必要とする防音性能に応じた防音室のある家・中川龍吾建築設計事務所 中川龍吾さん


防音室の換気はそれぞれの機器類の設置位置や取付要領、点検方法などをしっかり計画、現場チェックを行わないと防音性能に大きく影響してしまうので注意が必要です。
 
防音室について中川龍吾建築設計事務所 中川龍吾さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー 中川龍吾建築設計事務所 中川龍吾 の写真
東京都練馬区関町南4-8-13
03-3929-7684

防音室の床材はなにを採用していますか

 
床材は通常フローリング材を一番多く採用しています。
 
大勢で使用したり、土足で使用する場所では長尺シートを使用することもあります。
 
防音の観点からはコンクリートのスラブや浮き床であれば通常問題ありませんが、木造の建物で2階に防音室を設ける場合にはその下地材が問題になります。
これに関しては後述させて頂きます。

防音室の壁材はなにを採用していますか

 
木造住宅の防音室の場合には石膏ボード、或いは合板系の下地材の上に、家全般に合わせた内装材で仕上げています。
 
吸音が必要な場合は、その上に吸音パネルを貼ったり、場合によっては壁の裏面をグラスウールとして有孔ボード+塗装仕上げとするケースもあります。
 
部屋の形状やボリューム、使用目的、音源の位置等によって音の響きに対する考え方が変わりますので、それに伴って壁面の吸音の必要性や必要とする部位は変わってきます。
 

防音室の天井材はなにを採用していますか

 
ほとんどの場合は岩綿吸音板貼としています。
 
想定する遮音性能により、浮き天井にするか否かとか、下地材の厚さ(重量)は変わりますが、基本的には天井は防振吊りとしています。
 
今日、高い吸音性能のパネル類がありますが、私が手がける防音室は使用目的が楽器練習、或いはAV鑑賞などですので、それ以上の吸音性能は音場がデッドになり過ぎるために必要がないと考えています。

防音室の空調はどうしていますか

 
一般住宅内の防音室(5~15帖程度)であれば、一般的な壁付エアコンです。
ケースによっては天井付(吊下げ型)も可能ですが、遮音の観点から埋込型を採用することはありません。
 
規模が大きくなるとダクト方式になりますが、その場合は消音エルボを介したり、さまざまな配慮が必要となります。
そのような設計にあたっては、音響設計事務所にも加わってもらいながら設計・監理を進めることにしています。
 
防音室で気にすべきは空調よりも換気だと思います。
ロスナイ+ダクト+消音フード程度の仕様で良い場合もあれば、給排気それぞれの換気ファン設置+GWダクト+消音ボックス等による場合もあります。
部屋の大きさや求められる遮音性能等により方式は変わりますが、それぞれの機器類の設置位置や取付要領、点検方法などをしっかり計画、現場チェックを行わないと防音性能に大きく影響してしまうので注意が必要なものです。

防音室の防音材はなにを使っていますか

 
防音室は室内で発生する音の音量と周辺環境の騒音レベルによって必要とする防音性能が異なります。
発生する音に関しては、その音源の周波数帯、音圧、発生させる時間帯をまずは把握する必要があります。
一方で室外側においては、上記の音が発生する時間帯に周囲がどのような騒音レベルであるかを把握する必要があります。
それにより、遮音性能の目標値を定めた上で、どのような防音対策を行うかを決めていくことになります。
 
重低音や和太鼓などの低周波の遮音が必要となるか。
重低音に対する防振対策はどのように考えるか。
といった事が課題になるケースもあれば、そうでない場合もあるでしょう。
 
ひと言で「防音」といっても、そのレベル設定や防振の考え方如何により、その方法はかなり違ったものになります。
 
RC造の建屋内の防音室であるか、木造の建屋内であるかによっても、条件は全く異なるものとなります。
 
前置きが長くなってしまいましたが、ここでは木造住宅における防音室を前提としてお話させて頂く事にします。
 
これまでの私の経験では、木造住宅に防音室を設けたいというお話で一番多いのはピアノやバイオリン、或いは管楽器などの楽器練習のためというお話が多いので、それに関するお話とします。
 
