完成前に「これでいいのか」と思う瞬間

ユーザー ナイトウタカシ建築設計事務所 ナイトウタカシ の写真

現場の確認に立ち会ったとき、
ふとこんな言葉が出てくることがあります。

 

「ここまで来たのに、
 これでよかったのかと思ってしまって…」

 

壁が立ち上がり、
空間の形が見えてくる。

 

図面で見ていたものが、
実際の大きさとして現れてくると、

 

一気に現実味が増します。

 

その中で、
少しだけ気持ちが揺れる。

 

この感覚は、
とても自然なものです。

 

完成が近づくほど、
「決めたこと」が
現実として固定されていきます。

 

ここに壁があり、
ここに窓があり、

 

これから先、
大きく変えることは難しい。

 

その状態に触れたとき、

 

「これでいいのか」

 

という問いが、
もう一度立ち上がることがあります。

 

それは、
最初の迷いとは少し違います。

 

選択の前にある迷いではなく、

 

選択したあとに感じる、
確認のような揺れ。

 

本当にこれでよかったのか。

 

見落としていることはないか。

 

もっと良い形があったのではないか。

 

そうした思いが、
頭をよぎる。

 

けれど、
この問いは、

 

間違いを示しているとは限りません。

 

むしろ、
ここまで向き合ってきたからこそ、

 

最後にもう一度、
確かめたくなっている状態です。

 

もし何も感じなければ、

 

どこかで
考えきれていない可能性もあります。

 

だから、
この「これでいいのか」という感覚は、

 

止まるためのものではなく、

 

少しだけ立ち止まって、
見渡すためのもの。

 

いま気になっていることは何か。

 

どこに違和感があるのか。

 

それを一度、
丁寧に拾い上げてみる。

 

多くの場合、
その違和感は、

 

すでに調整されていることだったり、

 

小さな部分で解決できることだったりします。

 

あるいは、
時間とともに馴染んでいくこともある。

 

完成前に感じる揺れは、

 

設計が
間違っているサインではなく、

 

ここまでの選択を
自分の中で受け入れていく過程なのかもしれません。

 

その時間を、
無理に消さずに、

 

少しだけ味わってみる。

 

その先に、
静かな納得が重なっていくことがあるのだと
思っています。