防音室は“後から”でない方がオススメです

ユーザー ナイトウタカシ建築設計事務所 ナイトウタカシ の写真

お子さまがピアノやヴァイオリンを習い始めてから、「やっぱり防音室が必要かも」と思う親御さんは少なくありません。

最初は隣近所に気を使いながら練習をしていても、音が大きくなるにつれ不安になったり、家族の生活リズムとぶつかったりするからです。

そこで「とりあえず普通の家を建てて、後から防音室をつくればいい」と考えてしまう方も多いのですが、実はここに大きな落とし穴があります。

1. 後付けでは“本当の防音”にならない
防音室というと、壁や窓を厚くした部屋をイメージするかもしれません。しかし音は空気だけでなく、床や壁を伝わる「振動」としても広がります。つまり、家全体の構造にかかわる部分に手を入れなければ、十分な防音は実現できません。
後からの工事では、既に建っている壁や床を壊して二重構造にしなければならず、コストも工期もかかります。それでも「本当に欲しかった静けさ」には届かないことも多いのです。

2. 生活動線や間取りとのバランス
仮に後付けで防音室をつくったとしても、リビングの横にあると家族のテレビ音とぶつかったり、寝室の上にあると夜の練習が難しくなったりします。防音室は「音を閉じ込める空間」であると同時に、「家族の暮らしと共存する空間」。その位置関係を最初から計画しておかないと、家族全員が快適に過ごすことはできません。

3. コストが跳ね上がるリスク
後から防音室を増築しようとすると、数百万円単位で余分なコストがかかるケースも少なくありません。新築時に設計に組み込んでおけば、構造と一体で計画できるため効率的で、コスト面でもメリットがあります。

4. 「暮らしの成長」に対応できなくなる
お子さまが成長するにつれ、ピアノが電子からグランドへ、練習時間が1日30分から数時間へと変わっていきます。その変化を見越した設計は、後付けでは追いつきません。将来を見据えた間取りと防音計画を同時に考えてこそ、長く快適に暮らせるのです。

まとめ
防音室は「後からでもつくれる部屋」ではありません。
家族の暮らしに溶け込み、音楽が安心して続けられる空間を実現するためには、家づくりの最初の段階から防音を組み込むことが欠かせません。

「防音室だけ」「家づくりだけ」と切り分けるのではなく、最初から音楽と暮らしをまとめて考えること。
それが、後悔しない家づくりの最大の秘訣です。