●建物の紹介文(依頼者のお悩み・ご希望を叶えるために工夫した点・採用した建材など):
ふかされた外壁面で呼吸する
杉板の外壁は、メンテナンス性を考慮して、開口部や雨樋、設備などの収まりと一切からまないようになっている。突付けた杉板を押縁でビス止めした壁材の自由度は高い。柔軟に取り替えが可能なことで、木造住宅の持続が保たれると考えているためである。また、大きくふかされて貼られた結果、下階の吹付けに庇の役割を果たすと同時に、長雨で木材が吸湿しても、躯体まで届かない程度の距離を保ち、木建廻りなどの水染も防いでいる。湿気をよせつけにくい、躯体にも優しい構造である。室内の換気は、極力機械に頼らない方法を採用し、リビング・ダイニングの大きな開口から吹抜けを介して寝室に抜ける方向性を持つ、自然で心地よい空気の流れをつくることを試みた。給・排気は、基本的には第3種換気法であるが、外壁を貫通して給気を得るような従来の方法ではなく、壁及び屋根の面内を一度通過するような長い給気ルートをとっている。板貼の外壁の裾から入った外気は、軒先にある屋根と壁の継ぎ目に走らせた細いスリット状の給気ラインから室内に取込まれている。これにより、冬期は外壁面で壁熱を取得し、重力換気によって壁体内にできる気流から、温まった空気のみが室内に入って来る。逆に夏季は、広い中空層によって壁体内や屋根内での熱の伝達を抑え、外壁と躯体表面の温度差により幾分冷やされた給気を得ることで、室内側の温度上昇率を下げている。