長く愛される特別養護老人ホーム・株式会社ヨシダデザインワークショップ 吉田明弘さん


 
特別養護老人ホームが入居者に選ばれるためには競争力や地域開放機能、将来の機能変化など未来を見据えた視点が重要です。
 
特別養護老人ホームについて株式会社ヨシダデザインワークショップ 吉田明弘さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー 株式会社ヨシダデザインワークショップ 吉田明弘 の写真
東京都文京区本駒込5−2−5フローラ本駒込602
03-6902-0108

 

貴社が特別養護老人ホームの建物を手がけたきっかけがありましたら教えて下さい。

 
私が初めて高齢者施設を設計する際に依頼者から言われたことは、「施設的ではない施設にして欲しい」「こんな施設が欲しかったと言われる施設が欲しい」といったことでした。
 
これを聞いて大変意外に感じられた理由は、全国に同じ様なマンネリ化したデザインを持つ施設が多かったからです。
 
依頼者は競争力や付加価値、地域開放などといった事を求めていたことから、「建築家の提案力」を期待し、様々な種類の建物の設計実績があり、懐の広い観点での提案が可能な私共にお話をいただきました。
 

特別養護老人ホームは建築基準法以外になにか基準があるのでしょうか?

 
建築基準法以外では、消防法、地域条例の他、大型の施設を建設する場合は開発行為となる場合もありますので都市計画法が関わってまいります。
 
また、高齢者福祉施設関連法規である「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」、「老人福祉法(特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準)」、「介護保険法(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準)」、「各自治体の特別養護老人ホームの設備及び運営の基準に関する条例」などもあります。
 

特別養護老人ホームの平面計画で注意しているポイントを教えて下さい

  
最も注意している点は、利用者(入所者)の視点と運営側の視点です。
設計者は運営者の意見を重視するあまり機能的な施設になりがちです。
その場合かならずしも利用者にとって居心地の良い施設とは限らないことがあります。
 
例えば、全てが見渡せるプランは事故の予防など見守りの効果があり運営側にとっては歓迎されるものですが、こう言った「施設的」空間は入居者にとっては落ち着きがない無機的な空間とも言えます。
 
特養は要介護3以上の方が入所されますが、それは決して寝たきりで全ての事が理解できない植物状態では決してありません。
気持ちの良い空間や居心地の良い空間の感覚は健常者と同じなのです。
 
人間の尊厳が守られる最低限のプライバシーや少人数で居られる場所、緩やかに視線から隠れる場所(談話コーナー)、室内に居ながらにして季節の移ろいが感じられる場所などを機能と両立して設計することで良い内部空間をつくり出すことができます。
 
また、介護の世界では人材不足が問題となっています。職員の更生面からも運営者にとっても使いやすく居心地の良い空間でなければいけません。
 

 

特別養護老人ホームの外観で注意しているポイントを教えて下さい

 
特養は住宅であると同時に地域との連携が期待させる公共的な施設でもあります。
周辺環境に対して独り善がりに存在してはいけません。
周囲が戸建て住宅が多ければ、圧迫感を周囲に与えないボリュームに見える外形や素材を工夫した上でデザインを考えていく景観的視点が必要です。
 

 

特別養護老人ホームの居室の設計で注意しているポイントを教えて下さい

 
居室は介護ベットを置くスペース、トイレ、洗面流しのみで構成された単純なスペースと思われがちです。
しかし毎日長い時間を過ごす終の住処となるスペースであると考えた場合、病室のようなイメージを持ってはいけません。
 
ベットで寝た場合の視線、ベットを起こした(座った)場合の視線、太陽光の制御や外部への視線の制御、介護度に応じた介助に配慮しつつプライバシーを尊重したトイレ構成、エアコンの位置、車椅子のまま出られるバルコニーなど、さまざまな要素を複合的に考慮することが重要です。
 

特別養護老人ホームの共用部の設計で注意しているポイントを教えて下さい

 
共用部(特に廊下)でよくあるインテリアは腰壁が木製で天井とそれ以外が白いクロス、床が長尺シート(フローリング)で、両側に居室の扉が並んでいる姿です。
廊下は中廊下が多いので「施設的」となってしまいます。
 
