付加価値をつけた海岸リゾート地の宿泊施設・田部建築研究室 田部博一さん


 
海岸リゾート地の宿泊施設では景色、料理はもちろんのこと、付加価値を付けたリゾート地でのイベントサービス施設であることが重要です。
 
宿泊施設について田部建築研究室 田部博一さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー 田部建築研究室 田部博一 の写真
埼玉県川口市本町3-1-5-202
048-226-1452

 

貴社が宿泊施設を手がけるようになったきっかけがありましたら教えて下さい。

 
大学を卒業してから、神戸の設計事務所で再開発の仕事を中心に勉強させていただきました。

区画整理のための、駅前の立体換地の設計が多かったと思いますが、既存の小売店舗、飲食店、パチンコ、麻雀店など、上階は住宅の場合が多いのですがビル全体の事業採算を得るために、地元権利者以外の専用床をメインのテナントとして、大型の量販店、ホテル、分譲住宅など常に色々な可能性を探って各種類の業種を計画に入れ設計を手掛けさせていただきました。
 
東京に戻ってきてからも、しばらく務めていた事務所でも、ホテルの計画は多かったように思います。
 
友人の事務所でのリゾートホテル設計も協力させていただきました。
 
私が独立したバブル時期に葉山マリーナでヨットのメンバーに加えていただき葉山マリーナ、森戸海岸付近によく遊びに行っていました。
 
森戸海岸は海岸は近深なので、海岸のすぐ近くまで船を浮かべ、裕次郎灯台を見ながらの海水浴は毎年の楽しみ方の一つでした。
 
遊んでいた場所は表題の建物、まさにスケーイプスの目の前当たりだったと思います。
 
葉山は、大企業の保養地や大学の施設がたくさんありますが、ホテルやマンション等の利用可能な土地がめったに流通しない場所です。
 
しかも当地は、目の前が海岸で、正面に富士山・江の島を望み裕次郎灯台を見下ろせる、森戸海岸の中心です。
 
アプローチの海岸沿いの街道も近く、地元ならではのこだわりのあるお店もたくさんあります。
 
たまたま、その地で計画物件を企画会社様にお話を伺った時、迷いなく参加希望させていただきました。
 

宿泊施設の平面計画で注意している点を教えてください

 
シティホテルでは、言うまでもなく客室回転による採算重視で部屋数の有効面積確保が、部屋数重視で計画してきたと思います。
 
スケープス様の場合は、東京圏ではずば抜けた海岸リゾート地である葉山の特性を生かし景色、料理はもちろんのこと、付加価値を付けたリゾート地でのイベントサービス施設を目標に計画されました。
 
平面計画ではアプローチ道路レベルより少し下がった地階が駐車場。
 
道路より階段を上って防波堤レベルの海が見渡せる1階にエントランス及びバー・レストラン。
 
2階に結婚式のやパーティなどイベントの出来るレセプションルーム。
 
3階宿泊施設。
 
4階、では全ての空間が海に向かってのイベントの出来る眺望レストラン、池のある屋外デッキテラス、プライべーの眺望浴室
 
その他では目隠しをしながらの機械設備置き場等配置しました。
 
1階駐車場は、限られたスペースに外車を含めた大型車や、女性ドライバーも出来るだけ余裕をもって駐車できるように配慮しました。
 
また、エレベーターで地階から最上階までつなげ、バリアフリー設計で各年齢層の人も負担なく施設各階全体を利用していただけるようにしました。
 
敷地規模による全体の容積制限がありますが、4階屋外施設も庇をつけながら最大限、施設の利用できる空間ボリューム確保に努めました。
 
また地階の駐車場と、2階レセプションルーム、,3階の宿泊施設の柱割が階ごとに少しずつずれるので、構造設計者と何度も協議して構造と平面計画に工夫させてもらいました。
 
当初、以上の概要の模型を提示して説明させていただきました。
 
ちょうど姉歯事件の時期に重なりました。
 
建築基準法、葉山の条例(景観・広告条例)・海岸防波堤の規制なども極めて厳しかったことを覚えています。
 
出来るだけ多くの空間ボリュームを確保するため日影図、天空率、階高調整の為、構造・設備と数ミリの単位まで煮詰めて全体の設計をまとめました。
 

 

