安心して医療を受けられる居心地の良い医院併用住宅・時空間計画 田代輝久さん


 
医院併用住宅は実際そこに住んで医療を行っているという安心感を地域の人々に与えられるという強みがあります。
 
医院併用住宅について時空間計画 田代輝久さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー 時空間計画 田代輝久 の写真
名古屋市昭和区鶴舞4-1-22 キューブつるま1F
052-753-7773

 

貴社が医院併用住宅を手がけたきっかけがありましたら 教えて下さい。

 
私の妻が漢方内科のクリニックを開業しています。
以前は住居、妻のクリニック、夫の事務所、と三か所を別々に賃貸で借りて運営していましたが、長男の出産を機に一つの場所にまとめて、施設コストの圧縮と職住一体のコンパクトな暮らしへの転換を図りたいというところから計画を始めました。
 

医院併用住宅を建てる際に建築基準法上、注意する点がありましたら 教えてください。

 
有床の医院の場合、一般の建築に比べて耐火性能や避難施設などの規定が厳しく設定されていますが、無床の医院では一般の建築物の範囲で基準法に従って計画することになります。
また消防法上では、医院という特定用途が含まれる複合用途の防火対象物となりまして、医院部分だけでなく建物全体にかかってくる規制もあります。
 
他に医療関係の施設基準等もあり、保健所の指導を受けながら計画する必要もあります。
様々な制度的制限を与条件として満足させるだけにとどまらずに、デザインのヒントとして生かしていきたいというスタンスで設計に臨んでいます。
 

医院併用住宅はなにか優遇制度があるのでしょうか?
医院併用住宅とするメリットは何がありますか?

 
制度としての優遇は特にありません。
 
一般的に管理上の都合やコスト上のメリットなどから併用住宅を選択することが多いと思われがちです。
  
実際通勤時間がかからないことで時間に余裕が持てることや、特に私の妻の様に女医で子育てを両立させている場合に頻繁に行き来ができることで家事や育児との両立がしやすい面もあります。
ただそういった利便性ばかりでなく、実際そこに住んで医療を行っているという安心感を地域の人々に与えられるという強みがあると思います。
 
住宅が一緒にあることで医院に彩りを加えられる場合もあります。妻の趣味のガーデニングの為に駐車場を一台分つぶして花や野菜を栽培していますが、訪れる患者さん達にも好評ですし、うちで飼っている柴犬をエントランス付近に繋いでいると、患者さんのみならず道行く近所の人々も寄ってきて可愛いがってくれます。
 
そういった医師の人となりが表出して医院全体の雰囲気を作り、医療活動の助けになってくれる側面もあると思います。
 

医院併用住宅の間取りをつくる際に注意しているポイントを教えて下さい

 
建物の種類にかかわらずプランニングの際に重視することは、クライアントの思い描く空間と活動のイメージを対話を通して良く理解することです。
 
お聞きした話をもとに図を起こし、提案と議論を何度も重ねて提案を練り上げていきます。
図を描いて様々な角度から検討したり議論することで新しい発見もありますし、着手の際にはお互い想像もつかなかった様な案に収束することもよくあります。
 
医院として重視するポイントは、機能性や利便性の追及が必要なことは言うまでもありませんが、身体や心に不安を抱えて医院を訪れる患者さんたちに安心して医療を受けられる居心地の良い場を作ることも重視するというところです。
 

 
住宅としては、医院を経営する医師とその御家族が安全安心に暮らせる場をつくること。
プライバシーを守る環境作り、住まいが職場の延長ではなく気持ちが切り替えられる場となるような雰囲気作りなどです。
 
医院と住宅の関係として注意する点は、一つの建物としての外観のまとまりを図りながらも、できるだけ干渉しあわない個別の空間作りです。
アプローチの分離や騒音振動の干渉を最小限に抑えること等に配慮しています。
 

医院併用住宅は住宅ローンで建てる事ができるのでしょうか?

 
キューブつるまの場合は事業系の公庫からの融資を利用しました。
 

ハウスメーカーや建設会社とくらべて 貴社に医院併用住宅を依頼するメリットを教えて下さい

 
妻の医院経営の様子を日常的に間近で見ていることで、一般の建設関係者と比べると少しは医療の内情に明るく、開業を目指すクライアントのお話も理解しやすい面があるのではないかと思います。
設計者としては、単に対価を得て建物を建てるだけが目的ではなく、クライアントの事業や暮らしがよりよく実現できるためのお手伝いをするパートナーでありたいと考えています。
 
クライアントの頭の中にある思いを図面などで形にしていくのが私たちの仕事ですが、よくお話を伺い、できた図面をもとに話し合いを繰り返してより良いものに昇華させていく。
時には、潜在的な要望をくみ取って想像以上のものを提案し納得していただけるよう、提案と話し合いを繰り返し、設計案を詰めていきます。
 

キューブつるまの依頼者からはどのような要望がありましたか?

