スケルトンリフォームで心地良いと思える空間に・鈴木賢建築設計事務所 鈴木 賢さん
御自身の希望が明確でリフォーム会社と対等に打合せが行え、必要に応じて指示が出せるのであれば設計者は不要かもしれませんが、そうでない場合には御自身の要望や想いを咀嚼・翻訳して空間を提案する設計者の存在が必要になります。
スケルトンリフォームについて鈴木賢建築設計事務所 鈴木 賢さんに伺いました。
貴社がスケルトンリフォームを手がけるようになったきっかけがありましたら教えてください
以前から興味はありましたが、実作としては自宅兼事務所の「吉祥寺のSOHO-築35年・中古マンションのスケルトンリフォーム-」が最初です。
当時、隣りの練馬に住んでいたのですが、独立を機に賃貸マンションからの住み替えを検討しており、立地・価格等の条件もあって中古の分譲マンションをスケルトンリフォームすることにしました。
自分が経験したことで改めてスケルトンリフォームの利点や可能性を感じており、積極的にスケルトンリフォームを推進・紹介する立場をとっています。
スケルトンリフォームで注意する点を教えてください
まずリフォーム全般に言えることですが、床下や天井裏、壁の中など仕上材をはがしてみないと分からない「隠れた部分」に関しては注意が必要です。
特に構造体のコンディションが悪い場合には補修費用だけでも膨大なコストがかかる場合がありますので、新たに購入してリフォームを行う場合には契約前に建物の調査をすることをお勧めします。結果として契約を見送るという判断もあり得ます。
スケルトンリフォームが前提であれば仕上材や設備機器の古さなどは一新されますので、それこそ構造体の状態さえ良ければ見た目の悪さは気になりません。
また、マンションの場合には管理規約などでリフォームの範囲や仕様、工事を行う際の注意点等が決まっている場合もありますので事前の調査は大変重要になります。
スケルトンリフォームの費用はどれくらいかかりますか?
規模や内容により一概には言えません。
「吉祥寺のSOHO」では800万円程かかりました。
「吉祥寺のSOHO-築35年・中古マンションのスケルトンリフォーム-」はマンションのスケルトンリフォームだそうですが戸建てのスケルトンリフォームもやっていただけますか?
もちろんです。
ちょっと特殊な事例ですが、茨城の実家が東日本大震災で内壁が割れ落ちて一部スケルトン状態になってしまい、2階の6畳二間ほどの空間でしたがリフォームをしました。
その時は設計監理業務ではなく、両親に代わってリフォーム会社さんに指示を出したり見積書のチェックをしたりと後方支援的な役割を担いました。
戸建ての場合はマンションと違って建物全体に自由に手を入れられますので、リフォームを機に耐震改修や断熱改修を行うことも可能です。
しかしながら元の建物の状態が悪いと改修工事だけで予算を使い果たしてしまうということも考えられますので、事前の調査や優先順位の検討が重要になります。
スケルトンリフォームの場合、建築確認は必要でしょうか?
原則不要ですが、一部増築を伴う場合などには必要なこともあります。
誤解されている方も多いのですが、建築確認が不要と言っても手続きが要らないだけで建築基準法等の関連法規を順守するのは建築主や設計者にとっての義務ですので、当然違法なことはできません。
DIYでスケルトンリフォームをやりたい方の設計監理を依頼できますか?
条件によります。
大掛かりな工事になる場合には一般の方では難しいのではないでしょうか?
建築関連のお仕事の経験がある場合や、どうしても自ら手掛けたいという意欲があって、じっくりと取り組む時間的余裕があるのであればプロの施工者のサポートがあれば可能かもしれません。
スケルトンリフォームする際に耐震工事も一緒にできるのでしょうか?
戸建てであれば可能です。
建物の状態や求める性能そして予算などを総合的に検討・判断する必要はあります。
スケルトンリフォームはどれくらいの期間でできますか?
