計画見直しに当たってぜひ留意して頂きたいことが数点あるので、挙げていきたいと思います。1.建設計画は国土交通省の直轄工事として、国交省が主導となって設計から監理まで一括して監督管理すること。
基本・実施設計の段階でもコスト超過したまま計画が進んでしまった最大の原因は、文科省の外郭団体の日本スポーツ振興センター(JSC)が建設の専門、判断能力もないまま、了承してしまったことによるものと思われます。
新たに見直しを行うに当たっては、本来の建設部署である国土交通省の官庁営繕部が主導となって計画策定し、厳しくコスト査定、工法のチェック等を含めて一貫して指導管理すべきです。
またJSCに計画を任せっきりにすると、同じ失敗を繰り返す恐れがあります。
2.設計施工者選定コンペはデザイン以外にコスト等についても適切か否か判断できる建築家の審査員が選定すること。
ザハ案を選んだ審査員長の安藤忠雄氏が会見で審査をしたのはデザインについてで、建設コストについては詳細な図面が出てないのであまり議論されなかった旨の発言をされていましたが、審査員としての責任を放棄したものと非難されても致し方ありません。
改めて行われるコンペではデザインはもとより、プラン内容、建設コスト、工法、建設スケジュール等についてもしっかり判断できる建築家、強いて挙げればこれまでも新国立競技場問題について色々と提言されていた槇文彦氏に審査員長になってもらうべきです。
3.コンペの要綱に計画条件、国と都のそれぞれの工費負担分、工事範囲についても明記し、財源の承認を取っておくこと。
何よりもアスリートファーストの精神のもと、今回コストや機能上も問題となったコンサート用の開閉式屋根(遮音装置)は取止め、サブトラックも整備したスポーツ専用のための最高のスタジアムとして、計画すべきです。
また工事金額が決まってから財源措置を検討するのでなく、予算の裏づけを取ってどこまでを工事として行うのかを国は国会予算承認、都は都議会の承認を予め取っておくことが必要です。
4.設計施工者選定から設計、工事完成まで、一貫して経過内容をオープンにすること。
今回のようにどのようにデザイン案が選ばれ、基本、実施、工事契約の各時点で詳細が不明確なまま金額だけが一人歩きすることのないよう、常に設計内容を各工種毎の内訳も含めて情報公開し、第三者からもチェック可能として、国民に理解を得られるようにしながら進めることが必要です。
一つ気になるのは、改めて行うコンペは前回のデザインコンペと違って実際に設計・施工を行う設計者・施工業者を一括して選定することになるということで、恐らくこれだけの規模を設計・特に施工できるゼネコンというのは国内でも大手のゼネコン5社+準大手数社程度に限られてくると思われ、果たしてコストについても競争原理が働くのか、懸念されるところで、その意味でも審査の段階で厳しく時間をかけて見積査定チェックすることが必要です。
5.責任者を明確に定めて、首相官邸直轄のプロジェクトとして進めること。
今回ここまでこじれた最大の原因は当初の工事予定額を大幅に超過して誰も責任を取らないまま計画が進んでしまったことにあります。
新たに計画を進めるにあたっては、総理をトップとした官邸直轄のプロジェクトとして、常に官房長官が進捗状況を把握した上で遅滞のないよう指示を出して進めることを希望します。
政府が現在発表した予定では秋ごろまでに新たな計画を作り直し、設計施工期間を約50ヶ月として2020年春完成予定で進めるとのことで、逆算すると今年9月頃には改めてコンペ開催し、年内前後に設計施工者選定、2016年、年明け頃から設計開始して、同年後半には着工し、工事期間約44ヶ月としてぎりぎり間に合うというかなりタイトなスケジュールです。
今度こそは後戻りは許されないので、確実に実行できるプランを望みたいものですし、2020年夏には全国民、全世界の国々から祝福される形でオリンピック・パラリンピックを迎えたいものです。