ビジネスとして利益を上げるカフェ・江川竜之建築スタジオ 江川竜之さん


 
江川竜之建築スタジオ 江川竜之さんは店舗は ”ビジネスとして利益を上げること” が第一命題であると考えているそうです。
 
カフェについて江川竜之建築スタジオ 江川竜之さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー 江川竜之建築スタジオ 江川竜之 の写真
名古屋市西区名駅2-28-1フェニックスビル5F
052-433-1930

 

貴社がカフェを手がけたキッカケがありましたら教えて下さい。

 
デザインを行うことについて、住宅も店舗も”目的のためにデザインする”ことに対しての基本的な相違はない、とずっと考えていました。
ただ ”快適に永く住まう” という住宅の目的と違う点は、店舗は ”ビジネスとして利益を上げること” が第一命題であることだと思います。
 
そんな折、知人より実家の古い納屋を改装してカフェをオープンされたい方がいらっしゃると紹介を受け、ご協力をさせていただきました。
それが設計事例にあります「こやぎのおうち」さんのオーナー様でした。
 

こやぎのおうち

カフェの外観デザインの際に注意しているポイントを教えて下さい。

 

1.通行者に見てもらう

 
周辺の環境に埋没することなく、通りすがりの人々の目を惹く外観とするよう意識しています。
目立てばよい、という意味ではなく、一瞬視界に入っただけでも、思わず2度見してしまうような存在感を大切にしています。
 
派手で奇抜なものは避け、個性的で調和がとれていて、長く見ていても、何度見ても飽きないデザインを良しと考えています。
現地に行き、周辺の環境を読み取り、ここにどのような顔を持つお店が現れると、道行く人々は目に留めるか、を毎回熟考します。
 
また店名サインやロゴマークも、覚えていただけるように、位置、大きさ、フォント、色、材質、ライトアップ方法などを検討していきます。
外観を見て何のお店か気になった方は、看板を探します。時には探さないと分からないくらい小さく控え目にすることで、探し当てて読んだ方の記憶に深く刻み込まれるよう意図しています。
 

通行者に見てもらう

2.にぎわいを漏れ出させる

 
基本的にはお店の中が見えるようガラス面の位置や大きさを考えて設計しています。
住宅はなるべく見えないように設計することが多いので、この点は真逆と言えます。
お店の中の雰囲気を知っていただいた方が、新規のお客様に入店してもらいやすくなります。
 
中にいらっしゃるお客様も、適度に外の景色が見えた方が、息苦しくなく落ち着いて過ごすことができます。
何らかの理由で中の様子を見せることができない場合は、植栽コンテナ、A型看板、雑貨、ライティングなど屋外のディスプレイに特に力を入れ、ウェルカム感を演出します。
屋外のデッキ席やオープン席があるとより良いですね。
 

3.商品をアピールする

 
例えばケーキのテイクアウトを行う場合は、玄関ドアにガラス面を多く採用して、道行く人々から玄関ガラスを通して、ケーキのショーケースがよく目に入るよう計画します。
テイクアウトはたいへん売上に寄与する重要なファクターです。2時間いてコーヒー1杯のお客様に比べて、5分でケーキを数個買っていただけるのですから。。。
そういった意味で、積極的に販売したいものを外から見えるように意識して設計しています。
 

商品をアピールする

カフェの平面計画の際に注意しているポイントを教えて下さい。

 

1.テイクアウトの動線計画

 
外観デザインとも通じることですが、テイクアウトのお客様が最短でショーケースに辿り着き、横のレジで清算を行い、スタッフがショーケースのすぐ後ろのワークスペースでパッケージを行い、近くにあるスイングドアからホールに出て、お客様に商品をお渡しする。
この動線が無駄なくスムーズに流れるように動線計画することが肝要です。
 

2.初期サービスのスペース

 
お客様がいらっしゃったとき、一般的には最初にお水とおしぼりなどを提供します。
そして、注文受けた後にカトラリーやナプキンをテーブルに並べに行きます。
コップ、氷、お水、カトラリー、ナプキン、ストローなど、細々したものも多いですが、頻度高く提供するものなので、スタッフがあっちに行ったりこっちに行ったりせずに準備ができるよう、適切な位置にまとめておく場所とその収納スペースが必要となります。
 
オープンしてからなんとかする、ということもできますが、最初から考慮しておくことでスタッフの動きに無駄が少なくなります。
 

3.提供スペースとバックスペース

 
業界では”デシャップ”などと呼ばれるスペースのことですが、料理やドリンクを提供する流れと、飲食後の皿やコップなどを下げてくる流れは、なるべく別ルートとすることを意識しています。
厨房内も、つくるスペースと洗浄するスペースは別となっているので、それぞれのスペースとリンクした動線とすることを心懸けています。
 

