住んでいることを人に自慢したくなるデザイナーズアパート・株式会社テコデザイン 小野徹哉さん
デザイナーズアパートは「お洒落な、格好いい」という点で、気分が上がったりステータスを感じたり、またそこに住んでいることを人に自慢したくなることがあります。
そのため入居者を獲得しやすいメリットがあります。
デザイナーズアパートについて株式会社テコデザイン 小野徹哉さんに伺いました。
デザイナーズアパートとはなんですか?
「デザイナーズアパート」について明確な規定があるわけではなく、単にデザイン性の高いお洒落なアパートをそう呼ぶ方もいらっしゃいますが、デザイナーや建築家などがこだわりを意識して設計したアパートと言われています。
個人的には、それに設計者の手仕事のあとが感じられるような、オリジナリティあるアパートという想いを持っています。
デザイナーズアパートのメリット・デメリットを教えて下さい
メリットと言えるのか分かりませんが、デザイナーズアパートの名を冠するだけに、「お洒落な、格好いい」という点で、気分が上がったりステータスを感じたり、またそこに住んでいることを人に自慢したくなることがあると思います。
また、それと同時に、設計者がこだわりを持って設計しているため、細やかな気配りや工夫が施されていることがあります。
デメリットとしては、プランやデザイン、使用する材料などに特徴を持たせるために、オーナー様にとっては建築費が、入居者にとっては家賃が、一般的なアパートより高くなる傾向があると思います。
(程度はまちまちですが)。
デザイナーズアパートの外観で注意している点を教えて下さい
まずは、オーナー様の好みもありますので、良く話し合いを行って決定します。決して勝手に決めるということはありません。
そして、外観はその街にどのように現れるか、周囲の環境を意識することも重要だと思います。
突然、あまりにも奇抜がカタチや色が出現しては環境を壊すことにもなりますので、必ず考えます。
また、あまりゴテゴテした外観は、構造的に弱いところを生む場合もあり、汚れが付きやすいとか、メンテナンス費用がかかるケースもありますので、オーナー様のご理解が欠かせません。
模様・色の特徴的なサイディングを選定しても、十数年後の塗り替え時には、そのパターンを塗りつぶすしかなく単調になってしまうこともあるので、そういった先のことも考えて提案しています。
デザイナーズアパートの間取りで注意している点を教えて下さい
アパート建築の場合は、不動産市場での価値を意識する必要が多分にあると思います。
つまり、地域性やトレンドもあることから、今回の需要がどうかということです。
弊社では入居者付けに強い管理会社の意見を参考にしながら間取りを考えます。
その上で、間取りについては考えることが非常に多いです。
敷地形状や道路付による採光や構造的なことで居室配置も変わってきますし、入居者のベッド配置なども想定して模様替えができたり、北枕にならないように配置できるかなども検討します。
また、最近は物件を内覧する前にネットで検索することがほとんどだと思いますので、何LDK、1K、ワンルームなどを意識し、不動産表示規約で決められた面積によってDKではなくLDK表記できるように設計の段階で様々に調整を行っています。
デザイナーズアパートの空調効果を高めるために工夫している点がありましたら教えて下さい
各室に空調を設置する(もしくは、できる)ことがほとんどだと思いますが、まずはやはり建物そのものの断熱・気密性能を上げて省エネとなる設計を行います。
過剰にすると事業性を圧迫することにも繋がりますので、地域特性を考えながら検討します。
開口部の配置や大きさも重要です。
中間期には空調を使わなくても風が抜けるようにすることも快適な住まいに繋がると思います。
デザイナーズアパートの建築費は一般的なアパートに比べて高いのでしょうか?
