町並みと調和するホテル・株式会社ローバー都市建築事務所 野村正樹さん

景観条例や伝統的建造物群保存地区などの規制がある地域では、それらに対応しながら、町並みと調和するデザインを実現することが重要です。
ホテルについて株式会社ローバー都市建築事務所 野村正樹さんに伺いました。
貴社がホテルの設計を手がけるようになったきっかけを教えてください。
お世話になっている、クライアント様より、観光客向けの、京都らしいモダンデザインのホテルを建設したいのでと、依頼があり、以来インバウンドの高まりとともに、ホテル設計プロジェクトを数多く手掛けています。
ホテルを新築・改修する際、住宅とは違う「建築基準法」上の特別な注意点はどこにありますか?
ホテルは、不特定多数の人が利用する、特殊建築物に該当します。
避難の規定や消防・防火の規定をはじめ、住宅より厳しい規制がかけられています。
また、改修において、用途変更が伴う場合には、建築確認という手続きが必要になります。
ホテルの建築費は、坪単価でどれくらいが目安になりますか?
近年、建設費の価格は上昇傾向にあります
カジュアルホテルで、坪150万円~
ラグジュアリーホテルで坪250万円~が目安となります
「ホテル」と「旅館」は、建築基準法や旅館業法上でどのように違うのでしょうか?
ホテルと旅館における、建築基準法上の違いはありません。
旅館業法においても、2018年の旅館業法改正により、現在は違いはありません。
ただ、法律上は同じですが、設計上、運営上は大きく違いますので注意が必要です
客室の採光や通風を確保するために、どのような工夫をされていますか?
建設地における、立地環境を詳しく分析し、採光や通風環境を立案します。
その上で、それぞれのエリアにおける、快適な環境を総合的に考えながら工夫をしています。
先人の知恵である、京町家における採光通風の工夫。
例えば、坪庭や通り庭、吹き抜けやスリット、すだれや簾戸などの工夫も現代的にアレンジしながら、取り入れています。
廊下の幅や避難階段など、宿泊者の安全に関わる設計で特に気をつけている点を教えてください。
さまざまな、国・地域の人々、年齢・性別の人々、ハンディキャップをお持ちの方が利用されるという特性から、バリアフリー、ユニバーサルデザインの観点を取り入れて設計をしています。
具体的には、非常時において、わかりやすい導線となるよう、なるべくシンプルな動線計画を心掛けています。
『MIRU KYOTO GION』は祇園新橋の伝統的建造物群保存地区に建っていますが、このエリアで設計する際、景観条例など地区特有の制約はありましたか?もしあれば、どのように対応されましたか?
この地域は、市条例で定められた、伝統的建造物群保存地区における和風景観構築等の規制の他に祇園町における、地域協議会との対話を優先し、地域住民様の理解を得ることを優先的に行いました。
歴史ある、祇園町において、地域を重視した計画は大切であり地域に溶け込み、愛される建築計画な重要となります。
「アビタホテル京都鴨川」はヨーロピアンテイストのブティックホテルですが、和の伝統が息づく京都の街並みの中で、どのように個性を表現されたのですか?
和風を基調とした、景観条例の規制の枠組みの中で、ヨーロピアンエレガンスを感じるデザインとの両立には、さまざまなハードルがありましたが、京都市との対話を重ねるなかで、美しいデザインの構築にむけ、工夫を重ねました。
軒の出や色彩構成については、京都の伝統美を意識しながら、全体として調和のとれた端正な佇まいとなる表現を設計しました
「NEST at NISHIKI」は錦市場エリアに建つ計23室のホテルですが、伝統と現代をどのように調和させたのでしょうか?
京都市旧市街中心部に位置するロケーションにあって、和のテイストを現代的に展開しながら、伝統と現代の調和を目指し、格子意匠の再構成等を工夫しながらデザインを表現しています。
内部空間には、京都の伝統工芸品を随所に配置し、雅のインテリア空間を実現しています。
京都の歴史的エリアでホテルを建てる場合、景観条例や伝統的建造物群保存地区特有の制約にはどのようなものがありますか?
建物の高さや屋根形状、外壁材料、色彩、看板、照明まで細かな制限があり、景観条例や伝統的建造物群保存地区制度など特有の厳しい基準への適合が求められます。
町並みとの調和が最優先となります。伝統的建造物群保存地区では、瓦屋根や木製格子、漆喰壁など伝統的意匠が求められることも多く、設計の自由度は限定されます。
そのため、計画初期から景観担当部局との協議を重ね、歴史的景観を守りながら現代的な快適性を両立させる設計が重要となります。
ホテル営業の許可(旅館業法)の申請や用途変更の手続きで、依頼者が特に注意すべき点はありますか?
まず計画地が旅館・ホテルの建築が可能な用途地域であることを確認することが重要です。
また、用途変更の建築確認が不要な小規模な建物であっても、建築基準法や消防法、バリアフリー条例などの関係法令への適合が求められます。
旅館業法の許可は保健所の審査を受ける必要があり、建築・消防・衛生の各手続きを並行して進めることが円滑な開業につながります。
特に京都では、景観条例や地域との事前協議が必要となる場合もあるため、計画初期から建築士や行政と十分に協議を行うことが重要です。
これからホテルを建てたいと考えている方へ、アドバイスをお願いします。
ホテルづくりで最も大切なのは、「建物を建てること」ではなく、「誰にどのような滞在体験を提供するか」を明確にすることです。
立地やデザインだけでなく、運営計画や収益性、法規制、地域との調和までを一体的に考えることが、長く愛されるホテルにつながります。
特に京都のような歴史ある街では、その土地の文化や景観を尊重し、地域の魅力を引き出す建築が求められます。
建築士に相談しながら、将来を見据えた持続可能なホテルづくりを進めることをお勧めします。
貴社に設計・監理を依頼できるエリアを教えてください。
北海道から沖縄まで、全国にて対応可能です。
現在、ウズベキスタンで建設中のホテル計画の監修もしています。
株式会社ローバー都市建築事務所 野村正樹さんのホテル・設計事例
| 画像 | 建物の名称 | 紹介文 |
|---|---|---|
| | MIRU NISEKO | 全40室、セミスイート形式の宿泊空間は、海外ゲストの長期滞在に最適化した、魅力あふれる斬新な空間です。露天風呂とおいしい食べ物。「Nest at The Trees」へ是非お越しくださいませ。 |
| | ホテル 姉小路別邸 | 二条城近くのラグジュアリーホテル。 |
| | NEST at NISHIKI ホテル | 京都の伝統的なデザインを基調としたシンプルな構成の中に、古都の”ism”を意識したきらめきの宿泊空間。計23室の客室はスーペリアルーム・キングルーム・畳ルームの3タイプ。旅の思い出に彩りを添える「Nest at NISHIKI」へ是非、お越しください。 |
| | 花とうろ ホテル祇園 | 機能的でゆったりとした間取りは、ファミリーやカップルなど、幅広いグループサイズに最適化を図っています。全室に檜の浴槽を完備。体をゆったり伸ばしてリラックスしたり、気軽に足湯に浸かったりと、心と体をリフレッシュすることのできる環境も構築しています。 |
| | Hotel Room by Room町ノ屋 | 全室3名以上のグループ旅行に最適化を図り、広さ・使いやすさ・心地よさに配慮した次世代型の宿泊施設。二条城にもほど近く、交通も至便です。 |
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