ピアノの場合、その騒音レベルは通常80~90dbですので、ここでは85dbと想定します。
(ピアノでも弾き方や曲目によっては90dbを超える場合もあります)
一方一般的な都市部の住宅地の騒音に関わる環境基準は日中が55db、夜間が45dbです。
日中であれば30db減衰、夜間では40db減衰の必要があるということになります。
 
前述の前提以上に静かな環境下の住宅であったり、夜間でも気兼ねなく演奏したいというニーズもありますので、それらへの配慮+安全をみると40db+α(50db弱)の遮音性能を持たせようというのが、想定としては正しいように考えています。
 
ここでようやくご質問への回答となりますが、上記のような前提条件下で使う防音材としては以下のような仕様を採用しています。
 

  • 窓:2重サッシ(夜間は鉛カーテンの使用を推奨)
  • 内壁(室内側):強化石膏ボード2重貼(t:12.5+12.5)、又は制振遮音ボード(t:25)(間仕切壁にあっては両面貼)
  • 外壁(室外側):モルタル塗(t:20)
  • 壁内:セルローズファイバー充填(t:105又はt:120)
  • 天井:強化石膏ボード2重貼(t:12.5+12.5)+岩綿吸音板(t:12)(天井内セルローズファイバー充填t:150以上)
  • 床(階上の場合):合板(t:24)+樹脂製遮音マット+フローリング(床下にセルローズファイバー充填t:150以上)

その防音材を採用した理由を教えてください

 
音響事務所から推奨されたものであったり、経験によるものであったり、またいろいろな建材を調べた結果などによります。

防音室を新築で作る場合、費用はどれくらいでしょうか?

 
前述の通り、求められる防音性能や建物の構造により、廉価で実現できるケースもあれば非常に高額になるケースもありますので、一概には言えません。
 
目標とする防音性能が40db弱であれば、建物全体坪単価に数万円の上乗せを見込めば実現できるでしょうが、60dbとかになると浮き床構造や2重壁構造とすることになったりしますのでかなり高額になります。
 
場合によっては木造では対応ができず、建屋をRC造にしたり、防音室を地下に設けるといった計画にしなければならないこともあり得るものです。

田端の家(防音室とお茶室のある2世帯住宅)で工夫した点を教えてください

 
まずはプランです。
この家では防音室を2階の子世帯の住まいに設ける必要がありました。
下階が親世帯ですので、親世帯の寝室とは最も離れた位置にすることを前提とする平面計画としました。
結果としては、1階の玄関廻りの上部に防音室を設けるものとしました。
 
また、敷地(隣地)の境界に面する位置に防音室を設けるのではなく、道路境界に面した位置としました。
防音室であるとはいえ、近隣への配慮、安全性をより高めることを意図したものです。
 
隣室との境の壁面は、柱の両面に厚さ25mmの制振遮音ボード(ゼオン化成、サンダムADボード)を貼り、その中にセルローズファイバーを充填するという仕様としましたが、
更に隣室である子供部屋側と主寝室側は防音室内に壁面収納を造り、より防音性能を高めるものとしました。

防音室のある家を建てたい方にアドバイスがあればお願いします

 
前述の通り、防音室はその利用目的や利用形態、使用する時間帯、周辺環境、建物の構造により求められる性能が異なるものです。
 
防音室を計画する際にはまずは前提となる諸条件を明確にして、遮音性能の目標値を設定した上で、それに見合った遮音構造の計画を行う必要があります。
 
性能不足でも過剰設計となっても工事費に大きく影響するものでもありますので上手くありません。
音響設計事務所、或いは知識と経験のある人が関与した形で適正な計画を進めることをお勧めします。

貴社に設計依頼可能なエリアを教えてください

 
直接設計並びに監理に関与させて頂く場合は、基本的には東京都内または近県です。
 
設計に対する監修であったり、セカンドオピニオンとしての資料精査や助言などであれば、地域に関係なく対応をさせて頂いています。

中川龍吾建築設計事務所 中川龍吾さんの防音室設計事例

 

画像 建物の名称 紹介文
田端の家(防音室とお茶室のある2世帯住宅)

「2世帯のより良い関係性を築くことができる家」
「家族それぞれがゆったりと自分の時間を過ごせる家」
「機能性や耐久性の高いしっかりとした家」
「明るく風通しの良い家」
「ワンランク上の性能を有する家」

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