フロイデ彦島(ケアハウス、グループホーム、デイサービスステーション)

●設計事例の所在地: 
山口県下関市彦島
●面積(坪): 
1483.34
●建物の種類(大分類): 
医療・福祉施設
●メインの画像: 
●メイン画像の説明文: 

海側から望む外観
海に面した傾斜地に建ちます。当初クライアントは写真右側の平地で高層の建物を予想していましたが、景観や周辺住宅街(背後にあります)に配慮した低層建物を提案し了承いただきました。基礎構造で難工事となりましたが、この種の施設では稀に見る景観に調和した美しい建物になりました。
撮影:北嶋俊治

建てる前に依頼者が悩んでいた事・ご希望: 

敷地が海岸沿いの大変起伏に富んだ複雑な形状で、わたくし達がお仕事をいただく前に大手建設会社が検討した結果、最高所の平地に高層で建てる提案が出てきたそうです。「それでは周囲の隣接する住宅への影響や景観上好ましくない」と感じていたようです。また、敷地内にプライベートビーチがあり、絶好の条件を最大限生かすことができる設計者を求めていました。
この種の施設は「これまでどの高齢者施設も、いかにも施設的な建物が多く、高齢者やご家族が本当に良い空間で静かな時間を過ごしせる空間をつくりたい。」と、この地の高齢者福祉の牽引者としての依頼者の強い理想がありました。

依頼者があなたに依頼した決め手: 

一部の平地を最大限利用した、他社が作成した高層の基本構想案に対して、分棟化によって低層かつ敷地のポテンシャルを最大限に取り込んだ私どもの案に大変感激していただき、採用が決まりました。また、お声がけいただく前にわたくし達の設計した「ハートホーム平川」のオープニングに来ていただき、「この設計者なら素晴らしい建物を建ててくれる。」と感じたことから呼んでいただきました。

●建物の紹介文(依頼者のお悩み・ご希望を叶えるために工夫した点・採用した建材など): 

フロイデ彦島はグループホーム(18室2ユニット)とケア付き老人ホーム(個室48室6ユニット、内2室が夫婦対応)の居住施設に、地域施設(デイサービスセンター、地域交流スペース)を複合させた施設です。施設は起伏に富んだ傾斜地に建ち、高層化を避けるために2棟に分棟化して渡り廊下で結んだ構成になっています。私たちの工夫は、外出が少ない高齢者が都市のような穏やかな刺激を居ながらにして感じられるようにるすため、「見る、見られる関係」や「気配が伝わる構成」を重視し、平面構成において、3箇所の中庭からリビングを通して個室に至る二重の入れ子構造にしました。外観は、建物を周囲の住宅地に対して圧迫感のない低層とし、通風と採光に配慮した4つの特色ある中庭を設け、その中庭と共用室を赤い壁で取り囲み、その外壁に白い個室空間が取り巻く構成とした。中庭を透かして他の赤い壁の中にいる人の様子や話し声が伝わり、穿たれた開口を通して海の気配を感じ、どこにいても入居者が視覚的、心理的に人と自然の両方の気配が感じられる場が現出している。バルコニーの一部には白い布が張られ、外部に対して白い帆のように見え、人の住まいの在処を示しています。

2007年BCS賞(建築業協会賞)
2007年 医療福祉建築賞2007

依頼者の声: 

多くの建築賞に輝いた本施設は、身にあまるお褒めの言葉をいただきました。
まず「このような敷地にこんな建物が建つんですね。」といった驚きの言葉です。園芸やインテリアに大変センスのある依頼者でしたので、「家具や絵、小物のレイアウトや外部の造園が大変楽しい」と言って、竣工後大切に使っていただいています。行く度に思うのが、建築は依頼者が完成させるということです。竣工後何もない状態ではいくらでも良い写真は撮れますが、この建物は引き渡し後に、の依頼者の「使い方(住まい方の)のセンス」によって益々良い建物に成長していることから、いかに愛していただけているかがわかります。これは声にならない喜びの現れでもあります。

その他の画像: 

1階食堂です。
赤い壁は共用の領域と中庭を囲み、人々がハレの空間に入る領域を暗示しています。色の使用は大変勇気がいることですが、現場での度重なるサンプルチェックの結果レンガ系の赤(茶色に近いレンガの色です)で落ち着きました。中庭は3箇所かり、相互に屋内と屋外の視線がシンクロすることで、内部に居ながら外部のような感覚になると同時に自然の恩恵を受ける場所となります。吹き抜け部分と低い天井、中庭が複雑に貫入することで豊かな空間を作り出しています。
撮影:北嶋俊治

共用リビングです。
中庭に面したフルハイトサッシから光が降り注ぐ明るい空間です。特注のアイランドキッチンは家具を解放することで軽快に見せると同時に、椅子を使った作業(高齢者対応)も可能です。赤い壁は実はレンガ色です。実際は大変落ちつた赤煉瓦の印象です。
撮影:北嶋俊治

船のマストの素材でつくられたスクリーンを持つバルコニーベンチです。マンションなどの多くのバルコニーは「汚い場所に降りる」「わざわざ出る」感覚があります。私はバルコニーは用が無くても出たくなる場所であるべきと常に思っています。物干し以外に、段差なしでバルコニーと連続した居室から素足で出たくなる場所にしました。そのためには静かに佇めるベンチを提案し、外観は人の生活の所在を感じさせる装置となります。
撮影:北嶋俊治

共用リビング
数名の入居者ごとに1箇所用意した共用リビングです。お大きな建物ですが、住宅スケールの吹き抜けもそこかしこに用意されています。基準階といった繰り返しではなく、各住戸それぞれの空間の豊かさが必要です。上の階と下の階の気配が伝わり、コミュニケーションを誘発します。
撮影:北嶋俊治

個室内部
バルコニーは室内と連続させるべきであるといつも考えています。狭い部屋も広く感じられ、植物などを置けば室内にその変化が入り込み、季節のうつろいが感じられます。この写真でバルコニーと室内が連続した状態がよくわかります。
撮影:北嶋俊治

外観
各個室のバルコニーにヨットの帆の素材を使ったスクリーンがあります。バルコニー側はベンチになっています。海に近い施設をより印象深いものにしています。また、スクリーンのリズミカルな印象は複雑な建物形状に調和を与えています。

撮影:北嶋俊治

住戸の一つに設けた専用の中庭。
室内はそのまま外部に連続するようにしました。正面に木のルーバーを配置して外からの視線をカットし、現在はつる系植物が繁茂しています。小さな中庭を効果的に配置することは私どもが得意とする手法です。
撮影:北嶋俊治

住戸の一つに設けた和室。
村野藤吾による茶室の写しです。床と同面の広めの床に生花などを置くと空気が引き締まった上質の和空間となります。

撮影:北嶋俊治

デイサービスの機能回復訓練室です。大部屋とせず、大空間から小空間まで、必要に応じて複数の部屋を繋げることができるように可動間仕切りを設けています。海に面した回j後部は低い位置にベンチを設け、強風時も下から換気ができるようにしています。ここから入った風は中庭に抜けていきます。

撮影:北嶋俊治

デイサービスの浴室です。特殊浴槽も同様の低い間仕切りで隔てられ、プライバシーに配慮しつつ、介助者の使い勝手にも配慮しています。大きな窓から海が望めます。入浴を楽しみの時間にしていただく工夫です。

撮影:北嶋俊治

設計者

ユーザー 株式会社ヨシダデザインワークショップ 吉田明弘 の写真
オフライン
Last seen: 1週 19時間 前
登録日: 2015-03-16 14:11

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