快適な「住まい」としてのサービス付き高齢者向け住宅・モリイデザインワークス一級建築士事務所 森井 浩一さん


 
「快適に生活できる」「安心して暮らす事ができる」「落ち着いた暮らし」と感じる、そして、見学に来られた家族の方々もそう感じていただける「住まい」という視点が、これからのサ高住づくりには欠かせない要素です。
 
サービス付き高齢者向け住宅についてモリイデザインワークス一級建築士事務所 森井 浩一さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー モリイデザインワークス一級建築士事務所 森井 浩一 の写真
大阪市天王寺区東高津町3-8-301
06-6766-0688

 

サービス付き高齢者向け住宅とはなんですか?

 
サービス付き高齢者向け住宅(略してサ高住)とは、 高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けることを実現する「地域包括ケアシステム」拡充の施策として、2011年に創設されたもので、高齢者単身・夫婦世帯が安心して居住できる賃貸等の住まいの事です。
 
国土交通省・厚生労働省が所管する「高齢者住まい法」に基づく制度で、バリアフリー構造・一定の面積・設備など高齢者にふさわしいハード、そしてケアの専門家による安否確認サービス・生活相談サービスなど安心できる見守りサービスを備えた施設です。
 
ただし、住居の面積や設備について、また、安否確認・生活相談サービス以外の介護・医療・生活支援サービスの提供・連携方法について様々なタイプがあります。
 
サ高住には「一般型」と「介護型」の二種類があります。一般的なサ高住(以下、一般型)は、独居や夫婦2人暮らしで毎日の生活に不安を覚える自立~軽介護度の方に適しており、介護が必要になった場合は訪問介護など外部の在宅介護サービスを利用します。
 
また一部では、厚生労働省の定める「特定施設」の指定を受けているところ(以下、介護型)もあります。ここでは介護が必要になった場合は建物内に常駐するスタッフから介護サービスや生活支援サポートを受けることができます。介護付き有料老人ホームと同様のサービスが提供されるため、重介護の方にも対応しています。
 
創設当初は「高齢者単身・夫婦世帯が安心して居住できる賃貸等の住まい」という位置づけだったので一般型の認識があったのですが、現在では、介護型が主流となっています。
社会的ニーズがそうだったのでしょうね。
 

貴社がサービス付き高齢者向け住宅を手がけるようになったきっかけがあれば教えてください

 
この計画のお話をいただいた時は、正直「サービス付き高齢者向け住宅」についての知識はほとんどありませんでした。
そして、私の事務所は、住宅やインテリアデザインを主要な業務としていたため、こういう施設の経験もありませんでした。
 
しかし、その当時、私も50歳でプライベートでも自分の親の生活についてや介護の事など身近な問題としてとらえていた事、クライアントと同世代であったため、そのあたりの意識を共有できた事もあり設計させていただく事となりました。
 
また、設計事務所として今まで住宅を手がけてきた経験から、快適な「住まい」としての施設の提案ができるのではと思い引き受けました。
 

 

サービス付き高齢者向け住宅にはどのような基準があるのでしょうか?

 

規模・設備について

専用部分の床面積は、原則25m2以上であること。ただし、居間、食堂、台所そのほかの住宅の部分が高齢者が共同して利用するため十分な面積を有する場合は18m2以上です。
各専用部分に、台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を備えたものであること。ただし、共用部分に共同して利用するため適切な台所、収納設備または浴室を備えることにより、各戸に備える場合と同等以上の居住環境が確保される場合は、各戸に台所、収納設備または浴室を備えずとも可となります。
バリアフリー構造であること。段差をなくす、浴室やトイレに手すりを設置する、廊下幅や出入り口幅などの基準寸法を確保します。
 

サービスについて

安否確認サービスと生活相談サービスが必須のサービスです。ケアの専門家が少なくとも日中建物に常駐し、これらのサービスを提供します。
 
住居の広さとしては、前述しましたが「介護型」のサ高住が主流となっているため、各住居にトイレ、洗面、収納だけを備えた18m2以上のタイプが多いようです。
 

サービス付き高齢者向け住宅の建設費はどれくらいですか?

 

新築について

数年前は、鉄骨造で1住戸あたり800万円程度、コンクリート造で1000万円程度が目安となっていました。ですが、昨今の建設費の高騰によりこの金額では難しくなってきています。
そのため、木造のタイプも最近では多くなっています。
 
規模としては30戸未満が半数強を占めており、50戸未満が約8割を占めています。という事は、建設費は3~5億円が多いということですね。
 
ここで補助金などの公共の支援のお話をします。基本的な内容のみとします。

補助金について(H29.5.29~H30.2.2募集分)

 
新築の場合
建設費の1/10かつ1住戸あたり120万円以下の額
ただし、住戸面積が 30m2以上かつ基本設備が設置されている住宅の場合(夫婦型サ高住):1住戸あたり135万円以内
住戸面積が 25m2未満の住宅の場合:1住戸あたり110万円以内
 