規模や計画内容にもよりますが、最低でも2ヶ月は見ておいた方が良いと思います。
「吉祥寺のSOHO-築35年・中古マンションのスケルトンリフォーム-」で工夫した点を教えてください
自分たちが心地良いと思える空間を限りある面積と予算の中で実現しようと心掛けました。
手持ちの家具を活かしたプランニングや、生活のクセが分かるからこその割り切り(寝室は狭くて良い)などコストも含めてメリハリを意識しました。
IKEAのキッチンユニットにロジェール製のガスコンロを組み込んだり、家具扉の取手にアルミ既製品のアングル型材を流用したりと設計者としてのこれまでの経験も役立てました。
リフォーム業者ではなく貴社にスケルトンリフォームをお願いするメリットを教えてください
御自身の希望が明確でリフォーム会社と対等に打合せが行え、必要に応じて指示が出せるのであれば設計者は不要かもしれませんが、そうでない場合には御自身の要望や想いを咀嚼・翻訳して空間を提案する設計者の存在が必要になるのではないでしょうか?
フランチャイズのリフォーム会社や定額制パッケージなどの場合には、製品やメーカーの選択の巾が狭い、間取りの自由度が低いなどの会社都合の制約もあるようですが、私たちのような専業の設計事務所であればそのようなことはありません。
部分的なリフォームの場合には、設計者が関与すると効果の割に設計監理料が予算を圧迫してしまうこともありますので、その場合には適した事業者を紹介させて頂くこともあります。
それでも設計者としてのアドバイスは可能な限りさせて頂きたいと考えています。
床や壁の素材や風合いにまでこだわった自分だけの空間を志向する方には関係のない話かもしれませんが、世間の認知度が上がってきたこともあり、スケルトンリフォームを謳った「再販物件(不動産業者などが買い取った物件を自社あるいは関連会社でリフォーム工事を済ませて販売するもの)」が多く見られるようになってきました。
見た目は新しく綺麗な空間かもしれませんが、隠れた配管などには手を入れず古いままといったこともあるようです。
スケルトンリフォームの利点はスケルトン状態を確認して必要があれば補修や更新を行った上で空間を一新出来ることですので注意が必要です。
スケルトンリフォームしたいと思っている方にアドバイスがありましたらお願いします
「リフォーム」と一口に言っても壁紙や床材、水回りの機器を新しく更新するだけのものから「スケルトンリフォーム」のように既存部材を一度取り払って間取りも含めて一新するものまで様々です。
「リノベーション」と呼ぶこともあります。
また「コンバージョン」と言って用途をも変更することもあります。
我々設計者もそうですが、リフォームを手掛ける施工会社も千差万別、得意分野も異なります。
まずは御自身の想いに親身に耳を傾けてくれる信頼出来る会社を見つけることが重要になります。
そして御自身がどのような空間でどういった生活を送りたいのか、現在の空間には何が足りないのか、を語ってください。
誠実な設計者はきっと力になってくれるはずです。
リフォームであっても家創りには相当のエネルギーが必要になります。
主役は住まい手である御自身ですので、人任せにせず積極的に関わって頂きたいと思います。
経験上、家創りのプロセスを設計者・施工者と一緒に楽しめる方は建築家との家創りに向いていると思いますし、完成した空間に対する満足度も高いように感じます。
鈴木賢建築設計事務所 鈴木 賢さんのスケルトンリフォーム設計事例
画像 | 建物の名称 | 紹介文 |
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吉祥寺のSOHO-築35年・中古マンションのスケルトンリフォーム- | 設計者とはいえ、まずは生活者として自身の生活を営む「場」が必要です。私は築35年の中古マンションを購入・スケルトンリフォームして自宅兼事務所として使っています。設計は自分でやりました。 | |
吉祥寺のシェアオフィス-KN-lab- | ローコストであるため施工会社とも入念に打合せを行い、シンプルでラフな空間を目指しました。壁・天井は白ペンキ塗り、床はOSBボード貼で仕上げています。 |
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