宿泊施設の内装で注意している点を教えてください

 
当初は急なお話だったので。上記による基本的な各階の主な配置を打合せして確認申請・実施設計を進めました。
 
ホテル内部はその後、ホテル経営者様が内装設計の専門家と細かな使い勝手と仕上げ材について、打ち合わせしてまとめた案を変更提案されました。
 
最終的には、建築全体をすり合わせて変更しながら進めていく形となりました。
 
都内でも多くのイベントのお仕事をされているオーナー様の好みで内装業者から材料の選定がありましたが、建築基準法に適合する材料を念頭に確認させていただきました。
 

宿泊施設の外装で注意している点を教えてください

 
外観の形は外部の見え方からのデザインをしてるようにも見えますが、土地に対して最大限のボリュウームを確保するため日影図、天空率、階高調整を構造・設備と数ミリの単位まで煮詰めて全体の設計をまとめまていたので外観の形を変える余裕はありませんでした。
 
内装材と同様に外装材についても提案していただきました。
 
内装と同様に、建築基準法やPL法に適合する材料を、また細かな納まりなど建設業者とも何度も協議して竣工に至りました。
 

 

宿泊施設の客室設計で注意している点を教えてください

 
建物の目的により客室やレストラン等、各面積の配分は違いますが、本建物の場合はゆとりのあるサービスがテーマであったように思います。
 
客室数を減らす変更案をいただきました。
 
部屋数を間引いた分、各客室に物理的な部屋面積増加だけでなく、個別テラスにもデッキを引くなどして、建物の内外に一体感を持たせています。
 
見渡す海の眺望に視覚的にもさらなるボリューム感を持たせることが出来ました。
 
部屋数を減らして各部屋にゆとり感を持たせたことはスケープス様の読み通り成功されていると思っております。
 

宿泊施設の共用部の設計で注意している点を教えてください

 
本建物の特徴は、各階変わらない葉山の海を背景に(階層レベルごとに違う景色背景になりますが)、各階それぞれ違った施設があるので階を移動するごとに建物内部の雰囲気が変わりそれぞれの階に特徴があり、階を移動しても見ていて飽きが来ません。
 
エレベーターが各階で開くたびに、景色が各階で大きく違います。
 
地階では駐車場、1階では受付カウンター越しに、バー・レストラン、テラス越しに海岸線。
 
2階では待合ホールで一旦閉鎖的な空間から、メインレストランに入るとパノラマの景色、3階では落ち着いた各客室に入ってからプライベートな空間でのから見る海景色、最上階ではエレベーターを降りたとたんに一挙に富士山の見える海が広がります。
 
階段においては、各階施設はもとより水回りも各階からアプローチしやすくするためまとまった人数の移動の場合も考え階段幅、踏面、蹴上に出来るだけ余裕を持たせ利用し易い設計としました。
 

 

宿泊施設の設計を貴社に依頼するメリットを教えて下さい

 
設計だけでも意匠・構造・設備のチームが必要です。
 
親身になって夫々が協力していただいてやっと完成に行き着きます。
 
オーナー様の意向の元、建設業者はじめ、各協力者含め。良い意味での前向きなチーム形成を心がけております。
 

宿泊施設の改修などもやっていただけるのでしょうか?

 
お話があれば喜んで受けたいと思います。
 
個人的には温泉宿は大好きですし、こじんまりした料理宿等も大変興味あります。
 
どこに行っても、あちこちの施設を利用させていただいたり、のぞかせていただくように心がけております。
 
私の知らないきっと多くの魅力ある施設が沢山あるものと思っております。
 

住宅などを宿泊施設にリノベーションなどもやっていただけますか?

 
オリジナルの建物を利用して再生するのも大変魅力ある仕事だと思っています。
 
また、個人的には古い民家にも興味ありますし、木造も得意分野です。
 
伝統工法の建物も勉強させていただきました。
 
用途は違いますが、都内のマンションの下層階での大形事務室を工場(医療関係)に用途変更してリノベーションさせていただいたこともあります。
 

葉山ホテルSCAPESの依頼者からはどのような要望がありましたか?