改修の場合
建設費の1/3かつ1住戸あたり150万円以下の額
 

税制について

所得税・法人税、固定資産税、不動産取得税に軽減措置があります。
 

融資について

住宅金融支援機構において、「サービス付き高齢者向け住宅」としての登録を受ける賃貸住宅の建設に必要な資金、
当該賃貸住宅に係る改良に必要な資金または当該賃貸住宅とすることを目的とする中古住宅の購入に必要な資金への融資を実施します。
 

 

サービス付き高齢者向け住宅を設計する上で注意している点を教えて下さい

 
サ高住を計画する中で、他のいろいろな施設を見学させてもらいお話を伺いしました。入居費の安いものから高いものまで色々見学させていただきました。
多くの施設は効率を求める発想で作られてきたように感じました。今建てられているサ高住についてもそういう視点での施設づくりが多いようです。
ですが、この方法であると他の施設との差別化がむずかしく、今後これらの施設は淘汰されていくと思われます。
 
サービス付き高齢者向け住宅は、入居者の方にとって「終の住処」になる事が普通です。
設計事務所として今まで住宅を手がけてきた経験から、快適な「住まい」としての施設の提案を心がけました。
当人が「快適に生活できる」「安心して暮らす事ができる」「落ち着いた暮らし」と感じる、そして、見学に来られた家族の方々もそう感じていただける「住まい」という視点が、これからのサ高住づくりには欠かせない要素であると思います。
 
今回の計画では、住居と住居の間に出来る限り中庭を設け、2方向からの採光と通風をとれるようにしました。
 

 

実際に住む高齢者のために配慮している点があったら教えて下さい

 
介護型のサ高住が主流となっていますが、入居者の中には、健常者、介護程度の低い方もおられます。
 
一般的なサービス付き高齢者向け住宅の住戸は、その住戸の大きさにもよりますが、トイレだけ個室で洗面台が部屋にオープンで設置している事が多いです。
使いやすいから、介護しやすいから という理由によるものですが、でも部屋でくつろいでいるシーンの中で洗面台が見える事に抵抗感がありました。
クライアントも同じ感覚を持っておられたため、今回の計画では、トイレと洗面台を個室とし介護のしやすいようにドアを大きな引き戸とし、開け放てば介護しやすくなるように工夫しています。
 
また、建物全体のイメージとして落ち着いた和のイメージとしました。こういう施設は、共用部がパステルカラーの幼稚園のような内観イメージが多いのですが、今回ちょっと違う感じにしましょう(これもクライアントと同意見だったのですが)という事では落ち着いた和のイメージとしました。
 

施設で働く職員のために配慮している点があったら教えて下さい

 
職員の方々は、本当に忙しく毎日 事務所と各住戸を行き来しています。
一般的なサービス付き高齢者向け住宅の構成は、中央廊下で各住戸を両サイドにレイアウトしていきます。
 
効率はいいですが、両側に同じドアが並んでいる所を1日に何度も往復するのってどうやろ。。。と思い、今回の計画の主要な場所である中庭から緑が見えて光が入ってきてという廊下なら少しは気持ちいいかなと。。。思っています。
 
少し素材について話しておきます。
内部の床材ですが、多くの施設では少しクッション性のあるビニル床材がよく使われています。車いすの耐摩耗性や転倒時の安全性や拭き掃除のしやすさなどの理由からです。
 
今回は、落ち着いた和のイメージという事なのでクッション性のあるフローリングを採用しました。
このフローリングは表面の木のすぐ下層にクッション材を挟んだ材料で上記の性能を満足しています。
こういった材料は、職員の方たちが介護や掃除などの際、膝を床につくのですが。。。痛くないんです。
 

なにから始めたらよいかわからない……という方の相談にも 乗っていただけますか?

 
もちろんです。
私たち設計事務所の仕事は、設計提案から基本設計・実施設計への建築計画、工事監理、スケジュールコントロール、コストコントロールなどです。
クライアントと一緒に全体を見る事が出来て、クライアントにアドバイスできるのが設計事務所です。
計画の視点から運営にアドバイスも可能です。
 

補助金申請の手続きなども手伝っていただけるのですか?

 
もちろんです。
というよりは、補助金申請の手続きは、内容的にはほとんど設計事務所の仕事ですね。図面と見積書の内容を細かく精査して「これは補助金対象か否か」など担当部署とやり取りして。。。という作業です。
 

サービス付き高齢者向け住宅・平面図

サービス付き高齢者向け住宅・全体平面図

↑サービス付き高齢者向け住宅・全体平面図

サービス付き高齢者向け住宅・住戸平面図

↑サービス付き高齢者向け住宅・住戸平面図

サービス付き高齢者向け住宅を建てたい方になにかアドバイスがあればお願いします

 
サ高住を建てたい方が、どういう方で、何をしたくて、どういう思いで、サ高住を建てたいのかによりますね。
様々な状況があるとは思いますが、「終の住処」として入居者が快適に生活できる事を望みますね。
 

モリイデザインワークス一級建築士事務所 森井 浩一さんのサービス付き高齢者向け住宅の設計事例

  

画像 建物の名称 紹介文
サービス付き高齢者向け住宅

配置計画として、中庭部分を各所に配置し住戸に極力2面の窓を計画しました。全体イメージとしては落ち着いた和のイメージとしました。

 

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