入居者目線の間取りとデザインで選ばれるマンション・株式会社大沢アトリエ 大沢ジュンイチさん

入居者の満足度が事業の成否を左右するマンションでは、間取りや防音などの細かな配慮が大切です。
マンションについて株式会社大沢アトリエ 大沢ジュンイチさんに伺いました。
お話を伺った建築家
江南市赤童子町藤宮103-1 0587-55-5234 |
貴社がマンションの設計を手がけるようになったきっかけがあれば教えてください。
そうですね、私が大沢アトリエを作る前に働いていた設計事務所でもマンションの設計を行っていましたので、独立した時にその時のお客様から引続きご依頼を受けてマンションの設計を行うことになった、というのが当社がマンションの設計を手掛けるきっかけです。
大沢アトリエでは個人住宅や高齢者福祉施設、商業施設などの設計も行っていますが、その中でもマンションは数多く設計をしています。
マンションの設計を、ハウスメーカーやゼネコンではなく設計事務所(建築家)に依頼するメリットは何でしょうか。設計・監理と施工を別々の会社が担う「設計施工分離方式」の利点も含めて教えてください。
マンションに限りませんが、事業として行う場合は、ハウスメーカーやゼネコンなどの設計施工で行うよりも、専門の設計事務所を入れた方がより多くの知識や経験が得られるので、安心して事業を進められることが大きいと思います。設計施工の場合、業者さんの提案が正しいのかどうかお施主様だけではなかなか判断ができないと思うのですが、そこに設計事務所を入れることで公平な立場での意見を聞くことができますし、お施主様の意向を代弁してもらうこともできるので、安心して事業を進めることができると思います。
それと、設計事務所による第三者検査によって、業者さんの施工が本当にきちんとされているかどうかを確認できるのも大きなメリットだと思います。
マンションの建築費や坪単価は、いまどれくらいが相場でしょうか。近年の資材・人件費の高騰はどの程度影響していますか。
建設業界全般に言えることなのですが、このところの建設費の急激な高騰によって坪単価ということでは考えにくくなっています。数か月たつと、金額が大きく変わってしまうからです。
1年ほど前は躯体費と住宅設備費が大きく増加していましたが、最近は設備・電気工事費が特に上がっています。
そのような中、当社ではその都度、見積りができる程度の図面・仕様書を作り、施工会社に見積もりを取って工事費を判断するようにしています。
設計事務所にマンションの設計・監理を依頼した場合、設計料はどのくらいが目安になりますか。
規模や敷地条件により変わりますが、工事費の約4%~7%程度がおよその目安です。
実際は計画ごとに省エネや性能評価の申請、各市町村の条例による申請の人工を加味して、工事費の増減に影響されない面積当たりの単価でお見積りを出します。
マンションを建てる場合、設計から竣工までの工程(流れ)と期間はどれくらいかかるのでしょうか。
設計期間は各市町村の事前協議(近隣説明、報告書の作成)により大きく左右されますが、この事前協議のほかにプランの作成・協議・決定の時間、省エネ申請・審査期間(2~3か月)、構造設計・計算時間(2~3か月)、確認申請・審査期間(2~4か月)等が必要です。これらは重複できるところもあるので、通常、規模の大きな建物だと設計期間は8か月~1年程となります。
中高層条例、省エネ事前申請、バリアフリー法の申請、緑化協議、開発や宅造などの事前協議の進捗具合によって、設計期間はさらに伸びることも多いので余裕を見ておくと良いと思います。
施工期間は鉄筋コンクリート造3階建てで最低7か月、高層マンションでは14か月~18か月程度かかることが多いと思います。
マンションで問題になりやすい上下階・隣戸の騒音について、設計上どのような防音対策をされていますか。
騒音を防ぐには多くのマンションが行っているように、鉄筋コンクリート造で作ることが基本となります。コンクリートは型枠に流し込んで作るので隣戸との間にスキマができることは無いので、遮音対策としてはとても有効です。また、壁や床の厚さを20センチ以上に設定してコンクリートの重量で空気の振動・伝達を防ぐということも大切です。
住戸の床については遮音性のあるフローリングを使い「コンコン」といった軽量音の伝達を防ぐようにしています。
トイレを流した時の音には縦の排水管にグラスウールを巻いて対策をしています。
マンションの場合、隣戸からの音については、クレームとして上がってくることが多く、特に注意して設計をしています。
日影規制・高さ制限・斜線制限・採光など、マンションは法規制の影響を強く受けますが、規制の厳しい敷地では設計上どのように対応されていますか。
名古屋市内のような法規制の厳しい敷地での設計は、当社の得意とするところです。
日影規制は建物形状を少しずつ変えながら日影図を複数作り、比較して最も有効な形状を選定していきます。道路斜線や隣地斜線などの斜線制限については天空率を使用して従来の斜線制限の緩和を行うことが多くなっています。
マンションには防火や避難などの独特の法規制が多く、設計の専門性が特に問われる建築だと思っています。
マンションの設計で特に注意している点や、施主が陥りやすい失敗があれば教えてください。
そうですね、マンションの設計で一番大切なことは、実際に入居する人のことをしっかりと考えて、暮らしやすい間取りや仕様の満足感などを想像しながら設計をすることだと思っています。
とかく、工事金額や収支計算ばかりに頭が行きがちになると思いますが、賃貸であれば10年後、20年後の入居率、分譲では販売時の成約率に影響を与えるのは、入居者のことをどれだけしっかりと考えて入居者のための設計をしているかということだと思っています。具体的には、使いやすくてシンプルな間取りやデザイン性の高いエントランスなどは入居者の暮らしの中での満足度を高め、事業を成功に導いていると思っています。
入居者は自分が長いこと暮らす家なのですから、間取りや仕様など非常に細かいところまで目を光らせていると思います。私たちは専門家としてそれに答えられるようにきちんと設計をしなければならないと思っています。
賃貸・分譲を問わず、入居率や収支・ターゲット層といった事業性と、住みやすさ・デザイン性をどのように両立させていますか。
先ほどの話とも重複するのですが、事業性と住みやすさ・デザイン性は同一のものだと思っていて、そういったスタンスでお施主様にも提案をさせていただいています。
その中で、建設コストの調整もとても大切なことですので、費用を抑えながら入居者の満足度が高い設計の工夫をしています。
例えば外部のタイルは同じ色で全部貼っても、デザインをして何色かのタイルで貼り分けをしても、同じ値段のタイルを使えば同じ値段なので、コストをかけなくてもデザイン性の高い建物を作ることができます。
間取りや平面計画では、無駄なスペースを極力無くしてロスの無い間取りを考えることで、施工床面積を減らして工事費を抑えるような工夫をしています。
企画段階のボリュームチェック(ボリューム出し)だけの依頼や、既存マンションの大規模修繕の設計監理も引き受けていただけますか。
当社ではボリュームチェックの時でも、実際に現地に行って敷地の状況、敷地の周囲の状況を確認します。また、関係する役所にも行って基準法の考え方や条例の内容をヒアリングして、計画の後戻りが無いようにしています。
ボリュームチェックは非常に重要な部分だと考えていますので、その後の設計・監理は他社様で行うということでしたら当社ではお受けすることはできません。
既存マンションの大規模改修の監理は以前、やったことはあります。ただ、設計ということではなく改修業者さんの提示している内容が適正かどうかのチェック、工事中の検査等と理事会での報告が主な内容です。何度も現地に足を運ぶ必要がありますので近県で条件が合えば監理は可能です。
『エル・セレーノ塩釜』は名城大学近くの学生専用・賄いつきマンションという珍しい用途ですが、設計で工夫された点を教えてください。
やはり、若者に受け入れられるデザインを考える必要があるということで、設計時にお施主様とともに大阪や福井の最新の学生マンションを見学に行き検討を重ねました。
クールなニューヨーカースタイルといったコンセプトを考え、床はモルタルを思わせるグレー系にしたり、随所にアクセントクロスを配したりして、活気があり、シンプルでかっこいいマンションをめざしていたことを思い出しました。