 
床面積には法的な限度があるため、出来るだけおもてなしをするボリューム空間を確保することだったと思います。
 
また、施設の性格上大勢の方が一挙に動くこともあるのでお客様やスタッフの動線、EV・階段の上り下りし易いこと。
 
地階の駐車場の出来るだけ広めに使い易いこと。
 
1階玄関ホールへの屋外アプローチ階段が長くならないこと。
 
客室やレストランでは窓を出来るだけ大きく開放的に。
 
4階広場では、設備機器が見えないように。
 
当然のことですがホテルの客目線、スタッフの目線を大切にされていたと思います。
 
また具体的な言葉があったわけではありませんが、各階がそれぞれ用途が変わっていくので、その動線途中でも見え方にメリハリをつけ解放された海に目を向ける時に劇的に見えるようなデザインを望まれていたように思います。
 
そのためにも、1階防波堤のレベルでいかに開放的にバー・レストラン及び屋外テラスを確保するか。
 
そして全体の要求施設をいかに3次元の全体のボリューム内に納めるか。
 
本敷地の魅力である眺望をその中でいかに活用していくか。
 
本建物の生命線であると思っていたので、特に役所との平均地盤面の解釈ではかなり協議を重ねました。
 
デザイン的には以上ですが、設計工程・申請業務・役所・保険所・関係役所協議・設計変更業務・工事期間の予定・竣工引き渡し時期・全体の予算等も調整して予定期間内にまとめることも大きな要望であったと思います。
 

 

その要望をどのように叶えましたか?

 
最終的には、ホテルの内装設計変更事項・要望について、
 
建築基準法・消防法にたいして合法的に、建築の納まりについても多くのきょうぎ協議課題が残りましたが現場施工の定例会議とは別に。一貫して建物全体の企画者様にリーダーシップをとって頂き、ホテルオーナー、内装設計、建築全体設計、施工会社、それぞれの立場から意見を出し合い、その都度会議をして一つ一つそれぞれの問題を解決していきました。
 
企画者の方のリーダーシップがなかったら、予定の納期にも間に合わず全体をまとめ切らなかったのではないかと思います。
 
また、確認申請会社・対関係役所・消防との事前や変更の協議をまめにしました。
 
特に終盤はホテルの開店の日が決まり、建物引渡しの延期はありえないので、消防署には工事のやり直しの指摘を受けないように事前に何度も図面打ち合わせをしてもらい、更には工事中も中間の検査だけでなく設備機器等が確認できる時期に何度も現場に足を運んでいただき確認していただきました。
 
建設業者の現場担当者の多大な協力はもとより、役所関係の方にも協力をしていただきました。
 

宿泊施設を開業したい方になにかアドバイスがありましたらお願いします

 
一つの思いを形にしていく作業は大変労力が必要だと思います。
 
どんな事業にせよ、いくつかの問題点や課題のない事業はないと思います。
 
個人単位で問題を抱えず、みんなで課題を共有して確認しあえば、最終的には良い回答が出てくると思います。
 
情報を共有していくには、問題がある時だけでなく、期間ごとにミーティングをもってコミュニケーションをとって同一の目標を共有していくことは回り道にも感じますが、最終的には近道だったように思います。
 
是非、参加協力させていただきお役に立ちたいと思います。
 
建設地の状況を把握されて経営方針を立て、ご自分たちの得意分野と結びつけ営業されていることが葉山ホテルSCAPES 成功になっているように思います。
 
また、海岸の自然の条件は苛酷に思います。
 
風雨の強さ、窓の清掃、砂の吹き上げの処理。予想を超えるものがあると思います。
 
スタッフの皆様の、目に見えない日々の努力が予想されます。
 
それを含めての、ミシュランガイドの評価受賞はすごいことだと思います。
 

田部建築研究室 田部博一さんの宿泊施設・設計事例

  

画像 建物の名称 紹介文
葉山ホテルSCAPES

「SCAPES THE SUITE」(当時、森戸海岸ホテル)
2011/12/1発売のミシュランガイドのホテル部門 湘南エリアで、最上級の快適さを示す「4パビリオン(赤色)」を獲得(1~5段階評価の5が最高点)。

 

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