セルロースファイバー・インタビュー・祥設計室一級建築士事務所(しょうせっけいしつ) ささかよしゆきさん
セルロースファイバーとは古新聞とか段ボールをリサイクルした、木質繊維の断熱材です。
専門工事業者さんが吹き込み工事をしますので板状断熱材にありがちな施工のばらつきが少なく、断熱欠損も少なくなります。
セルロースファイバーについて祥設計室一級建築士事務所(しょうせっけいしつ) ささかよしゆきさんに伺いました
セルロースファイバーとはどのような断熱材ですか?
古新聞とか段ボールをリサイクルした、木質繊維の断熱材です。
粉砕して粉状になっています。
セルロースが吸放湿性を担います。
ホルムアルデヒド・VOCの放散試験において無垢の木材と同様の対象外で、F☆☆☆☆以上の安全性が認められています。
防蟻対策のため、ホウ素を添付しています。
難燃3級の性能があります。
貴社がセルロースファイバーを手がけるきっかけがありましたら教えて下さい
高断熱・高気密住宅を造るにあたり、当初は外貼断熱で対応しておりました。
外貼断熱に充填断熱を加えるときは高性能グラスウール120ミリを採用していましたが、換気扇・エアコンスリーブの丸い開口部は専用部材で対応。
コンセント・スイッチ廻りは専用カバーをつける。下地処理部分は、グラスウールをカットしてぴったりはめ込む。
さらに防湿フィルムを隙間なく丁寧に施工する。
これは、関西エリアの大工さんには、かなり難しい事でした。
いままでが、袋入のグラスウールを適当にいれておしまいみたいな事でよい。となっていましたので。
もちろん、きちんと施工してくださる大工さんもいらっしゃいます。
ただ、どうしても、設計監理CMRの立場からみると、納得できないところを多々発見します。
そこで、吹き込み断熱材をいろいろと検討しました。発泡系もあります。
ブローインググラスウールも有ります。
発泡系は吸放湿しませんので、どうも気に入らない。
燃えますしね。
でセルロースファイバーとなりました。
いまでは、Q値1.8位でしたら、セルロースファイバーの充填断熱で大丈夫となっています。
屋根の断熱は障害物がありませんので高性能グラスウールを採用しています。
セルロースファイバーのメリット・デメリットを教えて下さい。
メリット:
専門工事業者さんが吹き込み工事をしますので断熱欠損が少ない。
板状断熱材にありがちな施工のばらつきが少ない。
吸音・遮音性が高い。実際、工事の後は静かになります。
デメリット:
時間がたつと、自重で沈んできて、上のほうがすいてくるのでは、との恐れがあります。
当事務所では、大工さんがいやがるくらいぱんぱんに吹き込みますので、大丈夫と判断しています。
ウエットタイプは、乾燥が必用ですので養生期間をとる必用があります。
吹き込み工事の時は、粉だらけになりますので、建物の中に入ることはやめたほうがよいです。
大工さんと打合せして工程管理が必用です。
専用のトラックがくることがありますので、そのスペースがあるかどうか判断しないといけません。
埃が心配との意見もありますが、高気密住宅の施工をきちんとすればそのような事もありません。
セルロースファイバーの価格は他の断熱材に比べて高いのでしょうか?
当事務所は直接、専門工事業者さんにお願いしますので、高性能グラスウールで補助部材を使い、切ったり削ったりして、完璧を求めるのにかかる費用と比べると、あまり変わらないと判断しています。
セルロースファイバーの熱伝導率は他の断熱材に比べてどうなのでしょうか?
0.040[W/(m・K)]ですので、高性能グラスウール0.038とほぼ同じです。
外貼断熱に使われるフェノールフォームは0.020です。
ちなみに、数字が小さいほど断熱性能が高いことを示します。
ざっくりですが、鉄で84。コンクリートで1.6。桧杉で0.12。土壁・漆喰で0.7となります。
セルロースファイバーはどのように施工するのでしょうか?
