ハートホーム平川
中庭
広すぎず、狭すぎず。丁度良い広さの中庭です。空壁と緑、気持ちの良い空間です。上層階も凹部には中庭を見下ろすテラスがあります。
撮影:北嶋俊治
計画前に依頼者が悩んでいたことは、
「敷地内に農業用水が横断していることから、建物を2棟にしなければならないが、管理上分棟化ししたくない。」
「日本中どこも高齢者施設は施設然とした建物ばかりです。もっと入居したくなるデザインの良い施設にして欲しい。」
「デイサービスとケアハウス双方が独立しつつも、管理者側にも配慮した施設にして欲しい。」
といったご要望がありました。
依頼者の知人から、「希望を叶えられる建築家に設計して欲しい」とのご要望があり、依頼していただきました。
山口市内に建てたケアハウス、グループホーム、デイサービスステーションの複合建築物です。私自身の以降の高齢者施設設計の原点となるアイデアが詰まっています。敷地が農業用水で分断されていたことから、行政と水利権者への説明会を開いて移動させるとこができました。これにかかる申請業務も私達で行いまいした。
9名がそれぞれの個室を持ち、リビング・キッチン・浴室を共用する形式をケアユニットと言いますが、この施設ではケアハウスが6ユニット、グループホームは2ユニットあり、高齢者施設とは言っても、大家族の集合住宅と言うこともできます。ここでは、2つの中庭に「水」と「緑」をテーマとして与え、外に出歩くことが難しい高齢者に対して、居ながらにして自然の恩恵が受けられるうようにしています。
中央の水の中庭は3層吹き抜けは、中央で食堂と水の中庭をサッシで仕切ることで、外部と内部がシンクロし、同時に上層階の気配が伝わる空間を作り出しています。高齢者にとって個室の外は「都市」であり、一歩廊下に出れば刺激に満ちた活力を感じるよう配慮されています。
中庭と個室の関係や小テラスと居室の関係、きめ細かな収納計画など、住宅に必要なヒューマンスケールのアイデアの積み重ねが、大きな全体の完成度を高めることに成功しました。
以前の職場であるアプル総合計画事務所で管理建築士・設計総括であった時に東大の大野秀俊教授のご指導のもと設計をいたしました。
完成後にいただいた言葉です。
オープニングセレモニーで、働く介護職員から「こんなに美しい施設で働けるなんて幸せです」と涙ながらに言っていただきたことを今でも忘れられません。
私たちにとって初めての高齢者施設で、依頼者も大丈夫なのかと本心で思われていたかもしれませんが、完成した建物が想像を超えていたようで、「中庭の導入や複雑なプランニングなど、設計時は少し不安だったけれど、完成して初めて建物の良さに感激し、感謝しております。」「中庭と吹き抜けが織りなす空間が素晴らしい。」などお褒めの言葉をいただきました。このように言っていただけたことを大変誇らしく思っております。
正面外観
大きな庇が玄関の所在を表しています。複雑な造形は内部の機能の反映でもあります。
撮影:北嶋俊治
アプローチ
ガラスの屋根が連続するアプローチ通路です。
壁は以前はスカスカでしたが、長年の手入れで現在ではつる系植物が繁茂しています。
撮影:北嶋俊治
共用リビング
数名の入居者専用のリビングです。テラスは第二のリビングとしていつも大切にしています。ここでも段差無く出られるアウターリブングとしてのテラスがあります。
撮影:北嶋俊治
1階デイサービス
3層吹き抜けのデイサービスは同じサイズの中庭とサッシで内外が隔てられています。中庭はパーゴラ状の屋根から柔らかい反射光が降りるように工夫されています。室内に居ながらにして外部が感じられる空間です。
撮影:北嶋俊治
1階デイサービス
こちらは2層吹き抜けのデイサービスで、3層吹き抜けのデイとは中庭を挟んで向かい合わせの配置になっています。様々な環境の違うスペースが用意されています。正面玄関に面しているので、地域に開かれたスペースになっています。ピアノが置かれ、コンサートなども開かれます。
撮影:北嶋俊治
デイサービスの中庭は吹き抜けとガラスで隔てられていますが、壁面が内外同じため、一体の空間のように感じます。木デッキと水(池)を交互に配置した庭です。水草と落水の工夫で、マイナスイオンが感じられる中庭にしました。
撮影:北嶋俊治
廊下
中庭と吹き抜けによって、屋外のような明るい廊下です。廊下の窓は大きく開くだけでなく、このように造り付け収納とベンチと一体になった開口が交互に現れるインテリアとすることで、管理上の収納の要請と、少人数で居たいといった高齢者の心理にも答えています。
撮影:北嶋俊治
個室
開口はできるだけ大きくとり、バルコニーと室内が連続するようにしています。天井面はわずかに傾斜させることで、室内が柔らかい印象になるようにしています。
撮影:北嶋俊治
この施設には様々な場所にテラスを設けています。リビングや個室以外のこういった場所は、居住者がお気に入りの場所を見つける楽しみも提供しています。写真向かい側の凹部にもテラスがあります。
撮影:北嶋俊治
建物外観
方位によっては、軒の深さとスクリーンによって日差しをコントロールしています。外観の特徴になっているパネルは細かい穴の空いたアルミの板で、使用量が多いことから既製品の値段で、開口率を理想的にした特注品をつくりました。下部の列柱部分は先に説明した緑のアプトーチ回廊です。居住施設であることから正面から回り込む「路地」のようなアプローチにしました。
撮影:北嶋俊治
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