猫がストレスを感じずに暮らせる家・設計事務所アーキプレイス 石井 正博さん
猫と暮らす家では猫がストレスを感じずに暮らせることが、飼い主の方にとって幸せに繋がります。
同時に、飼い主の方にとってもストレスとなるメンテナンスが少ないなど、猫と人どちらも快適に過ごせる家にすることが大切です。
猫と暮らす家について設計事務所アーキプレイス 石井 正博さんに伺いました。
貴社が猫と暮らす家を建てるようになったきっかけを教えて下さい
賃貸で猫と暮らしていた建て主の方が、子供さんが生まれたのを機に、猫と人がお互いにストレスなく暮らせる住まいを建てたいと希望されたことがきっかけです。
最初は赤ちゃんとの暮らしになること、賃貸の平面的な暮らしから階段のある2階建ての暮らしになり、猫の生活環境が大きく変わってしまうことへの配慮も必要でした。
猫と暮らす家の価格はどれくらいでしょうか?
猫と暮らすために必要となる、家具や仕上げ材の程度、設備のグレードにもよりますが、坪単価85~100万程度です。
猫と暮らす家だからということが理由で、坪単価が極端にアップすることはないと思います。
猫と暮らす家の間取りで注意している点を教えて下さい
猫がストレスを感じずに暮らせることが、飼い主の方にとって幸せに繋がります。
同時に、飼い主の方にとってもストレスとなるメンテナンスが少ないなど、猫と人どちらも快適に過ごせる家にすることが大切です。
そのためには、猫のエリアを決めることが基本になります。
猫が入れない人だけの空間をつくることで、猫の安全性とお互いのストレスに配慮した空間分けをおこないます。
猫の好奇心を満たし、適度な運動もできるような間取りや吹抜けなどを利用した立体的な、空間づくりも大切になります。
できれば、猫がより開放感を味わえる中庭やテラスを設け、自由に出入りできるようにしてあげると、室内だけで暮らすよりも猫の満足度は高まります。
気をつけなければいけないのは、猫の脱走です。
外の世界には猫にとっての思わぬ危険が多く、一度脱走すると癖にもなるため、猫の運動能力を甘く見ずに、脱走の防止策は万全を期して計画します。
「猫と暮らす中庭のある家」の猫は、2階建の中庭のある新居に暮らすようになってから、運動能力が格段に上がり、中庭を囲っている高さ1.8mの板塀を乗り越えて脱走したことがありました。
設計中に見た時の猫は太っていて、塀の高さは建て主の方と一緒に決めたものでしたので、脱走したと聞いた時は驚くと同時に、環境によって猫の運動能力は変化する可能性があることを学びました。
【写真】のような脱走防止装置を考案し、塀の上部に取り付けたことで、今は脱走することはなくなりました。
猫のエリア分けでは、エリアを仕切るドアや引き戸の作り方がポイントになります。
普通のドアや引き戸だと、猫は開けることができるため、ハンドルを一般的なレバーハンドルではなくノブやプッシュプルハンドルにしたり、扉に鍵を付けたりします。
注意点としては、ドアや引き戸を閉めっぱなしにしているばかりだと、窓を開けて風を通したい季節にも、家自体の自然換気が思うようにいかなくなり、猫の匂い自体が篭りやすくなってしまうことです。
これを解決する方法の一つとして、建具上部に欄間を設ける方法があります。
ドアや引き戸を閉めていても、猫が通れない欄間部分を開閉することで風や空気の流れをコントロールすることができるため、猫の匂い問題も少なくなります。
【写真】は『風と光と暮らす家』上部に欄間を設けた引込み戸の事例
猫と暮らす家のインテリアで注意している点を教えて下さい
猫の遊び場となるキャットウォークなどが目立ちすぎないように、他のインテリアと色や素材感などを揃えるようにしています。
また、猫がいたずらしやすいテレビ周りの配線は、表に出てこないように壁の中に隠し、AV機器も猫が開けられない扉などをつけた家具の中に入れています。
猫と暮らす家ではどのような壁紙を採用していますか?
