土壁、通し貫を温存しながら古民家を再生・安藤建築設計工房 安藤政英

寒い、暗い、使いにくいという古民家を再生することによってさらなる時を刻むことができます。
 
古民家再生について安藤建築設計工房 安藤政英さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

  

ユーザー 安藤建築設計工房 安藤政英 の写真
上田市前山384-3
0268-39-5963

 

貴社が古民家再生を手がけたきっかけがありましたら教えて下さい

 
古いものが好きで、「伝統」というもののなかに長い時間を経て考えつくされた人々の知恵が詰まっているという魅力にひかれました。
 
伝統というと作法のように決まった形があるように考えがちですが、それは先人たちが長い時間をかけて経験を活かしながら築いてきた「形」があります。
 
その決まった「型」の中にあるパワーに引き付けられるのです。

古民家は故郷、地域の顔ともなって全国津々浦々違った表情を見せてくれています。

ところ変われば言葉も変わるように住まいもその地域地域で考えつくされて知恵があってできているのだと思うと底知れぬ魅力を感じます。

そんなこんなで長野県松本市のとある設計事務所に勤めていたのですが、木造を勉強したい、古民家についても勉強したいという気持ちから同じ市内にある「降幡建築設計事務所」の門をたたきました。

「古いものへのノスタルジー」だけではなく、未来への遺産として次の時代へ大切に繋いでいきたいと考えたからです。

古民家再生のメリット・デメリットを教えて下さい

メリットは家族の歴史が途絶えることなくこれからも連綿と続いていくだろうということ。

寒い、暗い、使いにくいという建物に手を加えることによってさらなる時を刻める。

材木は300年かかって強度が増すといわれます。100年越えの梁や柱はまだ生き生きとして十分使えます。

全て国産材100パーセント。土壁、無垢の建具、自然素材による究極のエコです。

デメリットは建物が大きいため工事は中途半端にできないことでしょうか。それなりのお金がかかってしまう。

古民家再生で注意しているポイントを教えて下さい

まずは屋根と基礎の状態を確認することです。雨漏りと白アリの被害状況で建物の保存状態(被害状況)がわかります。

再生工事の一丁目一番地がこの屋根、土台、基礎となります。

30年前に古民家の再生が注目されるようになった頃、工事の仕方が壁土を落として軽くした状態で持ち上げて基礎からやり直し、建築基準法でいう筋交いや合板で構造強度を上げ、仕上げは乾式工法で壁を作ってきました。

その頃土壁を落としてしまうことが「再生」と呼べるのかどうかだんだんと疑問に思い、以後なるべく土壁、通し貫を温存しながら、伝統工法で建てられた木造建築の「復元力特性」というものを意識しながら計画をするようになりました。

まだ手探り状態ですが限界耐力計算という考え方でないと伝統工法で建てられた日本の木造建築は残らないと考えます。

古民家再生の費用は新築に比べてどうなのでしょうか?

やりようによってですので「新築と比べて」といっても一概に答えにくいです。

どうしてもこの建物を残したいという住まい手の強い気持ちがあればいくらかかってもどうしてもやらねばならないと思いますし、あとは予算と相談しながら信頼できる設計者とどこまでやれるかを話し合いながらではないでしょうか。

よく施主から「この建物を残す価値があるのかどうか知りたい」と聞かれますが、それはご本人の意思次第ではないでしょうか。

ほとんど朽ちかけて壊すしかない建物も誰もが驚くものに再生した経験もあります。

予算を抑えてまあまあれくらいでいいかなと思えばそれなりの形に仕上げることもできます。これも住み手ご本人の住まいへの向かい方でしょうか。

補助金を利用して古民家再生することも可能ですか?

耐震化工事で補助金をもらうこともできます。
自治体によっては古民家を買ったり住んだりすることで補助金や助成金の出るところもあります。

古民家再生で間取りを変更することも可能でしょうか?

