RC構造と木造のメリットを同時に手に入れることができる混構造・株式会社 神成建築計画事務所 神成 健さん


混構造は堅牢なRC構造の部分と繊細で開放的な木造の双方のメリットを同時に手に入れることができます。
 
混構造について株式会社 神成建築計画事務所 神成 健さんに伺いました。

お話を伺った建築家

 

ユーザー 株式会社 神成建築計画事務所 神成 健 の写真
千葉市花見川区南花園2-5-4 須山ビル403
043-308-3901

貴社が混構造を手がけるようになったきっかけを教えてください。

 
独立後最初に依頼を受けた住宅がこの横浜の家です。
敷地は傾斜地で前面道路から奥に向かう方向に高低差が1.8m程度ありました。
ハウスメーカーのように盛土や切土により平坦面を作り高低差を擁壁で支えた後建物をポンと置くというやり方よりは、高低差をRC造の建物自体で吸収するという方法の方が自然でコストも抑えられます。
ですので、必然的に混構造となりました。
前職の組織事務所時代RC打放しは多く経験しましたし、重量鉄骨や木造、CB造などあらゆる構造の建築を設計していましたので特に違和感はありません。
クライアントとの最初の打ち合わせで、コンクリート打放しの家にも憧れるけど木造の柔らかい空間でも暮らしてみたいというようなお話があり、イメージが膨らんだ記憶があります。
RC造により片土圧を支える1階部分はシンプルな形状としつつ面積を抑えて、2階は吉村さんの軽井沢の家のように薄いスラブを張り出し、そこに木造による庇の大きく張り出した開放性の高いリビングダイニング空間をのせるという構成です。

当初のイメージ

↑当初のイメージ

そもそも「混構造」とはどのような構造を指すのでしょうか?
RC造+木造以外の組み合わせもあるのでしょうか?

混構造とは異なる種別の構造を平面方向あるいは上下に使用するものを指します。
鉄骨とRC造、RC造とSRC造、あるいは鉄骨と木造などいろいろありますが、最も事例の多いRC造+木造が混構造の代表として認識されているのかと思います。

混構造のメリット・デメリットを教えてください。
また、一般的な木造住宅と比べて費用(坪単価)はどのくらい変わってくるのでしょうか?

下階がRC造、上階が木造という建築を混構造とした場合、その特徴が発揮できるのは前述のように傾斜地に建築を計画する場合、崖条例の対象となる擁壁近傍での計画、多雪地帯で1階壁面の耐久性や耐水性が必要な場合、あるいは洪水や津波などの浸水予測域でありそれに備えたい場合などに優位性が発揮できると思います。
物理的これらのメリットの他には、堅牢なRC構造の部分と繊細で開放的な木造の双方を同時に手に入れることができるということでしょうか。
 
魅力ある工法である一方、デメリットも多いのが現実。
設計や施工が複雑で手間が多い、工種が増えるためどうしてもコスト高となる、RC造と木造両方を問題なく施工できる施工者は限定されるため、施工者探しが困難であることなど。
確認申請も審査に時間を要し、設計内容によっては適判となる可能性もあります。
場合によっては審査機関が受け付けてくれないということもあるかもしれません。

どのような敷地条件やお施主様の要望があった場合に混構造を提案されますか?
高低差のある土地以外にも適したケースはありますか?

混構造は敷地が決まっていてどうしてもそこで建てる場合その方法を採択するしか道がない、という場合以外は提案しません。
やはりコスト上不利だからです。
実現には至りませんでしたが、フラットな計画地の隣地が高低差3m以上ある擁壁上にあり、擁壁上からの安息角のラインを引くと1階(あるいは全体)はRC造にすることが必須という場合がありました。
この場合は選択の余地がありません。

混構造の建物はRC造と木造で揺れ方が異なると聞きますが、耐震性や住み心地への影響はないのでしょうか?