特殊なものは使わずに一般的なビニルクロスを使っています。
爪研ぎやスプレー行為など猫の「マーキング行為」が気になる時は、壁の仕上げ材は傷つきにくいもの、清掃しやすいものにし、傷がついても補修や交換がしやすいものにしておくと良いです。
平屋の猫と暮らす家も設計していただけますか?
いたします。
猫は高いところがとても好きなので、勾配天井にして構造材である梁をあえて現し、それに絡めて猫の遊び場となるキャットウォークやキャットタワーを設けると良いとも思います。
キャットウォークは見た目にも楽しい造形とすれば、インテリアに動きを与えてくれ、生活そのものを豊かにしてくれます。
猫と暮らす家の玄関で注意している点を教えて下さい
猫はおとなしくしているように見えても、外界に対して興味を持っています。
バルコニーとともに猫の2大脱出口といわれる玄関では、玄関ドアを開けた拍子に猫がとびだしてしまう恐れもあります。
そのため、猫が玄関ドアに近づけないように、玄関スペースそのものに猫が入れないように建具をつけてエリア分けを行います。
建具にはドアノブやプッシュプルハンドルを使ったり、鍵がかかるようにして猫が開閉できない作りにします。
夏の暑い日に猫がタイル張りの玄関の床に寝そべっている光景を目にすることがあります。
これは猫が熱くなった体の熱を逃がし、体温を下げる目的で、熱伝導率が高いため、触れるとひんやりするタイルの気持ち良さを求めて、玄関に来ています。
玄関に入れさせない場合は、気温が高くなる夏の日でも、猫が快適に過ごすことができるように工夫した場所を、別に用意しておくと良いです。
猫と暮らす家のリフォームも引き受けていただけますか?
引き受けます。
新築と比べてリフォームの場合、要望や解決したい課題が明確になっていることが多いことが特長です。
飼い主の方としっかりと話し合い、ご要望の改善ポイントに対して建築的なアイデアを提示して一つ一つ丁寧に改善していけば、人にとっても猫にとっても幸せな住まいができます。
見逃しがし勝ちなのが、温熱環境です。
猫は温度変化にとても敏感な生き物なので、リフォームを機に壁の断熱材を補強したり、窓のガラスをシングルガラスからペアガラスに交換したり、内窓を設けて二重サッシにするなど温熱環境にも気をくばりたいところです。
リフォームにより外気温の変化に左右されにくい室内温熱環境にすることは、猫にとってだけでなく、人にとっても快適で健康的な生活を送るためのベースになります。
【写真】は「Valley(リフォーム)」小屋梁を室内に現し猫の遊び場とした事例。
「趣味や時間を大切に犬猫と暮らすコートハウス」で工夫した点を教えて下さい
- 猫が室内だけでなく、外の空気にも直接触れながら暮らしていけるように、中庭と猫テラスの二つの外部空間を設けました。
中庭や猫テラスは室内と段差なくつながり、中庭はコンクリート平板、猫テラスは南洋材のウッドデッキで仕上げています。
猫が内外を行き来しても土に触れることがないため、室内も清潔に保つことができます。
中庭にはシンボルツリーの古木オリーブが植わっています。
設計では、大きな窓サッシ上部に庇を取り付ける予定でしたが、工事中に現場をご覧になった建て主の方が、猫が古木オリーブの枝からこの庇に飛び移り、中庭から脱出してしまう可能性を心配され、急遽、庇を取りやめました。
材料発注前だったのでことなきを得ましたが、完成まで様々なことを想像しながら地道に検討していくことの重要性を改めて感じたエピソードです。 - LDKに設けたキャットウォークの先、2階には猫が外気に触れることができる猫テラスがありますが、猫の脱走を防止するために、開口部には全面にファイバーグレーチングのパネルを設置しました。
【写真】は「趣味や時間を大切に犬猫と暮らすコートハウス」の猫テラスの脱走防止パネル
- 猫は屋内や中庭やテラスを自由に行き来でき、建て主の方は猫の脱出の心配がないため安心して過ごされています。
