自分たちが過ごしやすい終の棲家・江川竜之建築スタジオ 江川竜之さん


終の棲家は子育てなど考慮せずに、自分たちが過ごしやすい空間に焦点を当てて建てることができます。
終の棲家について江川竜之建築スタジオ 江川竜之に伺いました。

お話を伺った建築家

 

ユーザー 江川竜之建築スタジオ 江川竜之 の写真
名古屋市西区名駅2-28-1フェニックスビル5F
052-433-1930

江川さんが「終の棲家」を意識した住宅設計を手がけるようになったきっかけを教えてください。

 
知人の高齢のご両親からの依頼により、設計させていただきました。
定年に向けて「終の棲家」として建てたいとのご要望でした。

終の棲家として家を建てることのメリット・デメリットを、設計者の視点から教えてください。

 

<メリット>

子育てなど、施主以外の生活を考慮せずに、自分たちが過ごしやすい空間に焦点を当てて建てることができるので、施主にとっては理想に近い家になるのではないかと思います。
 
また人生経験を経て、自分たちにとって良いもの悪いもの、向いているもの向いていないもの、などの判別がより明確になっている方が多いので、建てた後で、ああすればよかった、などの後悔が少なくなり、満足度の高い家になりやすいと考えます。
 

<デメリット>

一戸建て住宅は、これから子育てを行う世代のために建てることが多く、大きくなった子供がそのまま住み続けることも視野に入れて設計しますが、「終の棲家」は、既に子世代は別のところで住まいを持ち、生計を立てているケースがほとんどなので、永く使い続けるという展望がぼやけてしまいがちとなります。
別の言い方をすれば、施主が住まう期間に対して、建築コストパフォーマンスが悪くなってしまいます。
 
将来を見据えると、売却するという選択肢が可能性として大きくなると推測しますが、ここで、メリットで述べた「理想の家」が逆にデメリットとして作用してしまう一面があります。
理想を詰め込んだこだわりの強い家は、一般的には売れにくくなってしまう傾向があるからです。
よって、コストパフォーマンスがよくない上に、売れにくくなる、というマイナス面の可能性も持ち合わせています。

終の棲家を検討するのに「適した年齢」はありますか?50代・60代からでも遅くないでしょうか?

 
日本人の健康年齢寿命が74歳前後というデータによれば、50代・60代でも遅くはないと思います。
全ての方ではないですが、一般的には、仕事漬けで寝るためだけに帰宅する時期よりはむしろ、より家にいる時間が長くなる世代となってくるので、ある意味、子供が巣立った後の世代の方が「適した年齢」と言えるかもしれません。

終の棲家を考えるとき、マンションより一戸建て(注文住宅)を選ぶべきケースはどのような方でしょうか?

 
マンションは一般的には都市部に多く、一戸建ては都市部近郊、または地方に多く建っています。
建物自体がマンションか一戸建てかの前に、立地について、自然の恵み以外の多くが揃っている都市部に住みたいか、それとも、自然豊かだが生活に必要なもの以外から離れた地方に住みたいか、またはその中間の都市部近郊に住みたいか、の選択を先立って行うことになるかと思います。
地方住まいではマンションの選択肢は無くなってくるので、この時点である程度絞られてきます。
 
次に具体的な生活の一面を見比べてみたいと思います。
ゴミ出しについて、マンションによっては24時間いつ出してもよい、というところもありますが、一戸建ては、必ず決められた曜日と時間帯に出さなければなりません。
上階への昇降について、マンションはどれだけ上階でもエレベーターで行き来ができますが、一戸建ては平屋を除き、2,3階への階段での行き来が発生します。
(住宅用エレベーターを設置するケースもあるので、あくまで一般論です)
 
建物の維持管理について、マンションは区分所有者全体(実際には持ち回りの理事会や修繕委員会)で行いますが、一戸建ては自分たちで全て手配する必要があります。
ご近所づきあいについて、マンションは疎遠傾向ですが、一戸建てはある程度のお付き合いが発生します。
ほかにも枚挙にいとまがないですが、生活の一部分を想像して、どちらが自分たちにとって住みやすいかをシミュレーションして決めた方がいいかと思います。

終の棲家の間取りを考える上で、特に大切にしていることはどんな点ですか?平屋を選ぶ方も多いのでしょうか?

