美しい屋根の社寺建築・ATS造家設計事務所 奥田 敦さん


 
社寺建築の屋根は反りやたるみなど、様々な曲線で構成されるデザインを その規模や形態に合わせて検討することが大切です。
 
社寺建築についてATS造家設計事務所 奥田 敦さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー ATS造家設計事務所 奥田 敦 の写真
京都市山科区大宅古海道町13-6
075-502-0606

 

貴社が社寺建築を手がけるようになったきっかけを教えてください

 
大学を卒業後、勤めた設計事務所で初めて担当させていただいたのが、京都 上賀茂神社の公衆トイレでした。
以来、社寺建築を設計する機会が多くあり、独立後もご縁のある方々からお声をかけていただいております。
 

社寺建築の工法とはどのようなものですか?

 
土壁や垂れ壁、腰壁などを耐力要素とする、伝統工法です。
京都の町家などにも使われる工法で、ある程度建物が揺れることを許容し、地震力をいなして吸収するという工法です。
強固な耐力壁により地震力に対抗する現代の工法とは、構造解析の考え方が異なります。
 

 

社寺建築の設計で心がけている点を教えてください

 
美しい屋根が全てだと考えております。
社寺建築の設計は、どのような屋根にするのか、という屋根の設計に集約されます。
 
反りやたるみなど、様々な曲線で構成される屋根のデザインを その規模や形態に合わせて検討します。
屋根のプロポーションを決定するために、原則は木割り法に則って設計しますが、基本的な約束事を心得た上で、自由にデザインすることが大切だと思います。
 

社寺建築の屋根はどのようなものが使われるのでしょうか?

 
屋根の材料は、瓦や銅板、最近ではチタンを使うこともあります。
瓦の場合は、平瓦を敷き詰めてその間に丸瓦を重ねて置く、本瓦葺きという重厚な屋根が好まれますが、予算によっては、民家と同様の桟瓦葺きにすることもあります。
 

社寺建築の構造で注意している点を教えてください

 
土壁や雑壁が地震に耐える耐力壁になりますので、一定量の壁が必要になります。
正面を全て開口部にした開放的な社寺建築をよく見かけますが、構造的には弱くなります。
状況を検討した上で、鉄筋を筋交いとして壁の中に塗り込み、在来工法のような解析をする場合もあります。
 

社寺建築でも金物を使うのでしょうか?

 
宮大工さんと相談しますが、小屋裏などで見えないところは、ボルトなどで構造部材を繋いだほうが良い場合もあります。
鉄筋を筋交いとして壁の中に塗り込む場合は、軸組部にも金物が必要になります。
金物は壁の中に塗り込みますので、見えることはありません。
 
木は木で締めて、金物を一切使わないことも考え方の一つですが、私は金物を適材適所で使えば、より安全で長寿命の社寺建築になると考えています。
 

長岡京市 寂照院 仁王門 薬医門 新築工事で工夫した点を教えてください

 
伽藍の正門として、本瓦と丸柱を用い、重厚な切妻屋根の仁王門としています。
金剛力士立像二体は、運慶・湛慶の流れをくむ仏師によって室町時代に作られたと伝えられ、とても立派なものです。
 

 

京都 圓学山 住心院 本堂・庫裏 新築工事で工夫した点を教えてください

 
30坪ほどの小さなお堂ですが、入母屋屋根は本瓦で葺き、本繁垂木(垂木の間隔を1枝(垂木幅と成の合計)とした木割り)の本格的な本堂です。
向拝部分の桔ね木(深い軒を天秤のように支える丸太の構造材)を納めるため、垂木を湾曲させた化粧軒裏にしています。
虹梁の彫刻も深く、躍動感があって美しいものです。
 

甘露山持宝寺 本堂・書院・庫裏・山門で工夫した点を教えてください

 
本堂、書院、庫裏を新築、山門を移築して、境内にある建物全てをやり替えました。
思いがこもった既存の建物を解体することは、住職や檀家さんにとって苦渋の選択です。
 
喜ばしいことばかりではないことを肝に銘じ、新しい建物が風雪に耐え、百年そして二百年の歴史を刻んでくれるよう、高耐久の工夫をしています。
解体した本堂への感謝の気持ちを込めて、その材木を使って数珠を作り、関係者の皆様に配っていただきました。
 

 

貴社に社寺建築の設計を依頼するメリットを教えて下さい

 
当事務所は、社寺建築設計専門ではありません。
建主さんと相談しながら、暮らし方を熟考した住宅なども数多く手掛けていますので、昔ながらの堂宮を設計するだけではなく、心地よく施設を使っていただける工夫や、心豊かに過ごしていただける空間をご提案させていただきます。
 
伝統を踏襲しながら、新しい建物の形態やその使い方なども一緒に考えてまいります。
 

ATS造家設計事務所 奥田 敦さんの社寺建築・設計事例

 

画像 建物の名称 紹介文
甘露山持宝寺 本堂・書院・庫裏・山門

本堂向拝
向拝の柱と本堂を繋ぐ海老虹梁という、うねった横架材です。
昔はこのような自然の木を探してきて使ったようですが、現在では四角い材料からこのような形に切り出すことが多くなりました。

京都 圓学山 住心院 本堂・庫裏 新築工事

天台宗の修行寺院に相応しく、京都市内から岩倉の山中を切り開いて移転しました。

土木工事や寺院建築の基本を勉強させていただいた、心に残る仕事です。

長岡京市 寂照院 仁王門 薬医門 新築工事

本堂の奥には、平成7年(1995)の本堂新築工事の際に発掘された海印寺古墳の一部が保存展示されています。7世紀初めころの円墳の横穴式石室だそうです。
時を超えた幻想的な空間で、見学もできます。

弓矢八幡教会 伏見教殿・道場

本体の構造は鉄筋コンクリートで、高欄手摺や屋根化粧材はスチールで設計しています。
塗装を施しているので木の質感はありませんが、木割りに則った設計寸法や職人さんの丁寧な仕事により、繊細な社寺建築の印象が残ります。