地下車庫・インタビュー・オフィス・アースワークス一級建築士事務所 小松原敬さん


 
道路より敷地が上がっている場合、敷地を削って擁壁を造るより建物と一体となった地下車庫にすると、宅造法の申請も要りませんし地下部分を造る費用は家の費用に含まれます。
結果的にコストダウンになる場合が多いようです。
地下車庫についてオフィス・アースワークス一級建築士事務所 小松原敬さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー オフィス・アースワークス一級建築士事務所 小松原敬 の写真
横浜市神奈川区台町16-1ソレイユ台町ビル802
045-314-5360

 

貴社が地下車庫のある家を手がけるきっかけがありましたら教えて下さい。

 
横浜は山が多い都市なので、斜面の土地や擁壁のある敷地というのは非常に多いです。
道路より敷地が2,3m高いとか逆に道路より下がっているという土地が普通にあります。
東京でも横浜寄りのほうはそうした土地が珍しくないです。
  
そうした土地をどのようにして活かしたら良いかという相談はよくあります。
道路より敷地が上がっている場合、車庫がほしいとおっしゃられる施主さんには、敷地を削って擁壁を造るより建物と一体となった地下車庫をお奨めすることが多いですね。
 

 

地下車庫の費用はどれくらいかかるのでしょうか?

 
地下は土留が必要なRCになりますし場合によっては地盤改良や止水処置も必要になります。
隣地とも関係や車庫の上を木造にするのか全部をRCで造るかにもよってもかわります。
条件がいろいろ違うのでそれらがわからない状況で費用を言うのは難しいです。
ものすごく大雑把に言って、RC部分は坪100万くらい見ておいてください。
  
実際には実施設計をきちんとしてから、工務店さんに見積もってもらって確定します。
きちんと図面を作ってから同じ資料を使って相見積もりをすると工務店さんによってかなり違ったりします。
 

地下車庫は容積率に算入しなくてよいと聞いたのですが詳しく教えて下さい。

 
地下と車庫で扱いは別になります。
地下でも地上でも、車庫は全体の床面積の1/5以内であれば容積に算入しなくて良いです。
この場合の全体とは駐車場も含めた面積になります。
 
また地下玄関や地下室を設けた場合、これらの住宅部分は全体の1/3以内であれば容積に算入しなくて良いです。(車庫の有る無しは無関係)
この場合の全体とは、地下室や地下玄関も含めた面積です。
地下室は地上(平均地盤面)から1m以下でしたら地上に出ていても地下扱いになります。
 

 

地下車庫の建ぺい率について教えて下さい

 
上の住宅から位置がずれている部分があったとしても、地上(平均地盤面)より1m以内であれば建ぺい率には含まれません。
これは地下室すべてに同じことが言えます。
 

斜面の家2は「宅造を申請して擁壁を造ると余計な手間とお金がかかるので、地下からRCにした」ということですが、もう少し詳しく教えて下さい。

 
一定の条件で擁壁を造る場合、宅地造成法という法律にしたがって擁壁を造る申請をしなくてはいけません。
家の確認申請は擁壁の申請が通ってからになります。
また、擁壁工事はそれなりの金額が必要な割には家そのものの建築とは別の工事になります。
  
それであれば地下室を作って擁壁代わりにすれば、宅造法の申請も要りませんし地下部分を造る費用は家の費用に含まれます。
斜面のある場所に家を建てる場合は、地下車庫に限らず擁壁の代わりに地下室を造ることが多いです。
 
 
 

斜面の家2の敷地は道路より家が高くなっているそうですが、敷地が道路より高い場合のメリット・デメリットを教えて下さい

 
メリットは地下車庫を造れる事、庭のプライベート性を高められる事、1階でも道路からの目線を気にしないで窓を開け放てる事、2階の眺めがかなり良くなる事、等が挙げられます。
 
デメリットは、3層になるので階段が増える事となんと言っても工事費がそれなりかかることでしょう。
 

↑右側に庭がありますが、道路から上がっているのでプライバシーが保たれます。

上記のデメリットをどんな設計の工夫で解消したのでしょうか?

