ストレスを感じることなく安全に過ごせるバリアフリー住宅・大島功市建築研究所 大島功市
身体が衰え始めたころというのは怪我の発生率も高くなってきます。
こういった時に要因であるバリア(障害)を減らしておくことで、怪我のリスクや使いづらさからなるストレスを減らすことが出来ます。
バリアフリーにすることでストレスを感じることなく安全に過ごせることができるようになります。
バリアフリーについて大島功市建築研究所 大島功市さんに伺いました。
お話を伺った建築家
東京都国分寺市東元町3-19-9本多ナンバーワン(東京事務所)/茨城県水戸市千波町464-39 A棟103(茨城事務所) 042-326-2233 |
貴社がバリアフリー住宅を手がけるきっかけがありましたら教えて下さい。
きっかけは親御さんと2世帯で住まわれる御施主様が増えたことでしょうか。
親御さんよりもお子様の方がバリアフリーに関心を持っていることが多いように思います。
バリアフリーという言葉が広く認知され、居室間の段差はないものというのが一般常識になりつつあります。
そのため何をもってバリアフリー住宅というか一概には言えなくなってきていますが、お住いになられた方から『階段の昇り降りが楽になった』『靴を履くのが楽になった』などの感想を頂き嬉しく思っています。
設計の立場としてはバリアフリーは配慮の延長にあるものなので、このような声を頂けるよう続けていきたいと思います。
バリアフリー住宅のメリット・デメリットを教えて下さい。
メリットとしては、住宅内での怪我の予防や動作補助があります。
特に身体は衰え始めたころというのは怪我の発生率も高くなってきます。
こういった時に要因であるバリア(障害)を減らしておくことで、怪我のリスクや使いづらさからなるストレスを減らすことが出来ます。
例えば洗面カウンターやキッチンの下部をオープンにすることで、座りながら作業をすることで、身体への負担を軽減することが出来ます。
また、ホームエレベーターを設置すれば、LDKは2階にあるときでもスムーズな行き来が出来ます。
このようにストレスを感じることなく安全に過ごせることがメリットだと思います。
一方デメリットですが、健康なうちからバリアのない生活に慣れ親しむと、身体機能が早く衰えてしまったり、屋外でのちょっとした段差で怪我をするということも出てきます。
例えばレバーハンドルの水栓で育った子供は握力が発達しておらず、幼稚園などの蛇口が回せないなどの事例も報告されています。
バリアフリー住宅のポイントについて教えて下さい
上り框
多くの住宅で入ってから最初に出会う段差、それは上り框ではないでしょうか。
車いす利用を考慮すると2センチ以下が好ましいと言われています。
廊下
廊下の幅は最低でも有効で80センチは確保しておくと車いす利用時でも支障はありません。
また、夜間の移動を考慮し人感・照度センサー付きのフットライト等を設置しておくと良いと思います。
スイッチ
照明のスイッチは車いすでも届く範囲である床から90センチ程度、コンセントは床から50センチ程度にしておくことも大切なことです。
開口部
部屋のドアは引戸とすると開けやすいだけでなく風に煽られて急に閉まることがなく安全ですし、開き戸と違い開け放していてもドア自体が邪魔になることはありません。
階段
転倒、転落事故の起こりやすい階段は、安全面に配慮することが最も重要です。出来る限り緩やかの勾配の折れ階段や回り階段とし、水平な踊場を設けるといいでしょう。
一直線の鉄砲階段では転倒した時に一番下まで落ちてしまうリスクが高いので、バリアフリーという観点からはおすすめしにくいものとなります。
温度
また、上記のようなもの以外にも温度のバリアフリーというものもあります。
全館空調が最も好ましいのは言うまでもありませんが、常時いない部屋にエネルギーとコストを掛けるのは難しいのが現状だと思います。そこで例えば、入浴前に浴室暖房換気乾燥を付け、脱衣室とのドアを開け放せば暖気が流入するので、脱衣室と居室との温度差を少なくすることがでヒートショック予防になります。
バリアフリー住宅の間取りではどのような点に気をつけていますか?
