渡辺篤史の建もの探訪ー技あり収納と変化する間取り

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感想: 

最近、我が家のあちこちに、ちいさな水たまりができる。
ずりずり這うようになった小さな人が、和室の桟やら畳やらをぺちょぺちょとなめ、よだれの水たまりを作っては回っている。
もう、清潔でないからなめないで!とは言っていられない。
いちいちやめなさいと引き離すのは、なんだか窮屈でかわいそうな気がした。
 
新しくはない社宅の少々黒ずんだ桟やら畳を、ゴシゴシ磨くと、ようやくこざっぱりとした木の色になった。
私もちょっと、なめてみる。
埃臭くもひどく苦くもなく、これならよかろう、木の味だ。
 
小さな人は、お家を味わっている。
 
            ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「技あり収納と変化する間取り」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2014/19
誠実な感じのする住宅だった。
 
            ◇ ◇ ◇
 
外観も特別個性的でも印象的でもないように思ったし、内部もものすごく雰囲気がある、という感じでもない。
けして広くはない敷地、敷地3辺が道路に面する制約に、「気分よく暮らすために必要なこと」をきちんと詰めていったらこうなった、という感じのお家だった。
 
収納はきっちりと。
居間に構えるレコードや本のための大きな棚、脱衣場の整然と衣装ケースが並ぶ衣類棚、階段下をきっちりと利用した寝室の引き出し。
 
お外との関係も大切に。
心地よい広さのある、居間とキッチンに面したベランダ、時には物干し場にもなる階段を、楽しく上った先の屋上。
 
キッチンは子供もお手伝いできるだけの広さを。
手元にちょっとした道具を収めておける機能的な作業台に、たっぷりの収納。
 
そして何より、家族の居場所はぎゅぎゅっと居間に。
家族はここに帰ってこればいい、ここが居場所、そんな居間だと思う。
家族はここで、食卓を囲み、くつろぎ、仕事や勉強をし、LPで音楽も楽しむ。
集まった家族が、それぞれに別々のことをしているかもしれないけれど、居場所はここ。
子供室の小部屋も、がらんと広い寝室もあるけれど、居間がこの家のおへそ。
家族それぞれにとってもおへそ。
そういう思いで、とても大切に作られた感じの居間だった。
 
                    ◇ ◇ ◇
 
番組内では毎回、家主であるご家族のランチの様子が映し出される。
家族だけの日常のランチとして、両親や友人を招いてのランチパーティーとして。
今回の有馬家では、設計者である建築家ご一家を招いてのランチだった。
同じくらいの年の子供がいる建築家と有馬家は、実用的な話、将来的な話をそれぞれの実感を重ね、お互いによい関係を築きながら、家づくりをしてこられたのだろう。
子育て中の「今」を共感できる関係。
ここにも素敵な、一期一会。