バックスペース

4.レジ周辺だけでなく、トイレ動線も無駄にしない

 
お客様は、基本的に座った席とレジにしか滞在しません。
雑貨やイベント、別時間帯のメニューなど見てもらいたいものや情報は多くあるはずです。
 
全ての方がトイレに行くわけではありませんが、このトイレへのルート、またはトイレ内でさまざまな情報をアピールすることができます。
そのルートにキャビネットを置いたり、目線に小棚を設けたりと、トイレの行き帰りも無駄にできない貴重なアピールチャンスと捉えています。
 
レジ廻りは必ず寄っていただける場所なので、鉄板のアピールポイントと言えます。
 

トイレへの動線

カフェのインテリアで注意しているポイントを教えて下さい。

 

1.ゴチャゴチャ感

 
永く愛されているお店は、いい意味でゴチャゴチャしているところが多いことに気が付きます。
スッキリきれいな空間は、特別な日に利用するのであればいいのですが、日常使いでは疲れてしまいます。
質感のある仕上、ディスプレイ、観葉植物などで、センス良くゴチャゴチャさせることがポイントです。
 
ほとんどの場合、私たち設計者は、仕上材の選定と、オーナー様がディスプレイするスペースを設けておくことまでしかできません。
オーナー様とコミュニケーションを密にして、こうゆう感じのものをここら辺りに飾って、こうゆう雰囲気に持っていきましょう!というようなお話しはよくさせていただいています。
 

ゴチャゴチャ感

2.椅子テーブルの存在感

 
カフェに入り、意識して見てみると、視界の中に占める椅子テーブルの割合がとても多いことが分かると思います。
床よりも上に、壁よりも前に存在する大きな家具なので、この椅子テーブルのデザインがとても重要であることを、オーナー様にご理解いただくよう進言しています。
個人経営のカフェだと、椅子テーブルはオーナー様自身で購入されることが多いので、インテリアデザインの重要な要素として慎重に選んでいただいています。
 

椅子・テーブルの存在感

3.個性的な小物

 
ドアハンドル、錠、丁番、照明器具、スイッチ、コンセント、手洗器、水栓、タオルバーなど、どのお店にも必要となる様々な小物が存在します。
これらの小物をこだわらずに選ぶと、住宅や施設のような製品がつくことになってしまい、トータルで雰囲気のよいカフェをつくる妨げとなってしまいます。
 
毎回、コンセプトに合った小物とするようオーナー様とやりとりをして決めています。
特に個性的なものはインターネット上でしか手に入らないことも多いので、オーナー様に買っていただくケースも多いです。
 

個性的な小物

4.見せたいものを限定する

 
例えばテイクアウトのケーキを見せたい場合、その周辺に凝ったデザインのものは控えます。
主役がたくさんいると、お客様の注意が散漫になり、本当に見てもらいたいものがぼやけてしまうからです。
壁の黒板のおすすめメニューを見せたい場合も同じです。設計者はとかく自身の作品として表現過多に陥ることがありますが、バランスを重んじてデザインすることがとても大切であると思っています。
 

カフェの厨房設計を注意しているポイントを教えて下さい。

 

1.過剰な厨房機器を入れない。

 
厨房機器は、提供するメニューに合ったものであれば、家庭用の機器でも充分だと思っています。
例えば、過剰な熱機器により、防火のための特別な設備が要求されることとなり、余分な出費を招くこともあります。
どうしても必要なものは業務用で、そこまで必要のないものは家庭用で、と区別することをお薦めしています。
 

2.見せる場所と見せない場所

 
カップやティーポット、お皿などはディスプレイとしても活躍させることができます。
またコーヒーを入れる姿、鍋を振る姿などもディスプレイの1つと言えるでしょう。
 
コーヒーマシンなど見せてかっこいいもの、こんないい器材を使っているのです、とアピールできる機器、ステンレスで統一されたきれいな厨房など、見せてプラスになるものは積極的に見せていくべきだと思っています。
 
逆に、下げ膳が散らかっている様子や、下準備中の魚介や精肉など、あまり見せたくないものを隠すスペースを準備しておくことも重要だと考えています。
お客様の目線から影になるスペースが少しでもあると、たいへん重宝するので、意識してそのような裏方をつくるようにしています。
 

ディスプレイ

「こやぎのおうち」はリノベーションだそうですが、リノベーションの際に気をつけていることを教えて下さい

 