私は現状を打破することばかりを考えていますので、展示壁面(入居者や運営者の作品など)の提案や、居室入り口周りに入居者や家族が飾り付けできる工夫(アイデンティティーの場)や、プランを雁行させて視線を制御したり、中庭を積極的に取り込む(居ながらにして自然を感じる)など、穏やかな見守りの関係「見る見られる関係」を作り出します。
 
そこは建築家にとって本領を発揮する場であると考えています。
 

 

特別養護老人ホーム設計を貴社に依頼するメリットを教えて下さい。

 
これからは入居者に選ばれる競争力や地域開放機能、将来の機能変化など未来を見据えた視点が重要となってきています。
私はこれまで設計した施設はデザイン的にも高齢者福祉の観点でも建築賞などで高い社会的評価をいただいて参りました。
ご依頼をいただければ建築家の提案力による「付加価値」を施設に与え、長く愛される施設を実現することができます。
 

特別養護老人ホームの補助金申請の手伝いなどもやっていただけますか?

 
補助申請についてはこれまで建てた全ての施設についてお手伝いをしてまいりました。
また、国土交通省による木造建築技術先導事業補助など、高齢者福祉関係の方々にあまり馴染みの薄い補助も積極的にお勧めしています。
 

特別養護老人ホームの改修などもやっていただけるのでしょうか?

 
これまで改修の経験はありませんが十分可能です。
また、建物が古くて完了検査済証や確認済証が無い場合など、建築基準法適合性判定が必要な場合もご相談いただければ対応をすることが可能です。
 

 

ハートホーム宮野は木造ということですが、木造にした理由を教えて下さい。

  
依頼者である山口市の青藍会は、地域林業の振興に貢献したいと考えていました。
また、入居者にとって優しい木の温もりや柔らかさを持った空間を求めていました。
 
当時3000㎡を超える木造軸組構造の実現は国内最大の大きさでしたので、国土交通省による「木のまち整備促進事業」への応募をお勧めしたところ、見事補助事業に選定されたことから実現しました。
 

土地購入前の相談にものっていただけますか?

 
当然可能です。
施設の規模などが分かれば、それに見合った土地の条件などを示すことができますので購入前の参考になります。
 

特別養護老人ホームを建てたい方になにかアドバイスがありましたらお願いします。

  
これからの高齢者施設は地域包括ケアなど地域との連携が重要となってきます。
また、入居者確保や運営上の観点からは、介護・看護事業所や診療所、サービス付き高齢者住宅などの併設も視野に入れてご計画されることをお勧めいたします。
 
私の私見ですが、高齢者の増加に伴い「選ばれる施設」の観点がこれからは必要と感じています。その点からも私ども建築家の提案力にご期待いただければ幸いです。
  
私どもの事務所(株式会社ヨシダデザインワークショップ)のホームページに、これまでの実績と高齢者福祉施設に関する考え方、設計の進め方など詳しく説明しておりますので、どうぞご覧ください。
  

株式会社ヨシダデザインワークショップ 吉田明弘さんの特別養護老人ホーム・設計事例

 

画像 建物の名称 紹介文
ハートホーム宮野

「ハートホーム宮野」はサービス付き高齢者住宅、特別養護老人ホーム、ショートステイの機能を持つ高齢者住宅の複合建築です。

ハートホーム平川

山口市内に建てたケアハウス、グループホーム、デイサービスステーションの複合建築物です。私自身の以降の高齢者施設設計の原点となるアイデアが詰まっています。敷地が農業用水で分断されていたことから、行政と水利権者への説明会を開いて移動させるとこができました。これにかかる申請業務も私達で行いまいした。

フロイデ彦島(ケアハウス、グループホーム、デイサービスステーション)

フロイデ彦島はグループホーム(18室2ユニット)とケア付き老人ホーム(個室48室6ユニット、内2室が夫婦対応)の居住施設に、地域施設(デイサービスセンター、地域交流スペース)を複合させた施設です。

 

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