高原の別荘のように家中が快適な全館空調・アーキシップス京都 古前極さん

全館空調は、家全体をまとめて冷暖房・換気し、廊下や脱衣所まで部屋ごとの温度差を少なくする仕組みです。
真夏でも「高原の別荘みたい」と感じるほどの快適さがある一方で、方式によっては機械室やダクトのスペースが必要になり、導入費用やメンテナンスなど計画の段階で考えておくべきことがあります。
全館空調についてアーキシップス京都 古前極さんに伺いました。
お話を伺った建築家
京都府亀岡市呉服町13-1 0771-22-1303 |
20年以上、高気密高断熱の住宅を設計されてきたそうですね。ブログ「全館空調の考え方」では、施主さんから「リビングのエアコンだけで家中が涼しい」と言われて全館空調の仕組みに気づいたと書かれています。全館空調に取り組むようになったきっかけを教えてください。
参考:ブログ「全館空調の考え方」
はい、「眺めのいい窓」のお施主様より、リビングのエアコン一台で、広い家の中が十分快適になる、とお聞きしました。
熱交換型の換気扇による24時間換気と、断熱気密性能、効率のいいエアコンの組合わせで、冷暖房を効果的に住宅内で循環させることができるのでは、と考えました。
それ以前から、ほかの物件でも、真冬でも朝にエアコンをかけておけば、昼間時間帯はエアコン要らず、とお聞きしたことがありました。高気密高断熱と熱交換型の換気扇、直射日光を管理できれば、冷暖房効率のいい室内環境を作れる、と感じていました。
本格的に全館空調を導入したきっかけは、sunny sideのご依頼です。
sunny sideは、当時弊社と同じ建築家団体に所属しておられた横浜の設計事務所habitat Studio LLC様のご紹介でした。
お施主様のご家族が、同社にて全館空調住宅を建てられたご縁で、大阪のご両親の家も全館空調にしたい、とのご意向でした。
熱交換型の換気と冷暖房をひとつのシステムで動かすと、住み心地はどう変わりますか?施主さんから「高原みたい」「別荘に来たみたい」という声もあるそうですね。
全館空調住宅の新居にお引越しされたお施主様は、圧倒的な室内環境の良さを、実感できるそうです。
新築前のお施主様のお住まいは、マンションや木造住宅、鉄骨住宅など様々。いずれも24時間換気義務化以前、高気密高断熱住宅も一般的でない時期の住宅でした。
高気密高断熱以前の住宅は、部屋間の室温の偏りや温度の過不足など、住み心地に問題がありました。また家全体の換気扇数が少なく、エアコン・ヒーターの季節には室内の空気質の低下、結露やカビに悩む方もおられました。
全館空調の家は、高気密高断熱と24時間換気、熱交換型の換気扇で、室内への空気の出入りをコントロールし、一台のエアコンで温度調整して、屋内各所に供給されます。
新鮮な空気の流れがあるため、家の隅々まで、一定の温度に保たれます。
真夏に帰省されたご家族がお感じになった「高原の別荘みたい」という感想は、室内空気の質の良さと、全身を包む適温、屋内各所の室温の偏りのなさでしょう。
まるで家全体が高原のような、快適な環境下にあるように、感じられたようです。
床下やロフトに壁掛けエアコンを置いて家全体を冷暖房する方法と、ダクト方式の全館空調とでは、向いている家や暮らし方がどう違いますか?
床下やロフトに壁掛けエアコンを置いて家全体を冷暖房する方法も、慎重な間取り案と空調・換気計画、高気密高断熱が噛み合えば、効果を期待できると言われます。
ダクト方式は、熱交換と空気の流れを担う換気扇、温度調整するエアコン、両2台の機械を近くに置くので、専用の機械室を設置します。
点検やメンテナンスのために出入りするスペースも必要になります。
また給排気のダクトは直径が30cm近くになることもあるので、十分なパイプスペースを確保できる、延べ面積に余裕のある建物が向くでしょう。


「エアコンはつけっぱなしの方が省エネ」と言われますが、全館空調の家では、つけっぱなしで運転するのがよいのでしょうか?
弊社の手がけた全館空調の住宅では、春秋など冷暖房が不要の季節は、24時間換気として稼動するので、スイッチはつけっぱなしです。
いわゆる「エアコンはつけっぱなしの方が省エネ」かどうかという論争に関しては、住宅の断熱・気密性能によって正解は変わるのではないか、と考えます。
高気密高断熱・24時間換気・熱交換型換気扇が揃えば、エアコンつけっぱなしでも、エアコンにかかる負荷は少なくて済み、結果的に省エネを期待できそうです。
「竹林風洞の全館空調と日射遮蔽」のブログで、「夏の暑さの70%以上は窓から入ると言われる」と書かれています。全館空調の効果を高めるために、窓の配置や日射をさえぎる工夫をどうしていますか?
