世帯を分けてもつながる二世帯住宅の工夫・(有)シーズ・アーキスタディオ 白崎泰弘さん

二世帯住宅は、プライバシーを保ちながらも家族の気配を感じられる距離感をどうつくるかが設計の鍵になります。
白崎泰弘さんは、夫婦二人三脚でのヒアリングをもとに、動線や素材、空間の高さといった細部の工夫で世帯同士をさりげなくつなぐ設計を得意としています。
二世帯住宅の設計について(有)シーズ・アーキスタディオ 白崎泰弘さんに伺いました
お話を伺った建築家
世田谷区千歳台1-14-3-B 03-6411-2253 |
貴社が二世帯住宅を手がけるようになったきっかけがあれば教えてください。
都市部での建て替えや実家の敷地活用で、プライバシーを守りつつ助け合える家を望む方が増えてきたのが背景です。私たちは常に夫婦でヒアリングするので、複数の意見を受け止める設計者と認識されているというのもあると思います。
二世帯住宅を完全分離にするメリット・デメリットを教えてください。
完全分離にするメリットは、生活時間帯の違いや来客によるストレスが少なく、気兼ねなく暮らせる点です。一方のデメリットは、玄関や水回りが2つ必要になり建築コストと面積がかさむ点と、コミュニケーションが希薄になる点です。そのうち、コミュニケーションの場は、私たちの設計力で解消するよう努めています。
光熱費や電気メーターなど設備面を世帯ごとにどう分けるか、実務上の工夫を教えてください。
将来的なトラブルを防ぐため、基本的には世帯ごとにメーターを完全に分けることをお勧めしています。太陽光発電等を採用する場合、「昼型」と「夜型」で生活時間が分かれる場合、それぞれで発電・蓄電設備を持つより共有化する方がお得な場合があります。ケースバイケースで提案します。
生活音や生活時間帯の違いなど、完全分離でも建てた後に「こうしておけばよかった」と後悔しがちなポイントがあれば教えてください。
「上下階の生活音」です。2階の足音や排水音が1階に響かないよう、遮音性の高い床構造にし、親世帯の寝室上に水回りを配置しない工夫が必要です。また、完全分離であっても、将来の介護やライフスタイルの変化に対応できなくて後悔しないよう、内部で行き来できる鍵付きの連絡扉を設ける、もしくは、連絡扉を想定する壁を非構造壁にしておくことをお勧めしています。
「桜川の家」は旗状敷地(旗竿地)に建つ完全分離の二世帯住宅とのことですが、旗竿地という条件で世帯をきちんと分けるためにどのような工夫をされましたか?
旗竿敷地の奥に2世帯の玄関が並んでいますが、親世帯のダイニングにつながるデッキが親玄関の手前にあります。お孫さんが玄関に入らずにおじいちゃんのところへ遊びに行く横道ルートです。子世帯の玄関からも、靴を脱がずにおばあちゃんのいる和室の濡れ縁に行くルートも用意しています。きちんと分けるというよりは2世帯を結びつける場所で、「子はかすがい」ならぬ「孫はかすがい」と考えての計画です。

1階の親世帯は車椅子を想定した幅員確保などバリアフリーに配慮して計画されたそうですが、二世帯住宅で親世帯の暮らしやすさを考える上で特に注意している点を教えてください。
「桜川の家」の1階は車椅子を想定し、すべてを引戸にしてバリアフリー化を図りました。特に注意しているのは、段差解消だけでなく部屋間の温度差をなくす「温度のバリアフリー」です。そのために視線は遮っても、空間はワンルーム化しています。
2階の子世帯は主寝室とトイレ以外に扉がない大型ワンルーム構成で24時間空調とのことですが、このような間取りにされた狙いと、実際の暮らしやすさについて教えてください。
24時間空調は、建て主のご友人が壁掛けエアコン1台で家中を空調するシステムを大学の研究室で取り組んでいて、それに興味を持ったそうです。吹き出す風を感じない緩やかな空調です。
デザイン的には扉がないと空間が曖昧になるため、天井の高さに変化をつけて「場」を区切りました。ダイニングは高く、リビングは低くしてかつ小上がりの畳にするなど、壁がなくても居場所が感じられる設計です。
焼杉や、コンクリート打放しの型枠に焼杉を使うといった自然素材の使い方をされていますが、二世帯住宅でこうした素材を選ぶ理由や効果を教えてください。
最大の理由は「経年変化の美しさ」です。人工建材と違い、自然素材は時間が経つほど味わいが増します。長く住み継がれる二世帯住宅だからこそ、家族の記憶とともに建物に愛着が湧く効果を期待しています。
「六条の家」は北陸に建つ三世代住宅とのことですが、人数の多い三世代家族が心地よく暮らせるよう、間取りや空間づくりでどのような工夫をされましたか?
厳しい気候に対し性能面では閉じたRC造にしつつ、ご家族の「大らかな暮らし方」を継承しました。リビングの吹抜け周りに個室を配し、家族の出来事をみんなが共有することを願いました。吹抜けに面する書斎を2wayにすることでできる回遊動線、水盤のある中庭など、家族それぞれが居場所を見つけながら緩やかにつながる工夫を凝らしています。

「ナカニワTKハウス」は回遊形式の二世帯住宅とのことですが、施主の希望だった中庭を活かしながら、大雨対策など実務的な課題にはどのように対応されましたか?
プライバシーを守るコートハウス形式ですが、ゲリラ豪雨等への対策として中庭を完全閉鎖にせず、ガレージやアプローチへと地面を連続させて排水しやすい形状としました。外界と一線を画したこの中庭を2世帯で共有することで、世帯間の程よい距離感や様々な景色をつくり出すことができました。
二世帯住宅で完全分離を検討している方へ、依頼前に考えておくべきことなどアドバイスをお願いします。
完全分離は予算や面積が必要なため、「将来親世帯が空いた際にどう活用するか」という中長期的なビジョンを話し合っておくことが大切です。また、庭のメンテナンス分担など、暮らしのルールを事前に話し合っておくと、建てた後も円満で心地よい関係が築けると思います。
貴社に設計・監理を依頼できるエリアを教えてください。
弊社は対話を重視していますので、首都圏を活動エリアとさせて頂いております。
(有)シーズ・アーキスタディオ 白崎泰弘さんの二世帯住宅・設計事例
| 画像 | 建物の名称 | 紹介文 |
|---|---|---|
| | 回遊形式の2世帯住宅|ナカニワTKハウス | 施主の要望は、中庭を建物で完全に囲ったコートハウスでしたが、その場所が河川敷だった歴史やゲリラ豪雨を念頭に、完全閉鎖型ではなく、外部に面するガレージやアプローチ部分をつなげて大雨のときの確実な排水経路をとる形をとりました。 |
| | 吹抜で家族がつながる|六条の家 | 北陸に建つ3世代の住宅です。 |
| | 茶の間に家族が集う二世帯住宅|桜川の家 | 1階親世帯、2階子世帯の完全分離型の二世帯住宅です。ともにオール電化住宅です。 |
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