●建物の紹介文(依頼者のお悩み・ご希望を叶えるために工夫した点・採用した建材など):
「心地よさ、自分らしさ」を強く求められていました。初期の打合せの中で出てきた話に、柳宗理がデザインした片手鍋の話があります。鍋の縁を歪ませるというちょっとした工夫が、調理における機能性を数段高めているという実例ですが、イメージの共有に大変役に立ちました。格好良さではなく、心地よさ、自分らしさを改めて考え直しました。老後のことも考えて、主な機能は全て1階にまとめ、2階は寝室と子供部屋(2室)、納戸をなるべくコンパクトにまとめました。旦那さんこだわりの屋外テラスも寝室に面して確保しています。1階はプライバシーを守りながらなるべく自然光を取り入れ明るく開放的な場とする為の工夫を凝らしました。LDKの両脇を光の溢れるスペースではさみこみ、自然光がやわらかく回り込んでくる空間としました。吹き抜けた玄関ホールは光に満たされ、透明な間仕切り越しに自然光がLDKを満たします。反対側の小さなスペースは、斜めの壁が自然光を受け止め、壁自体が発光しているかのような明るいスペースとなり、周囲に自然光を反射します。夜も心地よさが継続するよう、間接照明を上手く活用することで、やわらかい光に満たされた落ち着いた空間となっています。1階に水廻りがあることから、キッチン・食品庫・トイレ・サンルーム・浴室・ファミリークローゼットの家事動線がコンパクトにまとまっています。完成した住宅を振り返ると、施主さんらしさが随所に感じられる、最初に目指していた住宅ができたなという実感があります。施主さんと一緒に、粘って考え続けた、一緒につくってきたという実感があります。土地探しから随分時間はかかってしまいましたが、その分とても満足度の高い住宅が出来たと思っています。