参考:ブログ「竹林風洞の全館空調と日射遮蔽」
弊社サイトをご訪問いただき、ありがとうございます。
全館空調の効果を高めるため、開口部の面積を減らし、扉や窓の気密性能を高めることが求められます。
具体的には、東西と北側の窓は極力小さく、窓は気密性能の高いものを採用します。
開放感を得られる大きな開口部は南側に集めて、冬の日射を取り込みます。
窓ガラスは方位により使い分け、窓には障子やカーテン、ブラインドを設置します。
庇や植栽、外用ブラインドで外部からの直達日射量をコントロールすることも、効果があると言われます。
梅雨や夏の蒸し暑い時期、全館空調で湿気はどこまでコントロールできますか?除湿のために工夫していることがあれば教えてください。
全館空調システム用の換気扇には、湿度調整を謳うものもあります。
弊社での採用実績はありませんが、お施主様から湿度の悩みを聞くこともありません。
全館空調のシームレスな温度変化と室内の適温維持が、結果的に湿度調整に役立っているのかも知れません。
人体から発生する水蒸気や料理・洗濯物など、室内では湿度が発生します。
トイレ・浴室・台所換気扇まで視野に入れた計画換気が、効果を発揮するようです。
夏は蒸し暑く冬は底冷えする京都の気候で、全館空調の家を建てるときに注意していることを教えてください。
夏は蒸し暑く冬は底冷えする京都の気候は、全館空調の効果を最も実感できる街の一つかも知れません。
全館空調の要諦は、C値1以下の高気密高断熱の建物、熱交換型換気扇、換気扇と直結するエアコン、無理なくダクトを通せるPSの確保です。
京都の街中では細長い敷地や、古家付き、段差のある敷地など、プランが難しい敷地もありますが、工夫できる余地が見つかるかも知れません。
『はなあふ家』は、C値0.48の24坪の平屋です。小さな家や平屋に全館空調を入れるときのポイントを教えてください。
参考:設計事例『はなあふ家』
平家の場合、機械室をどこに置くか、を検討します。
外部から新鮮空気を取り入れ易く、機械室を設置できるスペースがとれ、屋内の各所に給排気ダクトを配置できる箇所を探します。
木造住宅の場合、軸組が機械設置やダクトの位置に、壁の厚みがダクトの直径と、それぞれ干渉することがあります。
屋根の形状や勾配で機械室の空間を作るなどします。
小さな家の場合は高気密高断熱と熱交換型の換気扇、直達日射量のコントロール、換気経路の工夫で、全館空調にこだわらなくても、近い効果を得られることもあります。
敷地の方位や周辺環境を総合的に検討して、最適な空調システムを選択します。
『humming』は、足腰が弱ってきたご主人のために、主に1階だけで暮らせるように計画した家です。シニア世代が暮らす家で全館空調を採用するとき、浴室や脱衣所まで温度差をなくすために、設計でどんな工夫をしましたか?
参考:設計事例『humming』
真冬も真夏も、住宅の隅々まで一定の温度を保つ全館空調は、特にシニア世代が暮らす家として、注目を集めています。
全館空調の空調換気システムは、機械室で調整された適温の新鮮空気を各部屋に届けると共に、室内で汚れた空気を一箇所から排出します。
排気による空気の流れが新鮮空気を各所に運び、廊下やトイレ、洗面脱衣室など居室ではない空間まで、温度差をなくすことができます。
室内の表の空気の流れと、ダクト内の裏の空気の流れという二つの流れを作るので、構造等との取り合いに、工夫を要するところです。
『sunny side』では、吹き抜け上部のロフトに機械室を設け、シーリングファンと大きな排気グリルを使っています。機械室やグリルを、デザインを損なわずに納めるコツを教えてください。
参考:設計事例『sunny side』
機械室はメンテナンスや機械の入れ替えで、出入りできるスペースが必要です。
グリルの位置は天井面や壁面など、システムによって求められる場所が違います。
sunny sideの場合は、一箇所に大きなグリルが求められたので、吹き抜け天井の、化粧梁の間に設置しました。
壁面の場合は壁色と合わせたり、メンテナンスしやすい場所で、目立たないよう、お施主様と打ち合わせしながら位置を決めます。
全館空調の家を建てたいと考えている方に、アドバイスをお願いします。
たくさんの住宅を設計監理してきましたが、全館空調のお施主様の満足度は、それまでの高気密高断熱住宅より、一段、高いように感じます。
体温超えかという真夏の日に「外は暑いのですか?」と聞かれて、仰天したことがありました。隔絶した室内環境を作りたいなら、全館空調は自信を持ってお勧めできます。
一方で機械室やメンテナンスの経路、ダクトスペースなど、延べ面積に余裕がないと、実現できない場合があります。
空調換気システムの導入費用が、通常の機器より割高になる面もあります。
採用するメーカーによっては、年間保守契約を義務付けるところもあります。
コストに関しては、年間のエネルギー費が安くなるので、長い期間で見ると相殺されるようですが、新築時に余裕がないと選択しづらいかも知れません。
最近は高気密高断熱住宅に関する機器や設計技術が高まり、全館空調でなくても、質の高い室内環境を構築することが可能になりました。
30坪以下の高気密高断熱住宅なら、早めのエアコン稼働で室内の温度を一定に保ち、間取りに工夫をすれば、全館空調に近い効果も期待できます。
家を建てる人には、こだわりたいポイントがいくつかあると思います。
工事費の高騰で、実現したいことの優先順位が求められる時代です。
ご家族には、どんな家にしたいか、なにを実現したいか、実際に体験したり、経験者と顔を合わせて聞くなど、AIやネット情報の要約に頼らない、アナログな情報収集をお勧めします。
貴社に設計・監理を依頼できるエリアを教えてください。
設計監理の内容と関与の度合いによりますが、京都を中心に、協力事務所様が見つかれば全国の他地域、海外も対応しています。
東京や上海など、遠隔地でのご相談にも乗ってきました。
ご興味をお持ちいただいたら、遠慮なくお問合せください。
アーキシップス京都 古前極さんの全館空調・設計事例
| 画像 | 建物の名称 | 紹介文 |
|---|---|---|
| | 眺めのいい窓 | 外壁は吹き付けと外張りによる二重断熱、床下暖房、断熱サッシと断熱扉。 |
| | はなあふ家 | 芝の緑がまぶしい「はなあふ家」は、古家付きの土地を購入し、解体・新築した物件です。 |
| | sunny side | 3度目の家づくりで、完璧な環境づくりにチャレンジした80歳を超えたご夫妻。 |
| | humming | リタイアを視野に入れたご夫婦のための家。 |
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