- LDKは天井を高くして、東側に大きな壁面をあえて設け、そこに猫が立体的に遊べるようにキャットステップを設けました。
キャットステップは二方向に分かれて南北に設けた高窓まで続いていて、ベンチやキッチン収納家具や絡めてデザインすることで、統一感のあるインテリア要素として整理し、階段状のリズム感を生かした面白さも狙っています。
壁の一部には、猫が立ち止まって外を眺められる小窓を随所に設けています。 - この住宅は猫と犬(小型犬)との共存もテーマでしたので、犬が誤食しないように、猫の食事の場所やトイレの位置は、建て主の方と意見を伺いながら犬が届かない高さに設置しています。
- 猫トイレ設置場所には、すぐ近くの壁に換気扇を設けて、猫トイレの匂いが室内に広がる前に外に排出できるようにしています。
猫トイレ用の砂などの収納も、メンテナンスしやすいようにこの場所に設けています。 - ペットにも優しい低温の床暖房(アクアレイヤー)を1階全面に採用しました。
部屋ごとの温度の差がなくなり、人にとっても猫にとっても暮らしやすい温熱環境になっています。
エアコンの場合吹き出しの風によって、猫の抜け毛が室内に舞ってしまう欠点がありますがその心配もありません。 - 猫が行けるゾーンは、1階ではLDKと猫トイレのある通路と中庭、2階では階段ホールと猫テラスに絞っています。
個室の一つには建具に猫扉を設けましたが、必要に応じて閉じることもできる作りにしています。
「趣味や時間を大切に犬猫と暮らすコートハウス」は中庭もあるのですね。中庭を採用した理由を教えて下さい
敷地は開発された住宅街にあり、土地の広さはかなり大きなものでしたが、設計がはじまった時には、隣家にどのような住宅が建つかまったくわからない状況でした。
そこで、どのような住宅が建ってもそれに影響されず、自分たちの住環境を守るための方法として、中庭に開いたコートハウスをご提案しました。
これはプライバシーが守られた中で、光や風を十分に取り込み、猫や犬を外部でも安全に遊ばせたい建て主の方のご要望にも合致したものでしたので、とても気に入っていただきました。
ハウスメーカーや工務店ではなく貴社に猫と暮らす家を依頼するメリットを教えて下さい
今までの経験に基づいて詳しいヒアリングを行い、ご要望に対してきめ細かな対応・ご提案を差し上げます。
住まいの要望は十人十色と言われますが、猫の要望も、猫のライフステージ(子猫・成猫・老猫)や性格、今までの暮らしや育ち方により十猫十色と様々です。
猫との共存の仕方はそれぞれのご家庭で違いますので、これをやっておけば大丈夫という安易な答えがあるわけではありません。
人もペットも快適な住まいを実現するためには、猫の行動をよく観察して、建て主の方の要望を十分にくみ取り、打合せを重さね、その住まいならではの答えを、一つひとつ見つけていくことが大切だと考えています。
設計事務所アーキプレイス 石井 正博さんの猫と暮らす家・設計事例
画像 | 建物の名称 | 紹介文 |
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猫と暮らす中庭のある家 | 「居心地のいい、落ち着く家」が家づくりのテーマです。 | |
趣味や時間を大切に犬猫と暮らすコートハウス | 「機能・効率性が高く、収納に無駄がなく、家族それぞれの趣味や時間を大切にしながら、ペット(犬・猫)とともに暮らす居心地の良い住まい」を家づくりのテーマとした4人家族とペットの住宅。 | |
風と光と暮らす家 | 計画地は都内の比較的ゆったりとした住宅街(第一種低層住居地域)の、引込み道路の先にあり、正形の敷地には北側の二辺から高度斜線(5m+0.6/1)がかかります。 |
猫と暮らす家・メニュー
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