既存の仕上げや金具を活かす団地・中古マンションリノベーション・吉永建築デザインスタジオ一級建築士事務所 吉永健一さん

団地や中古マンションのリノベーションは、新築戸建てよりも予算を抑えながら理想の住まいを実現できる選択肢として注目されています。
耐力壁による間取りの制約や旧耐震基準への不安を感じる方も多いですが、実際には思われているほどハードルが高いわけではありません。
団地・中古マンションリノベーションを数多く手がける吉永建築デザインスタジオ一級建築士事務所 吉永健一さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー 吉永建築デザインスタジオ一級建築士事務所 吉永健一 の写真
大阪府高槻市芥川町1-2ローレルスクエア高槻B-901
072-683-6241

吉永さんが団地や中古マンションのリノベーションを手がけるようになったきっかけを教えてください。

 
マンションリノベーションを最初に乗掛けたのは、2004年に手掛けた「高槻の畳間のあるマンションリノベーション」です。
当時、土地を購入して新築戸建てを建てたいというご相談をよくいただいていましたが、ご予算の兼ね合いで実現に至るケースはほとんどありませんでした。
そうしたなか、マンションリノベーションであればご予算内に収まることが分かり、新築戸建ての代替案として積極的に手掛けるようになったのが始まりです。
 
2006年には「長岡京の団地SOHO」を手掛けました。当時、団地には老朽化や高齢化といったネガティブなイメージがありましたが、実際に訪れてみるとお子さんも多く、緑豊かな環境や風通しの良い間取り、丁寧なメンテナンスなど、現代の住宅地が忘れてしまった魅力的な住環境が整っていることに気づきました。
そこから団地リノベーションに本格的に力を入れるようになり、現在は分譲団地の購入サポートも行っています。

団地や中古マンションのリノベーションでは「壊せない壁」(耐力壁・壁式構造)が間取り変更の制約になると言われますが、実際どう付き合っていますか?

 
団地はもともと開放的な間取りが多いため、ほかのコンクリート系集合住宅に比べるとむしろ自由度が高く、設計に苦慮するような印象はありません。

昭和40〜50年代に建てられた団地は旧耐震基準のものも多いですが、耐震面の不安にはどう対応されていますか?

 
阪神・淡路大震災や東日本大震災においても、中層5階建てのいわゆる「団地」で、住めなくなるほどの壊滅的な被害を受けた物件はありませんでした。
壁が多いため、構造計算上の数値を上回る耐力の余力があるからだと言われています。
この点をお客さまに丁寧にご説明し、ご納得いただいております。

電気容量や配管など、古い団地・マンション特有のインフラの制限にはどう対応していますか?

 
定められた制限の範囲内で対応しています。
床暖房、IHクッキングヒーター、大容量エアコンなどを除けば、工夫次第で現代の生活に必要な設備を設えることはほぼ可能です。

「いい団地だからなおして暮らす」というコンセプトを大切にされているそうですが、既存の仕上げや金具をできるだけ活かす設計で意識していることを教えてください。

 
団地は無機質な工業製品のように捉えられがちですが、内装には職人の手仕事が活かされています。
既存の仕上げの中には、今同じものを職人に頼むと非常に高価になるものもあります。
また、金具やガラスなども、すでに廃番となって手に入らない貴重な素材が含まれています。
そうした価値を見極め、残すべきものを厳選しています。
また、価値の追求だけでなく、解体費用を削減するという実用的な面からも、既存部分を活かす計画をご提案しています。

団地オリジナルの趣(レトロな雰囲気)を残しながら、現代の暮らしやすさを両立させるための工夫を教えてください。

 
団地はもともと暮らしやすく設計されているため、現代の生活に合わせる場合でも大きく変える必要を感じたことはありません。
ただ、1点だけ挙げるとすれば「洗濯機置き場」です。当時はバルコニーに置く前提で作られていることが多いため、新たに室内に設置スペースを作る必要があります。
洗面所に十分な広さが確保できない場合は、廊下の収納スペースを活用したり、キッチンの隣に設置したりと柔軟に工夫しています。