1.法規面

 
「こやぎのおうち」さんは、築100年以上の趣き深い母屋と共に別棟で建っていた古い納屋をリノベーションしています。
リノベーションで問題となるのは法規面です。建築基準法、消防法をクリアすることが大前提であるので、状態によっては防火措置等に多くの費用が掛かってしまうケースがあります。
 
従いまして、まずは法チェックを行うことがとても重要な作業となります。
幸い「こやぎのおうち」さんは、規模が大きくなかったこと、密集地ではなかったことが幸いして、法規上、過大な費用を掛けずに工事を行うことができました。
 

リノベーション

2.構造面

 
法規上、古い建物のままで使用することができましたが、その古さ故、構造的な範疇で改善すべき点がありました。
そのため一部補強工事を行い、建物の強度を上げながらの設計施工となりました。
 

3.合併浄化槽問題

 
下水が整備されていないエリアのリノベーションは、この浄化槽を設置することが費用上、スペース上、問題となってきます。
カフェという用途は、住宅に比べてとても大きな規模の浄化槽が要求され、20席程度でも数百万円ほどかかってしまいます。
さらに地面に埋めるスペースもかなり広く必要で、浄化槽が設置できないことでリノベーションができないケースも多々あります。
 

カフェの新築などもやっていただけますか?

 
はい、新築もテナント改装もどちらも対応させていただいております。
 

土地探しからの相談にも乗っていただけますか?

 
はい、当事務所は宅地建物取引業の免許も取得しておりますので、土地探しの相談からのらせていただくことも可能です。
候補の土地がある場合も、カフェとして来客が見込める立地であるかどうか、インフラの問題、駐車台数など多岐に渡りアドバイスをさせていただいております。
 

カフェを開業したい方になにかアドバイスがありましたらお願いします。

 

1.設計者の選定

 
カフェなどの飲食店は、売上をあげるための独特なノウハウが必要となります。
設計者を選ぶ際に、飲食店を手掛けたことのない方に依頼すると、住宅のような、または施設のようなお店ができあがることがあります。
入ってみたいと思ってもらえるお店、また来たいと思ってもらえるお店とするためには、店舗デザインに精通している設計者との出会いが重要かと思います。
 

2.初めてカフェを経営する方へ

 
全く別の職種からカフェ経営に転向される方は、いずこかのお店で修行を積まれるか、開業支援スクール等に通うことをお薦めします。
当事務所では、雑貨とカフェなどの飲食店を経営するプロを育成する 「日本雑貨カフェクリエイター協会」 と協力関係にあります。
スクールにおいては、開業するために必要な設計以外の経営数字、レシピ、スタッフ育成など、開業に必要な全ての内容を学ぶことができます。
 

カフェ併用(兼用)住宅の設計で注意しているポイントを教えてください。

 

1.生活感を感じさせない工夫

 
住宅を併用するカフェで最も重要なことは、生活感を感じさせないことです。カフェと住まいを間取りの上でしっかりと区分して計画することが重要となります。
住宅の玄関、窓、ベランダなどが、カフェのお客様から見えないようにプランニングする必要があります。
 

2.住宅と同じ部材を使わない

 
”インテリア”の項目でも書かせていただきましたが、住宅でよく使うドアや窓、小物類を考えなしに使うと、カフェが人のお家のようになってしまいます。
(住宅のようなカフェ、というコンセプトであれば別ですが・・・)
 
住宅があるので、どうしても住宅設計がメインの設計者や施工会社に依頼しがちですが、結果、お店らしくない住宅のようなカフェができあがってしまい、集客を望めなくなってしまいます。
本体の設計者とカフェ部分の設計者を別で依頼するくらい峻別する意識が必要であると考えます。
 

3.住宅、店舗、どちらにも精通している設計者を選ぶ

 
最もオーナー様の負担が少なく、”快適な住まい”と”集客できるカフェ”を両立させる方法は、どちらの用途にも精通した設計者を選ぶことだと思います。
 

江川竜之建築スタジオ 江川竜之さんのカフェ・設計事例

 

画像 建物の名称 紹介文
isuzu cafe

アンティーク感を演出する建材選び、塗装方法の検討、家具選び、照明器具選び等に労力を費やしました。

カフェ こやぎのおうち

柱、土台が一部傷んでいたので、構造的な補強を行いつつリノベーションを進めました。

cafe DESERT MOON

なるべく地元の木材を使用するようクライアント様、工務店担当者様と一緒に、材料選びに時間を費やしました。

Cafe Leaf

BEFOREの雰囲気を払拭できるかどうかをお悩みでした。
新しい姿にうまくリノベーションできたかと思います。

 

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