『プレミアシティ多治見』は変形した敷地に建つ分譲マンションですが、敷地の形をどのように活かして建物を配置されましたか。全戸分以上の平面駐車場の確保や、南向き住戸を多くとる工夫についてもあわせて教えてください。
変形敷地のためプランを確定するまでにはとても時間がかかりました。何度もプランを練り直して検討を重ねたと思います。敷地の南北方向が通常のマンション用の敷地よりも狭く、東西方向にかなり横長の住戸という、マンションではあまり見ない間取りの計画をしました。結果として南向きで間口の広い部屋、間取りも使いやすいということでお客様には評判が良くて、竣工のかなり前に完売をしました。
駐車場は変形敷地を隅々まで無駄なく利用する配置を工夫することで台数を確保しています。道路斜線もとても厳しく苦労をして設計をしましたが、完成してみると不思議なもので何の苦労もなく平然と建っているように見えます。

これからマンションを建てたいと考えている方に、アドバイスをお願いします。
これからマンションを建てたいと考えている方というのは、主に賃貸マンションをお考えの方かと思いますので、その方に向けてのアドバイスということで話をさせていただきます。
今の日本の状況は、マンションを建てるには難しい時代なのかなと思います。
建設費の高騰、金利の上昇、職人不足などあまり良い話は聞きませんし銀行の融資を受けるのも相変わらずハードルが高く難しいと思います。
ただ、見方を変えると、この時代に賃貸マンションを建てれば、ライバルも少なく新築の賃貸マンションは非常に希少価値ということも言えると思います。平均家賃も年々上昇傾向にあり、個人の所得も今後は上がっていくと思います。
銀行融資が一つのネックになると思いますが、ここを乗り越えることができれば人気の賃貸マンションを作ることは可能ですしメリットもとても大きいと思います。
貴社に設計・監理を依頼できるエリアを教えてください。
基本的には東海3県ということなのですが、交通の便の良さなど条件によっては東京、大阪などでも可能です。
株式会社大沢アトリエ 大沢ジュンイチさんのマンション・設計事例
| 画像 | 建物の名称 | 紹介文 |
|---|---|---|
| | プレミアシティ多治見 | 変形敷地のため、この敷地をすべて有効に活用できるよう建物を配置することにとても苦心しました。敷地をいっぱいに使いながら、余裕をもってゆったりと建てられているように見せるよう色々な工夫をしています。 |
| | エル・セレーノ塩釜 | 日影の規制が厳しい地域で建物の外形がかなり複雑な外形にならざるを得ませんでしたが、ブロックごとに配色や素材を変えることで意匠性を高められるように工夫をしています |
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