もちろん自由ですが、構造的な問題を無視してはできません。
あたりまえのことですが、力のかかるところに柱が建っています。

柱がある、壁がある、それらを利用しながらプランを作っていくのは難しいのですがそれが楽しい作業です。
制約の中の芸術です。

住まいの要望は100%お聞きしますが、構造的な問題については絶対譲れません。

「松本市 K邸古民家再生」で注意した点を教えてください

信州松本の古民家の特徴は「本棟造り」という妻側の大屋根を見せた形が多いのですが、その原型は平入りの玄関だったといわれます。

Kさんのお宅もその平入り玄関で背の高い平屋建て民家でした。

建物を拝見したときにご家族は一番端っこの狭い部屋で暮らしていました

住宅のプランニングにおいて家族の中心は建物の中心にというのが大原則です。

建物の中心になるところの和室2間をリビングダイニングキッチンとして大きな部屋に据え、そこから寝室や階段や玄関、茶の間へのアクセスができるプランとしました。

また背の高い平屋でしたので吹き抜けに梁を見せたりして明るく開放的な空間を作りました

家業はりんごの専業農家さんなので外庭から直接段差を低くした台所(土間)に入れたり、広めの勝手口などを用意しましたがたいへん喜ばれました。

リフォーム会社でなく貴社に古民家再生を依頼するメリットを教えて下さい

大手のリフォーム会社の仕事も拝見したことがありますが、結局傷や汚いところにべニアやクロスなどの新建材を張って「きれいに見せる」という工事では、まさに今までの一般的なリフォームと何も変わらないことに疑問を感じます。

「再生」とは昔あった素材をもう一度復元し、本来あるべき姿にもどしてあげるところからスタートするのではないでしょうか。

再生工事は汚れるし道具は傷むしで職人たちからすると敬遠されがちの仕事です。なんとか簡単に作りたいというのは人情でしょう。

職人たちの気持ちも理解しながら、住まい手の夢も実現しながら専門家としての客観的な視点でアドバイスできるのは建築家しかいないと思います。

古民家をカフェとして再生する仕事も引き受けていただけますか

もちろんできます。小さな建物でも古材を活用しながら落ち着いた空間を演出することも可能ですし、「古民家カフェ」というキーワードが最近流行っていますが100年も経ったような古民家とか庄屋さんの古民家だとか立派なものだけでなく、大正昭和の素朴で緩い建物でも安心してゆったり時間を過ごすことができる空間にすることくらでも可能です。

そんな建物は建築家とオーナーが一緒になって手作りで作ってしまってもおもしろいかと思います。

カフェだけでなく古民家を雑貨屋、古民家をピザ屋、古民家をゲストハウス等々セルフビルドのお手伝いもしています。

古民家を宿泊施設として再生する仕事も引き受けていただきますか?

もちろんできます。

今までの実績では

奥飛騨温泉「松宝苑」(降幡建築設計事務所)
同上「山ぼうし」
同上「槍見館」一部改修
同上「かつら木の郷」
平瀬温泉「藤助の湯ふじや」(降幡建築設計事務所)
白川郷「やまこし」(降幡建築設計事務所)
別所温泉「中松屋旅館」
濁河温泉「朝日館」

があります

古民家を再生したいと思っている方になにかアドバイスがありましたら 教えて下さい

古民家再生も現地再生、移築再生、一部再生等いろいろやり方はあろうかと思います。

古民家を見るときには建築家は医者のような気持ちです。
古い建物は歳をとって病気のようなものです。
どこが悪くてどこを直せば一番この患者にとって最善なのか。

経験豊富な建築家こそ住まい手のいいアドバイザーになろうかと思います。
まずはそんな建築士と出会うことが大切かと思います。

また、最近は市町村の「空き家情報」などで古民家がよく売りに出ているのですが、その後の改修費にかかる金額とか考えずに衝動買いをしてしまう方も多くみられます。
買う前にこれもまた経験ある建築家とよく相談してみてはいかがでしょうか。

これからの日本の社会、人口も減っていき、空き家はどんどん増えていきます。

最近の目に余る政治の酷さで若者の貧困率も7人に1人という状況に追い込まれています。
これからもますます若者たちにとっては家を持とうにもとても買えない時代へと向かうでしょう。

住宅雑誌に出てくるようなかっこいい建物だけが住宅ではありません。
お金をかけず自分らしい住まいや家族を築いていくためには古民家(古屋)の活用も本気で考えていかなくてはならない時代かと思います。

安藤建築設計工房 安藤政英さんの古民家再生設計事例

画像 建物の名称 紹介文
松本市 K邸古民家再生

軽井沢という冬の寒さ対策として深基礎の基礎断熱を取り入れた。古民家再生では難しい断熱もしっかり取り昔ながの町屋づくりを踏襲した。

小料理屋 「草如庵」

20年あまり使われていなくて半分雨漏りもするような古民家であったが、その分下手な改造が無く、素材をなるべく生かした建物とした。何も足さない、何も削らないのコンセプト。

2世帯で暮らす古民家再生住宅

古民家は土壁でできていてそれだけでも元祖自然派住宅。しかし、土壁の古民家はとても寒いので外側に断熱層をつくり、また屋根裏にもたんまり断熱材を仕込みました。2階を若夫婦の家族室として見晴らしと住まいやすさを重視して計画に取り組みました。

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