全館空調のメリット・デメリットと後悔しない家づくり|建築家に無料相談

全館空調はやめた方がいい?と迷っている方へ

全館空調を採用した住宅のリビングダイニングと階段
 
これから注文住宅を建てる方で、全館空調を入れるかどうか迷っている方へ。
 
廊下や脱衣所まで家じゅうの温度差を小さくできる全館空調。モデルハウスで体感して「これはいい」と感じた方も多いはずです。
一方で、インターネットで調べると「やめた方がいい」「後悔した」という声も目に入り、電気代やカビ、10年後の交換費用が気になってくるのではないでしょうか。
 
実は、全館空調で後悔するかどうかは、機械選びだけでなく「家の断熱・気密」「間取り」「機械やダクトの置き場所」といった設計でも大きく変わります。
このページでは、全館空調のメリット・デメリットと、後悔しないために設計の段階で考えておきたいことを、建築家の視点でまとめました。
 

こんなお悩みはありませんか?

 

  • 高気密高断熱・全館空調付きで新築を考え、ハウスメーカーを何社か回ったが、見積もりなどよくわからない点が多い
  • 空調や設備にもくわしい建築士に設計を頼みたい
  • 建ったあとの電気代やメンテナンス費用まで考えた設計をしてほしい
  • 断熱性能はどこまで高くすればいいのか、自分では判断できない
  • 吹き抜けや大きな窓のある開放的な家にしたいが、夏の暑さや冬の寒さが心配
  • 各社が自社の全館空調をすすめてくるので、中立な立場で比べてくれる人がいない

 
全館空調は、一度入れると簡単には入れ替えられない設備です。建てる前の段階で、家の性能・間取り・予算とあわせて考えておくことが、後悔しないためのいちばんの近道です。
 
中庭のあるガレージハウスのリビング
↑中庭のあるガレージハウス
「全館空調にしたい」「RC造で長期優良住宅にしたい」というご希望に応えた住宅。依頼の決め手のひとつが全館空調でした。
 

全館空調とは?主な種類と仕組み

 
全館空調とは、部屋ごとにエアコンを付けるのではなく、家全体の冷暖房をまとめて計画し、家じゅうの温度を整える方式です。専用の全館空調設備を使う方法のほか、家庭用エアコンを使う方法もあり、換気と一体になった製品もあります。廊下・トイレ・洗面所まで温度差を小さくできるのが特徴です。
主な方式には、次のようなものがあります。
 

  • ダクト方式:天井裏などに置いた大型の空調機で冷暖房した空気を、ダクト(空気を送る筒)で各部屋に送る方式。住宅会社の全館空調で多く採用されています
  • エアコン分散方式:一般的な家庭用エアコンを各階に1台ずつなど少ない台数で設置し、家全体に空気を行き渡らせる方式
  • 床下・小屋裏を利用する方式:床下や小屋裏(屋根裏)の空間にエアコンの空気を送り込み、床や天井から家全体を暖めたり冷やしたりする方式

 
どの方式が合うかは、家の広さ・階数・間取り・断熱性能・予算によって変わります。ダクト方式の仕組みについては、会員建築家のブログでくわしく解説しています。
ダクト方式の全館空調(アーキシップス京都 古前極さん)>

全館空調のメリット

 

  • 家じゅうの温度差が小さい:リビングだけでなく、廊下・脱衣所・トイレまで温度差を小さくしやすくなります(どこまで均一になるかは、家の断熱・気密性能や間取りによって変わります)
  • 冬の入浴時の急な温度変化をやわらげる:暖かい部屋と寒い脱衣所・浴室との温度差は、冬の入浴中の事故の原因のひとつとされています(消費者庁の注意喚起 >)
  • 換気と一緒に管理できる:換気と一体になった方式なら、24時間換気と組み合わせてフィルターを通したきれいな空気を家全体に行き渡らせることができます
  • 壁掛けエアコンや室外機が減る:部屋ごとのエアコンがなくなり、壁や外観がすっきりします
  • 吹き抜けや大空間をつくりやすい:家全体の温度をまとめて整えるため、吹き抜けのある開放的な間取りとも相性が良い方式です

