換気が肝心

ユーザー アーキシップス京都 古前極 の写真

高気密高断熱住宅を計画する際、もっとも注意する3つのポイントがあります。
それは、
1 断熱 外壁・屋根天井・床の断熱材で、熱・冷気の出入を防ぐ
2 気密 開口部(窓や扉)や屋根天井・壁・隙間の、空気の出入を防ぐ
3 換気 室内温度を保持できる換気扇を採用する

「"断熱"と"気密"はわかるけど、換気扇が重要なんですか?」
と思われても不思議ではありません。
それどころか、
「換気扇を回すとうるさいので、いつも止めてます。」
「夏は窓を開けるし、冬は回すと寒いので、換気扇は使いません。」
と言う声もよく聞きます。
文字通り空気のように意識しないので、改めて言われてもピンとこないのですが、人体にも建築にも換気はとても大切です。
1日にご飯を食べるのは3回、水を飲むのも複数回ですが、呼吸は一日に2万回前後。 人は室内の空気を体内に取り入れて生きています。
口から摂取する食べ物の質と同様に、換気で得られる空気の質も健康を左右します。
そして建物にも、大きく影響します。

吐く息は二酸化炭素が多い

換気の役割をまとめます。
1 空気をよくします
人は呼吸により酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出して生きています。
締め切った空間で呼吸を続けると、酸素濃度が低下して、二酸化炭素濃度が高まり「空気が悪い。」と感じる状態になります。
気分が悪くなるだけでなく、集中力が途切れる、イライラする、頭痛がする・・・など、身体症状につながることもあります。
換気によって新鮮な空気を取り込んで、快適な空気を得られます。

酸素濃度が低下すると

2 湿度を調整します
人の生活は、湿度を放出します。
そこにいるだけで、呼吸や皮膚呼吸によって人体から水分を放出します。
もちろん、料理や洗濯、入浴などの生活行為からも、水分を発生させています。
室内で洗濯物を干したり、乾燥機を回すと、大量の水分が室内に拡散し続けます。
換気で水蒸気を屋外に排出し、水分が室内に留まってカビや湿気の原因になる現象を抑制します。

3 塵埃や化学物質を低減します
人の生活は水分だけでなく、生体由来の微小なチリや洗濯物の繊維を発生させます。
また空気中にはカビの胞子や雑菌、花粉、PM2.5のような化学物質、におい成分も含まれますが、服についたまま外出先から室内に持ち込むこともあれば、開けた窓から入ってくることもあります。
これらを換気扇で排出し、吸気口からフィルターで異物を排除しながら新鮮な空気を取り込むのが、換気の役目です。

換気不足は汚染空気の元凶

4 温度調整します
室内で温められた空気は上昇し、天井近くに設けられた換気扇から排出されます。
排気によって負圧になる室内には、吸気口から外気温の空気が流入します。
その仕組みが、自然な温度調整機能を果たします。

日本の住宅では第三種換気、換気扇による強制排気が一般的でした。
トイレや浴室の換気扇をつけっぱなしにすることで、室内に空気の流れを作り、住宅各部の吸気口から常に新鮮な空気が入る仕組みです。
ところが、一般的な換気扇や吸気口は家の外壁に穴を開けて設置するので、断熱と言う観点からは大きな弱点でした。
いくら高性能の窓をつけても壁に穴がいくつも空いていたら、性能は一気に低下します。
そこで重要なのが「室内温度を保持できる」換気の方法です。

高機能換気で室内はいつも清浄

このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、弊社の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。