一般的なアパートの場合、メーカーなどで規格品として扱っているものもありますので、その場合、同一規格で工場で作ると実質価格を下げられることもあると思います。
一方、デザイナーズアパートでは、デザイナー、建築家のこだわりで一品生産を基本としていますので、高めになることが多いかもしれません。
しかし、それも工夫の仕方で変わります。
形状をシンプルにするとか、高くない素材を使いながらチープにならないデザインにするとか。
また、設計者は建築主様の代理人で、通常コストの調整も行いますから、必ずしもそうではないと信じています(笑)。
デザイナーズアパートの上下階の騒音対策はどうしていますか?
入居者同士のトラブルは(お互い気遣いや多少の寛容さがあれば違ってくると思うのですが)、オーナー様にとっては頭の痛い問題だと思います。
マンションですと、コンクリートスラブを打設することで重量衝撃音を伝えにくいなどメリットが大きいのですが、アパートは重い素材ばかりではないので重量衝撃音には弱い面があります。
ですので、ALCを敷いたり合板や石膏ボードを重ねたり、遮音材を多く入れたり検討します。
この上下階の騒音対策という意味でも、弊社でメゾネットタイプを多く設計しているのはそれが理由の一つです。
デザイナーズアパートの隣どうしの騒音対策はどうしていますか?
デザイナーズに限りませんが、隣同士の騒音対策として、界壁の仕様で遮音材や遮音シートなどをしっかりと盛り込むこと、天井内でもしっかりと隙間のないように施工することは肝心なことです。
また、せっかくきちんと施工しても、コンセントやスイッチなどで穴を開けてしまっては音漏れがして元も子もないので、そうならないように計画段階で配置を確認しています。
「デザイナーズアパートGiovanniⅠ,Ⅱ」の設計で工夫した点を教えてください
老朽建物を建て替えるにあたり、最大の戸数と面積を確保するために、各戸の間口を2,500mm(壁芯)という究極の幅でも、快適で美しいデザイナーズアパートを目指して設計しました。
プライベート感を演出するため、エントランスポーチや広さのある独立バルコニーを設け、各パーツの配置と光のデザインで夜景が印象的になるようにしました。
1階は寝室ですが、南に面したパウダールームは明るく清潔感ある水廻りと落ち着いた就寝スペースを備えています。
2階はLDKですが、幅が狭い分、確保できた奥行きを活用して、ダイニングスペースとリビングスペースを連続性のある形で空間を楽しめるように考えました。
また、北、南両面に開口を設けましたので、風通しも非常に良好です。
そして、階段の上下の三角スペースもWCや収納に無駄なく(アクロバティックに(笑))使いました。
駐車場も玉砂利とタマリュウをあしらうなどデザインしています。
↑デザイナーズアパートGiovanniⅠ,Ⅱ・平面図
↑デザイナーズアパートGiovanniⅠ,Ⅱ・立面図・断面図
「デザイナーズアパート Regalo」の設計で工夫した点を教えてください
三角形の土地であるため難しい部分もありましたが、日当たりや住戸数、駐車場など何パターンも検討して、建物を雁行させる配置とし、希望以上の戸数を入れて、オーナー様に大変喜んで頂きました。
黒い外壁材に赤いドアというご希望が最初からあり、雁行建物の形状と開口部、樋、換気口の配置を整然とした上で、アクセントカラーのドアをプライベートポーチに設けました。
1階は、広いLDKスペースで藤棚のある川や緑に面する借景を生かしています。玄関から丸見えにならないよう、コストに配慮してドアを省けるプランにしました。
2階も整形な寝室にプライベートバルコニーを設け、アルミ製のランダム格子でデザインとプライバシーの両立を図りました。
クローゼットは幅に比して奥行きがあるのですが、2段にできるハンガーを設置して、少しでも収納量を増やせるように工夫しました。
また、浴室にはスピーカーを設け、入浴中に音楽が聴けるようにしています。
↑デザイナーズアパート Regalo・1階平面図
↑デザイナーズアパート Regalo・2階平面図
↑デザイナーズアパート Regalo・断面図
「デザイナーズアパート LA LUX」の設計で工夫した点を教えてください
