●建物の紹介文(依頼者のお悩み・ご希望を叶えるために工夫した点・採用した建材など):
主屋にはこの時代特有の大変立派な構造材が用いられていて、地域の風土に映える若狭瓦葺きの雄大な古民家であったため、壊してしまうよりも、機能性や構造強度を向上させた上で美しく蘇らせましょうというお話をしました。
詳しく調査したところ、構造材の入れ替えや耐震補強も含めてしっかりした改修を行えば、再生が可能な上、費用も解体+新築より安く出来るという判断に至り、その方向で設計を進めることになりました。
主屋の再生設計にあたり、耐震補強や腐食材の更新はもちろん、暗い、寒い、使いにくいという、古民家の欠点を解消するため、さまざまな工夫を盛り込みました。
メインの居間の天井と小屋裏を取り除き、天井の高い大きな部屋として、天井近辺の外壁に採光のための高窓を多く設けました。また、もともと囲炉裏の煙を屋根から排気するために設けられていた、越屋根状の通気口を利用して、風のない日でも簡単に自然通風ができるようにしています。
冬場の寒さには、ヒートポンプ式温水配管によりべた基礎を蓄熱槽に利用する低温式床暖房を採用しました。
何度かの増築を重ねて使い勝手の悪かった間取りですが、老朽化部分を解体撤去して、中庭を設けることで奥の部屋にも中庭から光を入れ、玄関からの室内動線や車庫から勝手口への外部動線を整理して、日常生活が機能的かつ快適に送れるような家になるよう、工夫しました。
設計開始と同時に、ご先祖様が植えて下さった裏山の桧を伐採し、自然乾燥させた上で、製材し、屋根のタルキや構造材の足固めなどに利用しました。床や壁には地元産の桧フローリングと杉の羽目板を使用しています。また、依頼者さんのご親戚が地元で作られた若狭和紙
を分けていただき、障子紙や襖紙として採用しました。