どんつきの家
昭和40年に建てられた、築年数52年の格安中古物件のリノベーションプロジェクト。
長く狭いアプローチの奥にある、閉鎖的な旗竿型の敷地に建つ木造2階建の住宅の周囲には、南側の僅な余白を残し、隣接建物がぴったりと囲んでいた。既存建物は、内部も小さく間仕切られ、昼間でも真っ暗に近い。また、幾度かにわたる改修や増築の跡も多く見られた。この継接ぎ感のある陰気で息苦しい室内を、明るく開放的な居住空間に整理するために、まずは、南面した既存開口部を最大限活かし、建物の奥まで採光を得るよう、適切な位置と大きさで吹抜けをつくるプランニングを行なった。さらに、解体中に湧いたもう一つの課題として、「どんつきの敷地」内にある「どんつきの部屋」の集合であることも、この住宅の計画上の問題点だと捉える。解消策は、終わらないシークエンスをつくることだ。部屋を抜けると部屋に出る、ぐるぐる回る、さらに進んだ「どんつき」の最終は、予備室を除き外部となるような見せ方を意識した。南側ファサードの土間に面した全ての掃き出しの開口を、建物へのアプローチとして捉え、1階のリビングからはじまった回遊性を、吹き抜けを介して2階にまで連続させるよう試みている。結果、2階の個室の建具にも可変性を持たせ、水回りを中心としたコア型のプランとなった。この、エンドレスなシーンを統合する一つのエレメントとして、構造的な要素としても働く2階の筒状の箱が、住宅の中心性を担っている。
思い返せば、この箱の位置が正確に決定したのも、工事が始まった後である。古い建物の改修では、工事を進めながら、その場に応じた柔軟な判断が必要だと考えている。被覆を剥がせば、その躯体にあらたな生命を感じることもある。既存建物の潜在的な価値をうまく利用し、未来に繋ぐことが建物の持続可能性を考える上で必要不可欠なことだと思う。しかし、造りながら考えていくプロセスが、制度上なかなか難しいことも実状の問題であろう。かと言って、簡単に安楽死させるわけにはいかない。
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