 
吹き抜けのある福貴の家のリビング
↑福貴の家
構造材を見せた2つの吹き抜けを組み合わせたダイナミックな住まい。温熱環境を考えて全館空調方式を採用しています。

「全館空調はやめた方がいい」と言われる理由

 
実際に住んでいる方の声や住宅会社の解説を見ると、主に次のようなデメリットが挙げられています。
 

  • 初期費用が高い:住宅会社やメーカーの公表例では、導入費用は100万〜300万円程度とされ、部屋ごとにエアコンを付けるより高くなるのが一般的です
  • 電気代がかかる:家全体を長い時間運転する使い方が多いため、家の断熱・気密性能が低いと電気代がかさみます(換気は24時間運転が基本ですが、冷暖房は春や秋に止める使い方もできます)。方式によっては電力会社との契約が変わり、基本料金が上がる場合もあります
  • 冬に乾燥しやすい:家全体が暖かく保たれる分、湿度が下がりやすく、加湿の工夫が必要になります
  • カビ・ほこり・虫の心配:フィルターやダクト、吹き出し口の手入れを怠ると、におい・カビ・ほこりの原因になることがあります。外の空気を取り込む給気口のフィルターが汚れたり傷んだりしていると、小さな虫が入り込むこともあります
  • 故障すると家全体に影響する:1台で家全体をまかなう方式では、故障すると家じゅうの冷暖房が止まります
  • 将来の交換費用がかかる:本体は10〜15年程度を交換の目安とすることが多く(使い方や機種によってはそれ以上使える場合もあります)、メーカーの公表例では交換費用が50万〜100万円程度かかるケースもあります
  • 部屋ごとの温度調整がしにくい:方式によっては「寝室だけ涼しく」といった細かい調整が苦手です

 
※費用・耐用年数は、方式・機種・住宅の規模によって大きく変わります。具体的な金額は、設計の段階で建築家や設備メーカーに確認してください。

後悔の原因は「機械」だけでなく「家の設計」にもある

 
全館空調で後悔しないためには、機械選びだけでなく、全館空調を入れる「家」の設計も大きく影響します。よく挙げられるのは、次のようなケースです。
 

  • 断熱・気密が足りない:すき間が多く熱が逃げやすい家では、全館空調をフル運転しても温度が安定せず、電気代ばかりかさみます。全館空調は、高断熱・高気密の家とセットで考えるのが前提です
  • 間取りと空気の流れが合っていない:吹き抜けや大きな窓の位置、部屋の配置によっては「2階だけ暑い」「一部屋だけ効きが悪い」といったムラが出ます
  • 機械やダクトの置き場所を後回しにした:大型の空調機を置くスペースや、太いダクトを通す天井裏の高さは、設計の初めの段階で決めておかないと、あとから確保するのが難しくなります
  • メンテナンスのしやすさを考えていない:フィルター掃除や点検がしにくい場所に機械を置くと、手入れがおろそかになり、におい・カビ・故障の原因になります
  • 将来の交換費用を資金計画に入れていない:入れ替えの時期と費用を見込んでおかないと、そのときになって大きな出費に悩むことになります

 
当サイトには、新築2年目で「1階が寒い」「窓から冷気が入ってくる」という相談も寄せられています。建てたあとに断熱や窓を直すのは大がかりで、費用もかかります。全館空調を入れるかどうかにかかわらず、家の性能と空調計画は、建てる前にしっかり考えておくことが大切です。
 
小屋裏や床下を活用した全館空調のミドリノイエ
↑ミドリノイエ ー屋上に庭のある家ー
小屋裏や天井裏、床下などの空間を活用した全館空調で、一年中安定した温度環境を実現。冬は床暖房と同じような効果も発揮します。

専用の全館空調設備を使わない選択肢もある

 
家の断熱・気密性能を十分に高めれば、少ない台数の家庭用エアコンで家全体を快適に保つことも可能です。
 

  • エアコン1〜2台で家全体を冷暖房する:高断熱・高気密の家なら、各階に1台程度のエアコンで家じゅうの温度差を小さくできる場合があります。故障しても家庭用エアコンを交換するだけで済みます
  • 床下エアコン:床下にエアコンの暖かい空気を送り込み、床全体をほんのり暖める方式。冬の足元の寒さ対策として採用する建築家もいます
  • パッシブデザイン:日差しや風の通り道を設計に取り入れ、機械に頼りすぎずに快適さをつくる考え方です

 
大切なのは「全館空調ありき」で考えるのではなく、家の性能・間取り・予算・暮らし方に合わせて、いちばん合う方法を選ぶことです。住宅会社の場合、その会社が扱う方式が前提になりがちですが、建築家なら特定のメーカーにしばられずに比べて提案できます。
 
パッシブデザインで極力機械に頼らない家(森建築設計 森健一郎さん)>
住み心地の良い快適なZEH(SSD建築士事務所 瀬古智史さん)>

全館空調の相談を建築家にするメリット

 

  • メーカーにしばられずに比べられる:全館空調を入れるか入れないか、入れるならどの方式か、中立な立場で比べて提案します
  • 設計の初めから空調計画を組み込める:機械の置き場所、ダクトの通り道、メンテナンスのしやすさを、間取りと一緒に考えます
  • 断熱・気密とセットで考えられる:全館空調が力を発揮できる家の性能を、予算とのバランスを見ながら決めていきます
  • 建ったあとの費用まで見通せる:電気代・メンテナンス費用・交換時期まで含めて、長い目で見た資金計画を立てられます

