えるとまた違った生活が見えてきて、新鮮なそしてコストも抑えられるような発想が生まれるのではないでしょうか。