擁壁上の難しい土地ですが、仙台市と協議して市有通路となる階段からアプローチできることを確認して進めたプロジェクトです。
擁壁の上ということもあり、非常に見晴らしが良く、セキュリティ上もメリットあるデザイナーズアパートが建築できました。
1階は10.4帖大のLDKで広さを感じられるプランです。キッチンの面材と階段袖壁に、各戸ごとに違う近似色を用いています。階段も施工を工夫してオープン階段風にして下もモノが置けるように開放しました。
2階は7.6帖の寝室で階段上の空間も利用し、極力、収納量を確保しました。グッドデザイン賞を受賞した室内物干しや形状の美しい洗面ボウルを設置しています。
バルコニー壁面に有孔折板を透かし張りにし、オリジナルデザインのアクセントとしています。
外観上は壁が大半を占めていますが、実は両面及び階段上部から室内に光が降り注ぐデザイナーズアパートで、光を意味する「LA LUX(ラ・ルークス)」とオーナー様が名付けました。
↑デザイナーズアパート LA LUX・1階平面図
↑デザイナーズアパート LA LUX・2階平面図
↑デザイナーズアパート LA LUX・断面図
木造3階建共同住宅「アルベルーチェ八幡」・平面図・断面図
↑アルベルーチェ八幡・1階平面図
↑アルベルーチェ八幡・2階平面図
↑アルベルーチェ八幡・3階平面図
アルベルーチェ八幡・断面図
貴社の設計するアパートはメゾネットタイプが多いようですが、その理由を教えてください
1LDKのメゾネットタイプが多いのですが、まずはその立地での需要がどうかが大前提なので、それを一番に調査します。
その上で、メゾネットタイプは入居者が友人を呼ぶ時に、リビングスペースと寝室が階で分けられていてプライバシーの確保の点でのメリットが大きいことがあります。
先に述べた通り、上下階を自ら使うため、上下音での騒音トラブルの懸念がありません。
また、メゾネットタイプは建築基準法上の長屋に分類されるため、共同住宅に分類される形のアパートとは異なり、簡単にいうと共用廊下の幅や外部階段の構造・幅などといった規制がかかりません。
そのため敷地を有効活用できる可能性があります。
デザイナーズアパートを建てたい方にアドバイスがありましたらお願いします
建築はオーナー様と設計者が一緒になって創るもので、設計者の独りよがりでもいけないと思いますし、信頼関係の上に成り立つべきものだと思います。
事業収支、デザイン、耐久性、環境への配慮などバランスをとりながら、専門家としての役割を果たしてくれる信頼のおけるパートナーを是非とも見つけて、プロジェクトを成功させて頂きたいと思います。
貴社に設計監理を依頼できるエリアを教えてくださいお願いします
弊社は仙台市を拠点に業務を行っていますが、遠方の場合、交通費等諸経費はかかりますが、基本的に全国どこでも依頼があれば、ご期待に沿えるよう、誠意をもって対応しております。
株式会社テコデザイン 小野徹哉さんのデザイナーズアパート・設計事例
画像 | 建物の名称 | 紹介文 |
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木造3階建共同住宅「アルベルーチェ八幡」 | 今後競争が激しくなっていくであろう賃貸住宅市場で勝ち残るよう、質の高く魅力ある建物を目指しました。土地を有効活用するため、建物や駐車場は位置を検討し、コストパフォーマンスを高めるために木造3階建てとしました。 | |
デザイナーズアパートGiovanniⅠ,Ⅱ | 以前、弊社で設計監理したデザイナーズアパートの設計者を調べて頂き、ご依頼頂きました。 | |
デザイナーズアパート LA LUX | 擁壁上で、市有通路に面するという難しい敷地での計画でしたが、市と確認しながら進めました。 | |
デザイナーズアパート Regalo | 土地を有効活用するため、雁行プランの配置を検討し、オーナー様の想定以上の戸数を確保しました。同時に駐車台数も確保することができました。 |
デザイナーズアパート・メニュー
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