普段から配慮していることは単純明快な動線計画です。
特に通路としての機能しかない廊下は極力設けないような間取りを提案しています。
また、歳を取るとトイレが近くなるので寝室の近くにトイレを設け、トイレまでの動線は一直線になるよう配慮し、夜間での歩行も考慮し人感・照度センサー付きのフットライトを設けるようにしています。
バリアフリー住宅に改修すると減税になるそうですがバリアフリーリフォームなども引き受けていただけるのでしょうか?
もちろんです。
減税の対象になるためには、いくつかの条件をクリアしないといけませんが、リフォーム内容と合わせて進めさせていただければと思います。
バリアフリー住宅を建てたいと思っている方になにかアドバイスがありましたら教えて下さい。
バリアフリーと聞くと真っ先に思い浮かぶのは手摺の設置だと思いますが、気をつけたいのは、「とりあえずを取り付ける」ということをしないことです。
設置位置によっては使いづらかったり、意味を成さない場合があるからです。
握力が落ちてしまったら肘をついて身体を支えるほうが良い場合もあります。
大事なのは、変化する身体の衰えに柔軟に対応できるようにする下準備です。
現在の身体の現状をしっかりと把握し、廊下や開口部の幅やホームエレベーターの位置を決めておくなど、やらなければならない工事、後回しにすると大掛かりな工事になってしまうものから優先して計画し、その他は必要になった時に設置出来るよう下地を入れておき、必要になった時点で設置していきます。
こうすることで、御施主様にピッタリのバリアフリー住宅とすることができます。
貴社での具体的な事例がありましたら教えて下さい。
近年竣工した住宅の中からいくつか紹介したいと思います。
- ガルバと木とコルクの家(上連雀の家)
介護が必要なお父様とそのご家族がお住まいになっています。
建坪の関係で生活空間が1・2階と別れてしまいましたが、乗り降りしやすい位置(玄関及びLDK)にホームエレベーターを設置しました。
また、滑りにくく柔らかいコルクタイルを床材として採用しています。 - 2つの中庭と大きなデッキスペースのある家(渋谷の家)
前面道路が坂道のため、玄関までのアプローチをスロープとしました。
車いす利用を考慮し、玄関の框をフラットにし段差なく室内へ入れるようにしています。
また、お母様の生活が水平移動だけで完結するように1階に寝室、LDK、トイレ、洗面脱衣室、浴室、ユーティリティを設けています。 - 大きな土間空間のある家(横須賀の家)
お母様は足腰の衰えがさほどなく、日当たりの良い2階での生活をご希望されていました。
生活は2階で完結できるよう計画していますが、新聞などを取りに1階へも行くため、階段はフラットな踊場を設けたコの字型とし、可能な限りゆるやかな勾配としました。
さらに将来への不安を払拭するため、ホームエレベーターを将来的に設置できるように構造設計にホームエレベーターの荷重を見込み、基礎形状も考慮した計画としました。
御施主様からは1階でフラットな生活をするよりも動けるうちは階段の昇り降りが良い運動になっているとのお言葉を頂いております。
大島功市建築研究所 大島功市さんのバリアフリー設計事例
画像 | 建物の名称 | 紹介文 |
---|---|---|
旗竿地に建つ屋上緑化の家(高円寺の家) | 施工が難しい…地下を造りたいので施工する上でも工夫されたプランを造ってもらいたい | |
大きな土間空間のある家(横須賀の家) | 海のそばの建築になるうえでの耐久性 | |
天にそそりあがるR屋根の家(川越増形の家)http://www.geocities.jp/ohkokk/kawagoemasukata.html | 迫力ある建築を表現しようと屋根を天にむけてそそり上げた! | |
ガルバと木とコルクの家(上連雀の家) | 隣に14階建てマンション建設が決まっていたので…それを感じさせないプラン | |
木造螺旋階段のある家(天神町の家) http://www.geocities.jp/ohkokk/tenjintyou.html | 外壁はメンテナンスが大変でないガルバリム鋼板 |
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