虹が立ち現れる左官壁|清瀬の家
親世帯の庭から見た外観。木のデッキは、2世帯をつなぐアイテムにもなっています。
建主は大手ゼネコン設計部。ビル建築では小さなパーツは金属系でつくります。木造住宅では金属を少なくし木でパーツをつくるので、木の狂いや反りなどを見込んだ設計は建主は慣れていません。彼のアイデアがつまったパーツを木で実現することが私たちに求められたことです。
依頼者は同じ大学・同じ研究室でお互いのデザインに対する考え方が共有できることから。
また、弊社設計の物件を見学に来て「任せられる」と思ったそうです。
施主は大手ゼネコン設計部。長年温めてきた基本プランを私たちに持ち込んできたところから始まりました。彼が描いた基本プランの平面図、実現したいコンセプトを守りつつ、木造で実現可能なディテールへの移行やコスト調整を加味して設計していくこととなりました。
場所は実家の敷地内。両親を見守ることのできる距離感で“終の棲家”を建てようという計画。法的には “敷地分割”をしつつも、物理的に仕切る必要はないので親側の敷地と一体使いをする計画です。
南北軸に大屋根をつくり、そこにトップライトを破線状に取るデザイン。夏の強い日差しを遮り冬の光をしっかり入れる勾配付きの木製ルーバーをはめ込んでいます。
角度付きのルーバーは弊社の提案ですが、そこにプリズムを仕込んで虹を映し出そうと考えたのはご本人です。原寸の模型を作り、私たちを説得してきました。
私たちは彼のアイデアに応えるべく、虹を映しだす珪藻土の壁に対して、水平に延びるこての引き方を左官屋さんにお願いしました。はたして、水平のこて跡だけを残し、通常ストロークの継ぎ目として出てしまう縦のこて跡を一切見せないという職人技の壁に仕上げてくれました。
トップライトとプリズムルーバーからの光と影、そして正午の1時間あまり発生する虹を、職人の手跡が感じられる土壁で受け止めています。
「東京郊外の自宅を設計してもらいました。10年以上温めていた様々なアイディアを、時折渋い顔をしながらも、辛抱強く図面にまとめ見事に実現してくれました。
住み始めて3年以上たっても、日々新しい発見がある住んで楽しい家に仕上がり、テレワークの時代にも期せずしてマッチしています。
学生時代からの友人ですが、夫婦それぞれの得意分野を生かしながら、何事にもまじめに真摯に対応してくれる設計室です。」
”光のあやとり“ とでもいうべき幾条もの光が、珪藻土の壁に正午あたりから、ゆっくり立ち現れてきます。そして、影をつくるルーバーは夏になるほどくっきりした影となり、冬は柔らかい影をつくりだします。季節感も感じる”あやとり”です。
1本で幅が1.8mある木製引戸。両側に引いてしまえば3.6mの幅で外のデッキ空間と一体化します。
虹が発生中のキッチン。
2階の書斎から吹抜けを望んだところ。左のタラップを上った先に月見台があります。
キッチン、書斎、月見台へのタラップ
月見台。
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