 
妻の開業する医院(名古屋市昭和区そらクリニックhttp://soraclinic.nagoya/)は、「つながる-こころとからだ-」がコンセプトで、精神と身体を一体にむすびついたものとして総合的に治療したいという医療方針を持った漢方内科です。
 
一般的な医療を行うスペースのほかに、ホメオパシーや鍼灸などの代替医療を行うスペースも設けること、制度上の制約から保険医療と自由診療のスペースの出入り口を別に設定できるような間取りを求められました。
 

その要望をどのように叶えましたか?

 
プランニングとしては、インナーテラスと名付けた空間を中心に据えて、受付、待合室、診察室、施術室、虹フロアと呼ばれる多目的室をコの字型に配置したプランにまとめました。
 
インナーテラスは用途を割り当てずに植栽を置くだけのガラス張りの部屋で、周りの部屋からの視覚上の広がりを持たせています。
また、入口から左右に保険診療と自由診療のスペースに分かれる配置とし、出入り口を別に設定できるような計画にまとめました。
 
デザイン上は、心身に不安を抱えた患者さんが、安心して診察施術を受けられるような空間造りに心がけました。
従来の医院建築は機能性や清潔さを求めるあまり、ややもすると冷たく恐怖心を感じさせる空間となるきらいがあったように感じます。
 
機能性や清潔さと同じ程度にぬくもりや安心感を感じさせる空間を目指しました。
木質系の仕上げを重点的に採用し、自作の家具なども製作して配置しました。
床暖房を採用したことも幸いし、温かみがあり、癒される空間が実現できました。
 
「病院じゃないみたい」と患者さん達に好評をいただいていますし、雰囲気に気圧されて子供さんが泣くことも全くありません。
 
妻のつながりで医療関係者に見学に来ていただく機会も良くありますので、名古屋近辺で開業をご検討中で見学ご希望の方は、御連絡くださればいつでも歓迎します。
 

 

キューブつるまはリノベーションのようですが 医院併用住宅の新築もやっていただけますか?

 
もちろん新築でも喜んで引き受けさせていただきます。
最近では古い医院併用住宅に隣接して住宅を新築する計画も設計しました。
 
改築は既存の建物の利用できるところを残して使うという制約があり割り切らないとならない点も多々あります。
一方新築は更地に建てるため自由度が高い様に見えますが、立地条件や気候風土に制約を受けます。
 
どちらの場合もそれに加えてクライアントの思い、予算、工期などが与条件となります。
与条件による制約がヒントとなって新たな形を生み出すという点については本質的に同様であると思います。
 

キューブつるまは用途変更などの手続きも必要だったのでしょうか?

 
建築指導課や消防署などの監督官庁との事前相談をした上で計画を進めました。
建築確認は床面積の増加がないことから不要でしたが、消防法上は医院として誘導灯や自動火災報知設備が必要となったため、消防署に計画届を出して完了検査も受けました。
 

医院併用住宅の土地購入前の相談にものっていただけますか?

 
土地購入前のご相談も歓迎します。
キューブつるまの場合も、この土地建物に決めるまでに、3件ほどのボリュームチェックとプラン作成をしています。
 
最初から改修ありきの計画ではなく、目星をつけた物件の利用計画を検討した結果、我々の望む場所づくりが改修で実現できるということが分かったうえで購入し、工事を始めました。
色々な可能性を検討した上で、思いを実現するのにふさわしい物件を選択することが良い結果につながると思いますので、できるだけ早い段階で相談していただきたいと思います。
 

医院併用住宅での開業をお考えの方になにかアドバイスがありましたらお願いします。

 
建築を計画する際に大切なことが三つあります。
知恵、手間ヒマ、資金です。
 
いずれかが全く欠けている場合計画は成立しませんが、いずれかが不足する場合は他の要素を強化することで補うことができます。
資金が足りなければ、時間をかけて安く施工してくれる業者を探したり、自分でできる部分は自分で作ればよいでしょう。

時間の制約が厳しければ、頭をひねって早くできる方法を見つけましょう。
そのためには多少常識を外れたことも許容できる柔軟な頭が必要になるかもしれません。
 
手間ヒマもかけられず新しい発想も受け入れられない方は潤沢な資金を用意してください。(笑)
 
答えはひとつではありませんが、建物はひとつしか作れません。
できた後で後悔する部分が少ないようにじっくりと余裕をもって計画に臨むようにしてください。
 
より良い答えを導き出すには相性の良い建築家をパートナーとして選ぶことが大切と考えます。
このサイトを通じて、話しやすくて相性の良い最良の建築家を探してください。
 

時空間計画 田代輝久さんの医院併用住宅・設計事例

  

画像 建物の名称 紹介文
キューブつるま

築26年の鉄骨造3階建の事務所ビルを、1階事務所、2階医院、3階住宅に改修しました。名古屋市の中心部に近い、閑静な住宅地に位置します。鉄骨造の長いスパンを生かして、自由な間取りが可能となりました。

 

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