 
擁壁を作らないRCの地下にすることで余計な費用を抑えました。
 
また、地下に買い物から帰ってきた時の一時ストック用の納戸を造ったりコート掛、荷物入れなどを充実させることで荷物をもった上下の移動を分散できるようにしました。
 

もし断面図などがあれば見せていただければ幸いです。

 

断面図

地下車庫のある家を建てたいと思っている方になにかアドバイスをお願いします。

  
地下車庫に限らずRC住宅にする場合の注意点です。
 
躯体を長期間に健全に維持するには、コンクリートの水/セメント比を45%以下にすることが重要と考えます。
(昔は60%くらいでも打っていました)
 
コンクリートは水和反応と言って、水とセメントの反応によって固まります。
接着剤のように乾いて固まるわけではありません。
コンクリートの硬化に必要な水分量は水和反応量+ゲル水で40%と言われます。

それを超えると、使われなかった水分は遊離水となってコンクリート中に留まり、後年にそれを主因としたひび割れをおこし、そこを通った雨水による漏水の原因になります。
 
しかし、水分が少ないと流動性が悪くなり充填不良をおこします。
充填不良はジャンカと呼ばれますが、見た目が悪い以外にもスカスカですからこれもまた漏水の原因です。
 
水セメント比を落としつつ流動性を上げるには、高性能AE減水剤という添加剤を使うか、流動化剤(コンプラストが有名)を使います。
どちらも有効ですが、流動化剤はセメント工場では添加してくれないので(現場添加)セメント工場で添加できる高性能AE減水剤のほうが品質管理はしやすいようです。
 
こうしたコンクリートを使いさらに表面撥水処理を行うことで打ち放しコンクリートが永く綺麗に保てます。
 
屋上も通常はひび割れが起こることを前提としてアスファルト防水などしますが、一旦防水が切れるとどこに漏水の原因があるかがわかりにくく補修は大変です。

ひびがおきにくい高強度コンクリート(水密性能も高い)は、基本的に防水がいらず表面に歩行用の補強撥水剤(ザイペックスなどが有名)を塗るだけで大丈夫です。
将来的に万が一ひびが入って漏水がおきても、場所が目視できるので対処が簡単です。
 
 
こうしたきちんとしたコンクリート設計が重要です。
また説明は省きますが、コンクリート打ち込みには数々の注意点があり熟練した職人の技が必要です。そうした技術のある工務店に頼み設計側で監理する事も重要です。
 

ハウスメーカーではなく、貴社に地下車庫のある家を依頼するメリットを教えて下さい。

 
斜面や段差のある敷地は、敷地ごとの個性が大きく内容も千差万別です。
こうした敷地の個性を活かしてあげることで良い家ができます。
 
ハウスメーカーのような画一設計の家は、個性のある敷地に対応できません。
お金をかけて擁壁をつくって真っ平らにして建てたり、敷地条件をあまり考慮しないで建てる事になります。
 
個性的な敷地には、それに対応できる設計事務所のよる家づくりが一番良いと思います。
 

健康的な家はどうしたらできますか?

 
私は住宅においては「健康」を一つのキーワードとして住宅性能を考えてます。
具体的には断熱性能で表のように健康改善の効果が有意で現れています。(添付の表)
 

断熱性能の高い省エネ住宅転居後の有病割合の改善効果

ただ、関東以南では戸外の環境も春秋は良いのが日本の気候で、夏冬の厳しい環境の季節はそう長くはありません。
四季折々の季節を楽しむ「開ける設計」と断熱性能を高める「閉じる技術」の両方が大事です。
 
もちろん、住んで気持ちのよい空間や自然な素材を使うという事も重要と思います。
自然素材というとフローリングや壁材ばかりが注目されますが、根本的な家の構造材に国産の天然乾燥材の杉やヒノキを使っています。
 
また、防腐防蟻処理はすぐに効果がなくなる従来の農薬系のものは使わず、効果が半永久的で揮発しない自然素材であるホウ酸を使います。
 

子供を育てるにはどんな家が良いですか?

 
具体的には子供部屋です。子供部屋は寝室です。
寝る場所と勉強する空間は分ける方が良いと思います。
寝る場所は広くなくて良いです。
 
代りに家族の書斎的な空間を設けて、ご家族みんなで使うスペースにします。
書斎として閉じられた部屋にすると結果的に子供部屋になってしまって目が届かなくなる可能性も出ますので、リビングからワンクッション離れたコーナー的な空間が良いかもしれません。
 
音の問題はありますが、人間の脳は集中していれば余計な音はカットする機能がついています。
また、家族の気配を感じるというのは勉強している時の孤独感を減らす効果があります。
キッチンをオープン型にする奥様のご意見で、料理をしている時の孤独感がそのほうが無いからとおっしゃいますがそれと似ています。
 
重要なのは、家族がみんなでそこで勉強したり仕事したり調べ物をしたりする姿を見せることです。
家族のコミュニケーションが上手に取れることを、空間構成でお手伝いするのが家の設計になります。
 

オフィス・アースワークス一級建築士事務所 小松原敬さんの地下車庫・設計事例

  

画像 建物の名称 紹介文
雛壇地下車庫の家

水セメント比を45%にした高耐久コンクリートにして長く持つ躯体にしました。
屋上もこうすると防水工事が要らなくなり余計な工事やメンテナンスが必要なくなります。
また、RCによくある結露や寒さ暑さ対策の為に断熱をがっちりしています。

   

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