敷地に合わせて柔軟に対応できる鉄筋コンクリート造・株式会社ユミラ建築設計室 弓良一雄さん


狭小地や複雑に角度がある変形敷地に建設する場合、敷地に沿って最大限の床面積を確保するために微妙な角度を付けたり、また法規上の斜線規制に沿って削ったり、はり出したりする場合があります。
鉄筋コンクリート造は敷地に合わせて、とても柔軟に対応できる工法です。
 
鉄筋コンクリート造について株式会社ユミラ建築設計室 弓良一雄さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー 株式会社ユミラ建築設計室 弓良一雄 の写真
世田谷区北沢2-8-6-802
03-5452-8155

 

鉄筋コンクリート造のメリット・デメリットを教えて下さい

 
建物のつくり方には木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、組積造(補強コンクリートブロック造など)などがありますが、鉄筋コンクリート造はその中でもメリットが多い工法です。
通常RC造「Reinforced Concrete」(補強されたコンクリート造)と言われますが、これは鉄筋(引っぱり力に強い)をコンクリート(圧縮力に強い)で包んだつくり方で中身が詰まった工法です。
 
木造や鉄骨造のようには構造体に隙間のあるつくり方ではありません。
 
狭小地や複雑に角度がある変形敷地に建設する場合、敷地に沿って最大限の床面積を確保するために微妙な角度を付けたり、また法規上の斜線規制に沿って削ったり、はり出したりするにはとても柔軟に対応できる工法です。

メリット

  • デザインの自由度が高い。
    木造や鉄骨造では困難な曲線や角度の複雑なデザインも可能です。
  • 遮音性に優れる。
    コンクリート自体が重い材料なので空気中を伝わる音を遮断できます。
  • 耐火性に優れる。
    コンクリートは熱にとても強い材料です。
  • 断熱、蓄熱性に優れる。
    中身が詰まったつくり方なのでとても断熱性能が優れています。また断熱材を適切に組み合せると優れた蓄熱性が得られます。
  • 防水性に優れる。
    コンクリートは他の素材に比べ防水性能があります。また更にコンクリートに特殊な処理をほどこす「躯体防水」という防水方法があります。屋上緑化などに適しています。
  • 施工性に優れる。
    鉄筋コンクリート造は現場で鉄筋と型枠を組んで施工します。クレーン車を使って鉄骨を建ていく作業が必要な鉄骨造に比べ、狭い道路に面した土地でも施工可能です。

 

デメリット

  • 重量がある。
    鉄筋もコンクリートも重い材料です。建物は強固になりますが、他の構造方法に比べて建物の事態の重量が重くなるため、弱い地盤では地盤改良や杭による支持の必要となる場合があり、それがコスト増に繋がります。
  • 建築費用が高めです。
  • 通常の木造に比較するとコストは1.2~1.3倍くらいでしょうか。しかしこの差は小さくなっているようです。

鉄筋コンクリート造の防音性能は木造と比べてどうなのでしょうか?

暮らしの中で建物内に伝わる音には2通りあります。
空気中を伝わる「空気伝播音」と叩いた衝撃で発生する「個体伝播音」です。
 

「空気伝播音」

空中を伝わる音です。たとえば人の話し声やテレビの音などです。
これは重い素材をもちいることで遮断できます。
コンクリートは、重量があるため遮音性に優れています。
 

「個体伝播音」

音が素材を通して伝わる音です。コンクリートはこれに対して特に優れているとは言えません。
コンクリート面を金槌などで叩くと離れた階にも音は伝わります。
これは糸電話と同じ原理です。
これを防ぐためにはコンクリートと他の素材との間に緩衝剤を挟んで伝播を断ち切ります。
 
実際の建物では音の伝わりやすい床下にゴム付きの緩衝剤を入れたりして衝撃音がコンクリートに直接伝わるのを防ぎます。
こうした配慮によりコンクリート造は木造や鉄骨造に比べより高い防音性能を得る事が出来ます。
 

鉄筋コンクリート造の耐用年数はどれくらいなのでしょうか?

