その土地に応じた特色のあるシェアハウス・更田邦彦建築研究所 更田邦彦さん
シェアハウスは一般的な共同住宅より賃借人がより多く入居できます。また、その土地に応じた特色のある建物とすることができます。
シェアハウスについて更田邦彦建築研究所 更田邦彦さんに伺いました。
シェアハウスとは何ですか?
1住戸を複数人で借りて、個室をプライベート空間として使い、それ以外のキッチン、浴室、トイレなどの共用部を共同で使用する住宅のことです。
最近では、同じ趣味や意識のある人達が入居しやすいように、シェアするコモンスペース(共用部)に特徴を持たせる事例も増えており、私が手がけた「アビタ鶴川」は、庭に菜園とピザ窯を設けて、「野菜を育てそれを食す」といったことにポジティブな人に入居してもらうことをコンセプトとしています。
貴社がシェアハウスを手がけたきっかけを教えて下さい
シェアハウスを数多く運営しているある不動産会社の指名コンペで私の案が採用されたことにより手がけることになりました。
シェアハウスには建築基準があるのでしょうか?
一昨年(2013年)の9月に、国土交通省住宅局から「事業者が運営するシェアハウスは寄宿舎とする」という技術的助言が通知されました。
「寄宿舎」は特殊建築物であるので、主要な間仕切り壁を燃えにくくする(準耐火構造)等の規制がかかってきたり、さらに東京都の場合は、窓先空地と呼ばれる避難用の空地が求められることになります。
しかしそれでは、健全に運営している既存のシェアハウスが排除されたり、一般住宅を転用してシェアハウスとすることが難しくなることから、いくつかの自治体では、寄宿舎に係る 建築基準等を緩和する方向で見直しを行っています。
このような経緯から、シェアハウスには一般住宅とも寄宿舎ともは違う建築基準があるということになりますが、詳細については各自治体に確認する必要があります。
土地活用としてシェアハウスを建てるメリット・デメリットを 教えて下さい
「共同住宅」と比較したメリットとしては、前述した建築基準の緩和措置により、賃借人がより多く入居できるタイプの賃貸住宅になることだと思われます。また、その土地に応じた特色のある建物とすることができるといったこともあげられるかもしれません。
デメリットとしては、土地活用というよりも運営面のことになりますが、賃借人の入れ替わりが激しく比較的空室率が高くなるケースがあることや、コモンスペースの使われ方が賃借人の自主運営ではなかなかうまくいかず、オーナーさんや管理会社がそのルールやマナーについて、常にケアしていかなければならないということがあげられると思います。
シェアハウスの設計で気をつけているポイントを教えて下さい。
シェアハウスでは、住人の皆さんに「シェアする」という共通認識はあるとしても、プライバシーは確保されなければならないので、各個室は、扉を閉めればコモンスペースと遮断される(遮音化するのは困難ですが)空間になっている必要があると思います。
また、ダイニングやリビングがコモンスペースの中心的な居場所になろうかと思われますが、そこにダイレクトにプライベートスペースが面することは避けたいと思っています。
それは、住人それぞれに生活のリズムがあり、他の住人とコミュニケートする距離感みたいなものが随時変ってくるので、プライベートスペースとコモンスペースの間にそれらの中間領域となるような場や距離を設けておく必要があると思うからです。
そこには、2~3人のためのサブ的コモンスペースが用意されていてもいいのかもしれません。
シェアハウスの計画をする際、シェアする場所や事柄に意識が向かいがちですが、プライベートスペースを担保することや、オン・オフのように完全に意識を切替えなくても過ごせるサブ的コモンスペースを設けるといった、個人と他の住人との接点になる部分にも意識するよう気をつけています。
シェアハウスの事業計画の相談にも乗っていただけるでしょうか?
「事業計画」となると範囲が広いのではっきりお答えできませんが、敷地に対する建築規模やそこから想定する個室の数、それに対するコモンスペースの面積や配置など、あくまで建築計画についてならば相談に応じられると思います。
シェアハウスを建てたいけどなにから手を付けてよいかわからない方からの相談にも乗っていただけますか?
建築的なアプローチにおいてならば相談に応じることができます。
建築の企画案を検討していく中で、ある程度その敷地がシェアハウスに向いているか否かといったことも判断できると思われます。
アビタ鶴川は将来的に2軒のテラスハウスに変更できるようになっているそうですね。どのような工夫をしたのでしょうか?
コの字型プランのほぼ中央に仕切り壁を設けて分割する際、キッチン、浴室+脱衣室、洗面所、洗濯機置場、トイレなどの水廻りおよび階段がそれぞれに配置されるように計画するのはもちろんのこと、シェアハウス時の個室の仕切り壁を取り除いてダイニング・リビングにコンバージョンできるようにしていること、また、エントランスも別に1箇所設けられるよう(現在の外壁に穴を空けられるよう)想定して、あらかじめアプローチの階段や土間をコンクリートで打設したといったことがあげられます。
アビタ鶴川でのライフスタイルで何か特徴となっていることは?
アビタ鶴川では、建物内部のコモンスペース全てを土足仕様としたことが、ライフスタイルにおける大きな特徴になっています。
それは、コモンスペースの中心となるダイニング・キッチンを、テラス・菜園へとつながる外部に視覚的にも使われ方でも連続させたかったことが大きな理由ですが、そのことで例えば、菜園でトマトを摘んで土足のままキッチンで調理しダイニングで食べる、といったことがここでのライフスタイル(日常)の一つになっているわけです。
しかし、日本の一般住宅においては、このライフスタイルはなかなか容認されないことなので、シェアハウスという新たな居住形式が、これまでのライフスタイルを少しだけバリアフリー化させたと言えるのかもしれません。
また、床の素材に用いた大谷石が、内外の空間を自然につなげてくれたことも、そのことに大きく貢献していると思います。
このように、シェアハウスの設計をしていると、これまでのライフスタイルを乗り越えられるような発見があり、そんなところに面白さを感じています。
更田邦彦建築研究所 更田邦彦さんのシェアハウス・設計事例
画像 | 建物の名称 | 紹介文 |
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アビタ鶴川 | 各個室のプライバシーを保ちつつ、庭を含めてた共用スペースが、それぞれ皆さんの様々な<居場所>となるように考えました。例えばそれは、個室に行くための廊下を単に<廊下>とするのではなく、庭に面してお茶を飲んだり、ちょっとした作業スペースにも使えるような<縁側>のような場所にするといったことでした。 |
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