片流れ屋根で雪や雨による漏水や落雪のリスクを比較的少なくする・to be Designed 船坂大樹さん


 
片流れ屋根はシンプルな形状なため雪や雨による漏水や落雪のリスクを比較的少なくする事が出来ます。
 
片流れ屋根についてto be Designed 船坂大樹さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー to be Designed 船坂大樹 の写真
札幌市東区北33条東3丁目2-10-302
011-711-9399

 

片流れ屋根とは何でしょうか?

 
2方向もしくは4方向に勾配がある屋根を、切り妻屋根(2方向)、寄せ棟屋根(4方向)にというのに対して、1方向のみに勾配がある屋根の事を『片流れ屋根』といいます。
 

貴社が片流れ屋根を手がけるようになったきっかけがありましたら教えてください。

 
『オオヤネノイエ』がto be Designedとして初めての片流れ屋根の建築です。
学生の頃から片流れ屋根は好んでデザインに取り入れていました。
 
ただ、北海道の市街地において落雪をさせる場所の確保がなかなか出来無いため、勾配屋根自体を設計に取り込む事が現実的ではありません。
今回北海道内でも比較的積雪の少ない地域であるとともに、勾配屋根でありながら落雪をさせない屋根材の選択をするところから、片流れ屋根の採用が決まりました。
 

 
 

片流れ屋根の勾配はどれくらいがいいのでしょうか?

 
片流れの勾配は、屋根勾配方向の間口とそこに納まる空間の天井高さによって決まります。
またプロポーションによって美しいと思われる屋根勾配は変わってきます。
間口が狭い場合は比較的勾配をきつくし、間口が広い場合は勾配を緩やかにします。
 
『オオヤネノイエ』では比較的間口が広く、低い方のエリアは平屋、高い方のエリアで一部2層という構成のため、勾配角度を緩やかにする事が出来ました。
模型で何度も検証し、プロポーションの良い屋根勾配と内部天井高さのせめぎあいで、2.5寸勾配と決定いたしました。
 

片流れ屋根でおしゃれな外観にするコツを教えてください

 
まず第1に、先述のプロポーションがとても大事だと思います。
 
また、庇を出すのか出さないかによって変わりますが、出すのならしっかり出して屋根を強調したデザインとする。
出さないのであれば軒先のディテールをしっかりつめソリッドな形を印象づけるデザインが私の好みです。
 
『オオヤネノイエ』では前者の庇をしっかり出して屋根面を強調し、1枚の大きな屋根の印象のデザインといたしました。
また淀と破風(軒先の水切りと板)のディテールをシャープにする事で軽やかな屋根を印象づけるデザインといたしました。
 

 

片流れ屋根のメリット・デメリットを教えてくください

 
屋根に関して、特に北海道では雪や雨による漏水や落雪のリスクをいかに少なくするかが重要視されます。
 
メリットとしては、片流れ屋根はシンプルな形状なため上記のリスクを比較的少なくする事が出来ます。
切妻屋根や寄棟屋根に比べると屋根の低い側と高い側の高さの差が大きくなり、比較的ダイナミックな空間構成になります。
 
デメリットとしては、降雪地方では落雪の問題が考えられます。
屋根材の選定によっては雪止めの設置が必要になったり、落雪をさせても問題ないくらい敷地に余裕が必要になります。
 
また、逆に切妻屋根や寄棟屋根に比べると屋根の低い側と高い側の高さの差が大きくなり、高さ制限のある地域などでは不利に働く場合もあります。
比較的外壁面積が大きくなる傾向があるため、内部空間を有効に使う工夫が必要です。
 

片流れ屋根の雨漏り対策はどのようにしていますか?

 
比較的雨漏りの問題が起きにくいため、特別な事は必要ないかと思います。
ただし勾配によっては(緩やかすぎると)風の影響で雨水の逆流が起きる可能性もあるので、緩やかにしすぎない。
 
頂部の納めに関しては、デザイン的にすっきりさせる事と問題の起きない納め方を注意いたしました。
 

片流れ屋根の軒の出はどれくらいにしていますか?またその理由も教えてください

 
『オオヤネノイエ』では基本的に柱芯から450mmと設定しています。
敷地に対して要求された内部ボリュームと隣地境界線からの離れ、模型製作によるプロポーション検証から決定いたしました。
 
当初は先述の軒を全く出さないソリッドなデザインの検討もしていましたが、
外壁・屋根の材料選定の変更により外壁への雨掛かりを可能な限り避けるため、軒を出すデザインといたしました。
 
中庭に面する南側の開口部に関しては、夏場の日射を考慮して900mm出しています。
雁木空間に至っては1650mm出しています。
 

屋根の材料は何でしょうか。またその選択の理由はなぜでしょうか。

 
アスファルトシングル葺きです。
北海道では一般的に板金屋根(カラー塗装ガルバリウム鋼板)を使う事が多いですが、比較的積雪量の少ない地域という事と、海岸線から500m以内の塩害地域ということもあり金属系の材料を使いたく無いと理由で選択いたしました。
 
外壁も同じく金属系ではなく木質系とし、上記にあります軒の出のデザインにも関係してきます。
様々な条件を整理する事から、材料選択に始まり形状・屋根勾配等デザインの方向性が決まってくるかと思います。
 

オオヤネノイエの設計で工夫した点を教えてください

 
『1枚の大きな屋根』を表現するべく内部空間の構成をいたしました。
大型犬4頭を含む6匹のわんちゃん達が遊べる中庭に対してリビングと寝室・わんちゃん達の部屋を配置し、『1枚の大きな屋根』の下、豊かに暮らせる工夫をいたしました。
 
その中庭に立つと『1枚の大きな屋根』に穴が空き光が落ちてくる、屋根にぽっかりと穴が開いていて空だけが見える。
そんな空間演出をいたしました。
 
プロポーションに関して、2層部分を出来るだけ低く抑えるため、1階天井高さを低く取れるエリアと2階天井高さをを低く取れるエリアの階高を変え、その間を吹抜に面したブリッジ状のスロープで繋ぐ事としました。
それにより片流れ屋根を生かしたダイナミックな空間とする事が出来ました。
 

 

オオヤネノイエ・間取り図・断面図

1階平面図

↑1階平面図

2階平面図

↑2階平面図

断面図

↑断面図1

断面図

↑断面図2

断面図

↑断面図3

断面図

↑断面図4

片流れ屋根の家を建てたいと思っている方にアドバイスがあればお願いします

 
やはり大事なのはプロポーションかと思います。
単純な形なだけに屋根の勾配一つで見え方が全く変わります。
 
勾配が適正でないと、せっかくのシャープな片流れ屋根が不格好になってしまいます。
模型やパース等でしっかり検討していただく事をお薦めいたします。
 
また内部空間に関しても、ちょっとした床高さの工夫で有効的な使い方ができ、片流れ屋根特有の空間演出が出来るかと思います。
 

to be Designed 船坂大樹さんの片流れ屋根・設計事例

 

画像 建物の名称 紹介文
オオヤネノイエ

わんちゃんが自由に遊べる空間を確保するため中庭タイプを選択
安定した熱空間のため、土壌蓄熱式床下暖房を採用

 

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