 
半永久的、100年くらい、イヤもう少し短く70~80年くらいという方もいるかもしれません。
コンクリート造で長く現存している建物は多くないのではっきりとは証明されていませんが、しっかり施工された建物であれば100年以上の耐久性はあると思います。
 
しかし問題になるのはコンクリート造の建物自体が強固でも必要な設備やそのための配管の交換やメンテナンスです。
コンクリートの耐用年数に比較して、設備機器や、設備配管などの耐用年数は短いため、機器の交換が難しかったり、技術革新により旧来のものがなくなったりなど不都合が生じる可能性があるからです。
 
木造も日本古来の建物は長い間残っています。
耐用年数は比較しても余り意味がありません。どれだけメンテナンスできるかによります。
  

鉄筋コンクリート造で注意する点があれば教えて下さい

 
コンクリート造は強固な建物になりますが、解体や増築のための一部取り壊しであっても労力がかかります。
計画時に将来の構想などよく考え検討して設計することをおすすめします。
 
建物のベースあるいは骨格となる部分をRC造でしっかりつくり、木材や鉄骨などを組み合せる事もできます。
設計者とよく話し合いながら計画を進めるのが良いのではないでしょうか。
 

貴社の設計事例は打放しコンクリートが多いようですが、打放しコンクリートのメリット・デメリットを教えて下さい

 
私どもの事務所では、打設されたコンクリートの表面をそのまま仕上としてみせる打放しコンクリートの建物を多く設計しています。
石造りに似た打放しコンクリートが好きです。
仕上材がいらないので余分なコストをかけずにすみます。
断熱材を適切に組み合せると保温性のある鉄筋コンクリートの建物を実現できます。
 
また「躯体防水」という方法もあり、多く設計しています。
コンクリート自体に防水性能を持たせるため、将来に防水のやり替えをしなくてすむ工法です。
工事費はあがりますが長期的には経済的な方法です。
 
打放しコンクリートのデメリットはコンクリートの表面の劣化という事ですが、打放しを生かしたまま表面を保護する浸透性の疎水材などを施す事で解決できます。
コンクリート自体は他の材料に比べ劣化に強い材料です。
 

立川の賃貸マンションで工夫した点を教えて下さい


↑立川の賃貸マンション

 
建物の外部、内部の仕上を可能な限り打放しコンクリートとしました。
コスト減につながります。
コンクリートは石に似ているので汚れが気になりません。
住人が入れ替わる賃貸住宅に適した方法です。
入居者が変わるたびに汚れた仕上材を交換せずに済みます。
 

奥沢の賃貸併用住宅で工夫した点を教えて下さい


↑奥沢の賃貸併用住宅

 
外壁に製品化された断熱材入りのセメント板をコンクリートの型枠として使用し、そのまま打込んだ「外断熱工法」の建物です。
外壁部分に断熱材があるので、室内は壁天井とも打放しコンクリートとしています。
コスト減につながります。
 

経堂の賃貸併用住宅で工夫した点を教えて下さい


↑経堂の賃貸併用住宅

 
奥沢の賃貸併用住宅と同様の「外断熱工法」の建物です。
屋上の防水はコンクリートに防水性能を持たせた「躯体防水工法」でつくりました。土を入れて植栽スペースを設けた屋上テラスをつくっています。
室内は同様に壁天井とも可能な限り打放しコンクリートとしています。
コスト減につながります。
 

店舗+賃貸住戸の小ビルで工夫した点を教えて下さい


↑店舗+賃貸住戸の小ビル

 
都内の商店街の細長い敷地に計画した建物です。
形の自由度の生かせる鉄筋コンクリートだから実現できた建物です。
他の工法では同じ高さの室内をつくるために各階の高さが20cm程度余分に必要だったり、法規制の日影規制や道路斜線、高度斜線の影響に対応したうえで最大限の容積を確保することが困難だったりするために、こうした形ではつくれません。
打放しコンクリートの質感も最大限生かしてコスト減をはかりました。
 

鉄筋コンクリート造の建物を建てたいと思っている方になにかアドバイスがありましたら教えて下さい

鉄筋コンクリート造は木造や鉄骨造に比較して心配するほど高価ではありません。
遮音性能が高く、地震に強い堅固な建物を実現できます。
木の暖かみを生かした木造の建物も魅力的ですが、骨格を鉄筋コンクリートで強固につくり、内部に木材を多く組み合せ、両方の良さを持つ安心の建物をつくる事が出来ます。
 

鉄筋コンクリート造の建物をハウスメーカーや建設会社でなく、貴社に依頼するメリットを教えて下さい

私どもは鉄筋コンクリート造の建物を数多く設計しています。
多くの経験や知識があるため、その良さを最大限生かすことができます。
 
施主の希望をよく検討して合理的な設計をし、設計後は施工会社数社のから競争の見積をとって厳しくコスト管理します。
結果的にハウスメーカーや建設会社に依頼するよりも安価で質の高い建物を実現できます。
 

株式会社ユミラ建築設計室 弓良一雄さんさんの鉄筋コンクリート造設計事例

 

画像 建物の名称 紹介文
木造とRC造で住み分ける二世帯住宅

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