まず、セルロースファイバーにはドライタイプとウエットタイプがあります。
ドライタイプは、断熱が必用な外周部の壁を内側から、不織布(薄い布)を断熱業者さんがタッカー(ホッチキスの大きなもの)で止めていきます。
その後、大工さんには、建物の中の仕事をお休みいただいて、専門工事業者さんがコンプレッサーで吹き込んでいきます。
工事日数は30坪くらいの家でしたら、全部で3日みておけば大丈夫です。
ウエットタイプは布無しで施工できます。が湿気を含んでいますので施工後の乾燥が必要なようです。
↑セルロースファイバーの施工の様子
セルロースファイバーはシロアリに食べられてしまう事はないのですか?
ホウ素が入っていますので、防蟻対策は大丈夫なようです。
ただしシロアリはゴキブリの仲間ですから、何でも食べます。
ですからホントのところはわかりません。
貴社はオープンシステムという方法で家を建てるそうですね。オープンシステムとはどのような方法なのか簡単に教えて下さい
間取りを考えて、図面を書いて、許可申請をする。
ここまでは一緒です。
通常の設計事務所はここで、工務店さんなどに図面をお渡しして見積をしてもらいます。
当事務所は、自社で数量積算をして、内訳書を作って、専門工事会社さん(基礎業者・大工さん・電気業者さん・設備業者さん・ガス業者さん)など数十社に合い見積をお願いします。
金入をしてもらいます。合い見積ですから1社ではありませんので相場の確認もできます。
結果、工務店経費分はお安くなります。
施主様と専門工事業者さん達と直接契約をしていただきます。(フォローは当事務所でします)
また、支払いは出来高となりますので、当事務所のチェックの後、できた分だけ施主様から直接、専門工事業者さんにお支払いしていただきます。過払いがありませんので、安心です。
工事中の監理・工程管理は当事務所がおこないます。
専門工事業者さんも下請け業者ではなく、請負業者さんとなりますので、まじめに仕事をしてくださいます。
隠すことがありませんので、施主様にもどんどん現場に来ていただきます。法律が許す限り変更もします。
セルフビルドもOKです。
こだわりの家創りを施主・設計・施工業者さんと一緒にすることができます。
メンテナンスに関しては、当事務所もおりますし、専門工事業者さんを施主様がご存じなのでとても安心なのではないでしょうか?
全国200社近い会員事務所がおります。事務局もありまして、独自の保険もありますので安心です。
貴社はSE構法も得意としているそうですね。SE構法とはどのような構法なのか簡単に教えて下さい。
SE構法とは、構造計算をされた木造金物工法です。
耐力壁の倍率・柱脚金物の倍率も通常の建築基準法以上の耐力で計算できますので、少ない耐力壁と柱で施工可能となります。
よって、スケルトンインフィルに対応可能です。
構造部分以外の柱・壁は将来すべてとりはずすことができます。
材料も指定プレカット工場からマーキングされた材料が届きます。
金物も必要な数量しかとどきませんので、足りないとか余ったとかなると、大変なことになります。
さらに、施工精度が要求されますので、認定工務店で、SE構法管理技士の施工管理がないとつくる事はできません。
当事務所は認定工務店で、わたしは管理技士です。実際に、基礎の施工には充分な注意が必要です。
断熱計算もやっていただけるのですか?
Q値計算というのをして、家から1時間あたりに出て行く熱量を計算します。当然日射とかも勘案します。
そうすると、外の気温が0度のときに18度まで上げるに必用な熱量がわかります。
この数字が小さいと省エネ住宅です。
北海道をのぞいて、次世代省エネレベルで全館暖房をすると、在来型の局所暖房の倍近いランニングコストがかかります。
気密測定はやっていただけるのですか?
C値測定といって、サッシもはいって、測定ができるタイミングに、扇風機みたいなので、家の中の空気を吸い出します。
減圧状態となり、床面積1平米あたりの開口をはかります。
1平方センチ以下を当事務所の標準としています。
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