 
建築家紹介センターの建築家相談依頼サービスでは、全館空調や家づくりの相談を投稿すると、全国の登録建築家からコメントが届きます。相談の投稿と建築家探しは無料です(設計・調査などの業務費用は、依頼する建築家にご確認ください)。
複数の建築家の考え方を比べてから、相談する相手を選ぶことができます。
 
全館空調と断熱・気密を確保したペットと暮らす家の室内
↑ペットと暮らす家
施主のご要望から全館空調を採用し、断熱性・気密性も確保。一年中快適な温熱環境で暮らせる住まいです。
 
相談内容はニックネーム・都道府県とともにサイト上で公開され、会員建築家からコメントが届く仕組みです(メールアドレスは公開されません)。

全館空調を手がける建築家の声

 
当サイトの会員建築家が、全館空調について書いたブログをご紹介します。
 

全館空調の導入には事前検討が必要です(ナイトウタカシ建築設計事務所)

全館空調を取り入れるときに、建てる前に調整しておくべき点を3つ挙げています。1つ目は、外気の影響を受けにくい断熱・気密性能。2つ目は、機械の設置スペースとフィルター清掃などのメンテナンススペース。3つ目は、天井裏に通すダクトの通り道です。断熱されたダクトは直径25cmほどになるため、天井の高さや構造の調整を初期段階から検討する必要があると解説しています。
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「全館空調=家中暖かく涼しい」でもありません(ナイトウタカシ建築設計事務所)

大型のエアコン1台で家全体をまかなう方式に加え、各階に1台ずつエアコンを置いて家全体を冷暖房する方式が広がってきたことを紹介しています。一般的な電力契約で使える一方、エアコンの能力が小さい分、断熱・気密がとても重要になると注意を促しています。
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ダクト方式の全館空調(アーキシップス京都 古前極さん)

全館空調を「24時間換気と冷暖房をひとつのシステムで運用する設備」として解説しています。熱交換型の換気扇が外に逃げる熱を回収することで、エアコンは温度差の少ない低負荷の状態で効率よく運転でき、強い風や場所による温度差のない快適さが得られるといいます。
ブログを読む >
 
全館空調を手がけた設計事例を掲載している建築家は、こちらの一覧からご覧いただけます。
全館空調が得意な建築家一覧 >
 

全館空調の設計でよくある質問

 

Q. 全館空調の電気代は月いくらくらいですか?

A. 家の広さ・断熱や気密の性能・地域・設定温度・電気料金のプランによって大きく変わるため、一概にはいえません。同じ全館空調でも、断熱・気密の性能が低い家では電気代が高くなりやすくなります。設計の段階で、建築家や設備メーカーに想定の電気代を試算してもらうと安心です。
 

Q. 全館空調は何年くらいもちますか?

A. 本体は10〜15年程度を交換の目安とすることが多いですが、必ずその年数で交換が必要になるわけではなく、使い方や機種によって変わります。交換の時期と費用をあらかじめ資金計画に入れておくこと、交換しやすい場所に機械を置いておくことが大切です。
 

Q. 導入費用の目安はどのくらいですか?

A. 住宅会社・メーカーの公表例では100万〜300万円程度とされています。方式や住宅の規模によって大きく変わるほか、全館空調を生かすための断熱・気密性能を高める費用も合わせて考える必要があります。
 

Q. 今の家に全館空調を後付けできますか?

A. ダクト方式の場合、機械の置き場所やダクトの通り道を確保する必要があるため、既存の住宅への後付けは大がかりな工事になることが多く、難しい場合もあります。これから新築する方は、設計の初めの段階から検討しておくことをおすすめします。
 

Q. 寝室のドアを閉めても効きますか?

A. 方式によって違います。ダクト方式は各部屋に吹き出し口があるため、ドアを閉めても空気は送られますが、部屋から空気が戻る通り道がないと効きが悪くなることがあります。家庭用エアコンを使う方式では、ドアを閉めると空気が届きにくくなるため、ドアの下にすき間を設けるなどの工夫が必要です。個室の使い方は、設計の段階で建築家に伝えて確認しておきましょう。
 

Q. 掃除はどこを、どのくらいの頻度でしますか?

A. 自分で行うのは主にフィルターの掃除です。頻度は機種によって違い、2週間に1回程度のものから数か月に1回程度のものまであります。ダクトや機械の内部の点検・清掃は専門業者に頼むことが多く、定期点検の費用がかかる場合もあります。脚立を使わずに手が届くか、点検口があるかなど、機械の置き場所を設計の段階で建築家に確認しておくと安心です。
 

Q. 夏の湿気(除湿)はどうなりますか?

A. 冷房運転で除湿もされますが、梅雨どきなど気温がそれほど高くない日は、室温が下がりすぎたり、湿度が思ったほど下がらなかったりすることがあります。除湿に強い機種を選ぶ、除湿機を併用するといった対策があります。湿気の多い地域では特に、設計の段階で建築家や設備メーカーに確認しておくと安心です。

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