吉永さんは「リノベーション」と「リペア」という言葉を使い分けていらっしゃいますが、この2つの違いを教えてください。

 
フルスケルトン(一度解体して骨組みだけの状態にすること)またはそれに近い状態で行う改装を「リノベーション」、なるべく解体せず、元の良さを活かしながら仕立て直す改装を「リペア」と定義して使い分けています。

お気に入りの靴や着物を丁寧に直しながら使い続けるような感覚で建物と向き合う、というお話が印象的でした。この考え方に至った経緯を教えてください。

 
弊社の客層の傾向かもしれませんが、改装前の部屋自体の魅力を気に入っている方が多いためです。
過去の住人が変更した間取りを、あえて「元の団地の伝統的な間取りに戻してほしい」とご希望されるお客さまもいらっしゃいます。

「高槻の畳間のあるマンションリノベーション」のように、あえて畳の空間を残したリノベーションではどんな工夫をされましたか?

 
限られたスペースに大きなソファを配置すると、インテリアのレイアウト自由度が下がり、空間に圧迫感が生まれてしまいます。
また、せっかくソファを置いても、結局はソファを背もたれにして床に直接座られる方が多いのが実情です。
それならば、最初から広々と寛げる「畳の間」にするご提案をしています。

団地でも「分譲」なら自由にリノベーションできるかというとそうでもなく、管理組合や規約によって制限の強さが結構違うと聞きます。物件を選ぶ段階で、リノベーションのしやすさをどう見極めていますか?

 
これまでの経験から、築年数と現地内覧時の状況を見れば、建築・設備面でどこまで改装が可能かが見極められます。また、外観からほかの住戸を観察することで、設備更新の自由度や導入しやすい設備を推測することも可能です。もちろん、管理規約や使用細則の確認も欠かしません。

UR賃貸住宅の中には「DIY型賃貸住宅」のように住まい手が手を入れられる制度がある物件もあると聞きますが、リノベーションを希望する方にそうした選択肢を提案することはありますか?

 
基本的にはありません。

これから団地・中古マンションのリノベーションを考えている方にアドバイスをお願いします。

 
物件の購入段階から検討されている方は、現地内覧の際に建築士やホームインスペクターに同行してもらい、構造上の問題がないか、希望通りの改装が可能かを事前に確認することをおすすめします。
また、管理状態を見極めるために、掲示板や自転車置き場などの共用部分もチェックしてみてください。
 
なお、新築や戸建てのリノベーションと比べると構造上の制限が多いため、「何を優先して暮らしたいか」をご家族間でしっかり話し合っておくことが大切です。

貴社に設計・監理を依頼できるエリアを教えてください。

 
大阪、京都、兵庫、滋賀を基本エリアとしています。その他のエリアにつきましても、出張費・交通費をご負担いただける場合はご対応可能です。

吉永建築デザインスタジオ一級建築士事務所 吉永健一さんのリノベーション・設計事例

 

画像 建物の名称 紹介文
長岡京の団地SOHO

風通しがよく開放的なオリジナルの間取りを活かしながら、工業デザイナーである施主の仕事内容や趣味の模型作りと料理、そしてなにげない日常生活を楽しめるように工夫を凝らした。 このインテリアのおおらかさ、やさしさ、あたたかさはこの団地の環境抜きには語ることはできません。

高槻の畳間のあるマンションリノベーション

80年代に建てられたコーポラティブマンションの一室のリノベーション。

より広くなったリビングには“ごろ寝”スペースとして減農薬の藁床・天然イグサの畳コーナーを設けた。一度腰を下ろすと気持ちがよすぎてなかなか立ち上がる気になれないと好評である。

竹の台団地の白い家

長岡京市、竹の台団地の改装です。自由でシンプルな暮らしを望まれるお客さんの生活哲学に合うようにしつらえました。取り除ける間仕切りは全て取り払い、使い方を限定しない大きなワンルームとしています。それに合わせ、壁と天井は白くフローリングは黒に統一しニュートラルな空間に仕上げています。

吹田山田のテラスハウスリノベーション

昭和50年代に建てられた店舗付テラスハウスリノベーション。

高倉台団地の暮しのハコ301

神戸市須磨区、高倉台団地の一室をDIYを交えながらリノベーションしました。住みながらつくり続けたいというお客様の希望にあわせ、あえて未完成の状態にとどめ後から手を入れやすいように仕上げました。

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