住宅の内部の延長となるようなルーフテラス・オクムラリエスタジオ一級建築士事務所 奥村理絵さん


 
住宅の内部の延長となるようなルーフテラスがあることで、安心感と生活のしやすさが確保できます。
 
ルーフテラスについてオクムラリエスタジオ一級建築士事務所奥村理絵さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー オクムラリエスタジオ一級建築士事務所 奥村理絵 の写真
世田谷区池尻2-4-5 IID204
03-3487-9703

 

貴社がルーフテラスのある家を手がけたきっかけがありましたら教えて下さい。

事例を載せております、T+Kハウジングという2世帯住宅を設計するときに、お施主様からそれぞれの世帯に小さくても良いからお庭がほしいと要望されたのがきっかけです。
 
既存の住宅をこわしての建て替えだったのですが敷地に充分な広さがあったわけではないので、2世帯は上下に積むしかなく、やむなくお庭も2階に積まれることになりまして、それで、ルーフテラスがつくられることになったわけです。
ただ、2階となりますと、隣の住宅の物陰になるわけでもなく交通量の多い道路に面した場所ということもあり、壁や可動ルーバーで囲って中庭的な場としました。
 
住宅における庭とは、もちろん植物をそだてたり、洗濯物をほしたりする場所という典型的なイメージがありますが、実は周辺とのバッファゾーンという役割がとても大きいのだと思います。
そういう意味で、この住宅の場合、住宅の内部の延長となるような外部空間があることで、安心感と生活のしやすさが確保できたのではないかと思っています。
 

 

ルーフテラスの間取りをつくる際に注意しているポイントを教えて下さい

 
住宅でいえば、ルーフテラスが日常生活の行動の中にすんなり入ってきて使えるようになっていること、です。具体的に言うと、

  • 緑を育てて、リビングからの眺めがよくなる。
  • 室内空間が外部と一体的につながるので、晴れた日にはルーフテラスがダイニングになったりする。
  • 洗面室とつながるルーフテラスならそのまま洗濯物が干せる。
  • 浴室とつながるルーフテラスなら、窓をあけて半露天風呂で楽しむ。

などなど。
 
これらを実現するには、ルーフテラスと内部の生活空間とが一続きとなるような広い開口が必要だと考えています。
もちろん、見るためのルーフテラスに特化して、出入りは一部分に限定する、というのもひとつのあり方ですし、場合によってはこちらの方がよいこともあります。
 

 

ルーフテラスの防水はどうなっているのでしょうか?

 
事例のT+Kハウジングの場合は木造ですので、FRP防水をしています。
22条地域なので、防火仕様の認定工法です。
 
その上に、ウッドデッキをのせています。
ウッドデッキはルーフドレインの上部はカットをいれてもらい蓋状にしています。
そこを取り外してお掃除ができるようになっています。
 
また、下は居室ですので、下地に断熱材を入れています。
ウッドデッキものっているので、下の部屋に対する熱負荷はかなり軽減されています。
 

建築主はルーフテラスをどのように活用されているのでしょうか?

 
鉢物の植物を育てたり、洗濯物干場であったり、夏場はビニールプールで子どもの水遊び、年2回はバーベキューパーティ、お子さんが生まれる以前は、休日のブランチをしたりもしていたようです。
フルに活用されているようで、とてもとてもうらやましく思っています。(笑)
 

 

ガーデニングのできるルーフテラスを作ることも可能ですか?

 
はい、もちろんです。
 
鉢植えなら、T+Kハウジングの建築主様もルーフテラスでたくさん育てています。
ただ、ルーフテラスに土を入れて地植えで育てるとなると、屋上緑化のシステムの導入が必要ですね。
防水・防根対策ですとか、木造ですと荷重の検討などハードルが高いです。
 
RCでしたら、たくさんの屋上緑化システムがあります。
ガーデニングデザインとあわせてルーフテラスを設計できたら、とても楽しそうですね。
 
植物を育てることが大好きな方で植物と共に暮らしたいと願い、でも地上に庭が望めない場合は、とてもお勧めです。
植物は生き物ですし、手をかけてあげないといけないのはもちろん、建物を傷めないようにドレインの清掃などの建築に対するお手入れも同様にしてください。
  

ルーフテラスのある家を建てたい方になにかアドバイスがありましたらお願いします。

 
ルーフテラスは大抵の場合、下の階に部屋があります。
ですから、防水の方法や施工、ドレインの位置などには細心の注意を払い、万一にも水漏れがおきないように対処しておく必要があります。
 
断熱もしっかりしておかなくてはなりません。
このあたりを設計を依頼した建築家さんにきちんと説明をしてもらうと安心です。
 
そして、定期的なドレインのお掃除は必須です!
下の階に影響が及ばないようにするには、この心がけがなくてはなりません。
 
ルーフテラスで何をしたいか、どんな暮らしをしたいかを具体的にイメージしてみることも重要です。
 
普通に屋根をかけて屋内化してしまう方が部屋の面積がふえますし、万が一の漏水のリスクもないです。
でも、それをおいてもルーフテラスがあることで得られる生活の充足に価値をみつけられるかどうか、住む人の住まい方がとても重要なのです。
 
ルーフテラスがあることで、住宅密集地でも光と風を取り込みやすくすることができます。
そこに価値を見出すこともできますし、なんにも置かずにがらんどうのルーフテラスに玉石を敷きつめて、禅寺の庭のような見るための抽象空間を作ることで美意識を研ぎ澄ます場が出現する。
そんな場と生活がつながるような住まい方もあるでしょう。(超少数派だとは思いますが。。。。)
 
いろいろ想像してワクワクすることがあれば、ぜひルーフテラスを検討してみてください!
 

オクムラリエスタジオ一級建築士事務所奥村理絵さんのルーフテラス・設計事例

  

画像 建物の名称 紹介文
T+Kハウジング

1Fを親世帯、2F,3Fを子世帯としています。親世帯は面積が限られるため、建具を可動間仕切りのように利用し、すべてオープンとするとおおらかなワンルーム空間となるように設計しています。リビングからは、ウッドデッキのテラスがつながり、冬には大きなクリスマスツリーをかざっているそうです。

 

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