住宅規模の建築の場合、地震や風による揺れ方の違いが居住性に与える影響はないと思います。
2階の床をRCスラブにするか、床から木造とするかで上下階の床衝撃音は大きく変わりますが。
むしろ、上階屋根が木造の場合、雨音が気になるのであれば寝室は音のしない1階のRC造部分に配置するなどの考慮が必要かもしれません。
当然ながらRC造と木造はサッシの納まりや取り付け方法が違いますので、双方の納まりを理解する必要もあります。

2階 リビングダイニング

↑2階 リビングダイニング

1階寝室 壁天井RC打放し

↑1階寝室 壁天井RC打放し

RC造と木造の接合部は、設計・施工上どのような点に気をつけていますか?
断熱や気密性についても工夫されていることがあれば教えてください。

RC造の上に木造がのることになるのですが、その区分ラインはなるべくシンプルに、できれば1本の線で構成できれば良いと思います。
RCスラブの上に基礎パッキンを介した上で木造の土台をのせる場合が多いのですが、一般的な木造基礎のようなコンクリート立ち上がりはとれないので、特にRCスラブが張り出すような位置に木造の構造体がのる場合は床組み内部に雨水が入らないように止水金物などを配します。
また、張り出しスラブの上に木造の土台をのせる場合は、木造の基礎に規定されるアンカーボルトやホールダウンの埋め込み深さが確保できませんので、その対応を予め構造設計者と詰める必要があります。

「横浜の混構造」では、約1.8mの高低差をRC構造で吸収しながら上にリビング空間のある2階を張り出させる手法をとっていらっしゃいます。
この設計で特に難しかった点や工夫した点を教えてください。

この家はRCの壁で囲まれた1階部分に個室と水回り、木造で天井の高い2階は家族が集まるリビングダイニングという明快な構成です。
せっかく高低差のある敷地に作るのだからと、玄関から2階に登る階段のある空間や一部の個室を、掘削土量の軽減も合わせ元の土地の高低差を感じるようなスキップフロアとしています。
また、コンクリート造の1階玄関横の庭に面した明るい部分に浴室を配置し、その壁も打放しコンクリートに、さらには玄関内部側にも開口を設け開放的な空間としています。
難しかったのは構造計画で、片土圧を受けるため開口部が多く土圧を受けない庭方向の壁厚を大きくすることでバランスをとる計画としました。

1階 玄関部スキップフロア

↑1階 玄関部スキップフロア

2階へのパイプ階段とガラス張りの洗面空間

↑2階へのパイプ階段とガラス張りの洗面空間

1階 RC打放しの水回り

↑1階 RC打放しの水回り

他の設計事例の中で、混構造の採用が特に効果的だったと感じた事例があれば、その理由とあわせて教えていただけますか?

札幌Y邸

↑札幌Y邸
これは純粋には混構造とは言えませんが、4本の鋼管杭を高止まりさせた上に直接CLTの梁を掛け渡して上部木造兼用住宅をのせ、そのピロティ部を駐車スペースとして利用している事例です。
構造設計者の発案で実現したものですが、異なる構造体を組み合わせているという点では発想が近い事例かと思います。
杭が柱を兼ねていますのでコスト、スペース効率共に効果的です。

混構造の建物は、将来リフォームや増築をしたい場合、対応しやすいのでしょうか?

内部のリフォームには問題ないと思いますが、特にRC造部分は柱や壁の位置変更までも可能な木造に比べると制限があります。
増築も条件次第で不可能ではありませんが、他の構造に比べると制限があると思います。

混構造で家を建てたいと考えている方に、建築家・施工会社の選び方も含めたアドバイスをお願いします。

混構造の設計自体そんなに難しいものでもないので、経験がありポイントを掴まれている設計者であるのが最低条件で、それ以前に当たり前ですがその設計者の作品自体が依頼者にとって魅力的なものと感じるかが重要と思います。
施工会社を探すのが実は大変で、RC造の経験が多くきちんとパネル割りの施工図が書け、さらには木造を熟知しているのが条件ときますから、そのような施工者は非常に少ないのが現実。
建築家に依頼する際にもし混構造の方向であるならば、紹介してもらえる施工者があるかどうかがポイントです。

貴社に設計・監理を依頼できるエリアを教えてください。

事務所のある千葉あるいは近県からの依頼が主ですが、設計・監理の対応エリアを限定はしていません。
独立後も札幌~那覇までの実績があります。
ただし、遠方の場合施工者の情報はありませんので、この辺が近傍とは違う条件となります。

株式会社 神成建築計画事務所 神成 健さんの混構造・設計事例

  

画像 建物の名称 紹介文
横浜の混構造

横浜郊外の敷地内には約2mの高低差があり、外周には既存のL型擁壁が残っていました。高い方のレベルに建物を建て道路側に段差を設けるのが一般的ですが、1階を2つのレベルをもつRC構造として敷地の高低差を吸収し、この上にリビング空間のある2階を張り出してのせる混構造を採用しました。

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