 
まずは面談にて、どのような目的で建てたいのかという根幹の部分をお聞きします。
何らかの目的をもってその立地を選んでいるはずなので、その部分をヒアリングにて理解するようにしています。
そこから見える景色、治安の良さ、閑静な環境、子世帯の家に近いなど、様々な理由と目的が存在します。
それをコンセプトの重心に据えて設計デザインを進めて行きます。
間取りとしては、可能な限り平屋をお勧めしています。

老後の生活を見据えたとき、バリアフリーや介護対応以外に、設計上で意識すべきポイントはどこでしょうか?

 
バリアフリーについては、要望が無くてもスタンダートとして対応すべき内容かと存じます。
平屋が理想ですが、土地の広さにより2階建て以上の場合も多々あります。
 
日常生活の中で頻繁に利用するトイレ、キッチンダイニングはなるべく1階に配します。
長く過ごす空間よりは、行き来の頻度の高い部屋を1階とするように提案しています。
浴室も1階がよいですが、1日の中で使用頻度が高くなく、かつ将来的に外部サービスを利用できるものは、取捨選択を迫られる中では2階に持っていくこともあります。
 
外部サービスの利用にあたっては、アプローチのバリアフリーを考慮しておく必要があります。
リビングも1階がベターですが、スペースが確保できない場合、やはり2階とします。
寝室は基本的に1日1回の利用なので、2階でよいと考えています。
ただし、将来的に階段の昇降が困難になった時を想定して、1階に小さくても寝室に転用できるスペースをつくっておくことが肝要かと考えています。

三重県桑名市の設計事例「終の棲家」では、丘陵地の中腹に平屋を建て、お風呂から初日の出が見えるようレイアウトされたとのことです。その発想はどのようにして生まれたのですか?

 
施主が、土地選びの段階で、初日の出が見える立地であることを重要視していました。
よって、ヒアリングでお聞かせいただいた内容を設計に反映しました。

同じ事例で「裏山への大開口」や「深い軒」など、外部の自然との関係を大切にされています。景観を活かす設計で、とくに気をつけたことを教えてください。

 
現地調査から、裏山にひと気が無いことが分かっていたので、積極的に自然を感じ取れる大開口を提案しました。
大開口は夏の厳しい日差しを取り込んでしまうので、深い軒とすることで夏の日差しを抑え、冬の日差しを取り込むよう調整を行っています。
外観についても、景観になじむよう派手なデザインとならないよう留意しました。

おひとりさまや子なし夫婦が終の棲家を建てる場合、家族がいる場合と設計の考え方は変わりますか?

 
大きく変わると思います。
おひとりさまだから、子なし夫婦だから、という条件に左右されるのではなく、ひとりでもふたりでも、子供がいなくても、たくさん同居していても、とにかくヒアリングを実施すると、同じ要望はなく、唯一無二の家づくりに集束していきます。
何を目的として建てるのかにより、設計の考え方は全く変わります。

終活を考える中で「家を建てる・リフォームする」という選択肢を選んだ方へ、後悔しないための心構えやアドバイスをお願いします。

 
設計者に何のために建てたいのか、リフォームしたいのかをしっかり伝えることが重要かと考えます。
逆の視点から表現すると、しっかりとヒアリングにより聞き出してくれる設計者を選ぶこと、が重要と言えます。
 
次に、目的を理解してもらったとしても、空間に反映できる力量のある設計者である必要があります。
これについては、過去事例を知り、面談時にじっくりとコミュニケーションを交わし、
実現してもらえる設計者かどうかを判断していただくほか無いかもしれません。

貴社に設計・監理を依頼できるエリアを教えてください。

 
名古屋市を中心に、他県も含め広範囲にて設計させていただいております。
その時の繁忙状況により、遠方の対応も実施しております。
お気軽にお問合せいただければ幸いです。

江川竜之建築スタジオ 江川竜之さんの終の棲家・設計事例

 

画像 建物の名称 紹介文
終の棲家

空気と景観のよい環境で老後をお過ごしになりたいとのご要望でした。
景観を活かすため、お風呂から初日の出が見えるようレイアウトしたり、裏山に向かって大開口を設けるなど、外部との関係を大切に計画を進めました。

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