ニュータウンの中の小さな抵抗~竜ヶ崎の家
■ "竜ヶ崎の家"がこのニュータウンの中に建つ意味■
昭和52年に建設工事が始まった竜ヶ崎ニュータウンは、今回の敷地がある北竜台地区の事業がすでに完成し、今も龍ヶ岡地区の開発が進められている。
明らかに廻りとは異なったこの建築が、この場所でどんな意味を持つか考えた。
まず現地を訪れて、廻りに建つ分譲住宅の一群はどれも非個性的で訴えかけるものがなく、私にとっては寂しく映った。
確かに町並みも揃い整備されているが、決して美しくない。
新しく建ったこの建築が確かにこの町並みに合っているとは言えないが、このニュータウンの町並みが良いかというのも疑問である。
戦後から現在まで建ち続けた日本の家は、それまで暗黙の了解的でもあった手間をかけるという職人魂を廃した家になってしまったように思う。
そして量産性・経済性を重視した結果が、昔から存在した良き日本の町並みをも変えてしまったのであろう。
建築は本来、たくさんの人間が携わり、手間をかけてつくるものである。
そんな手間のかかる建築であるコンクリート打放しにこれからも挑戦していきたい。
"竜ヶ崎の家"は、この街に気持ちが強くこめられた住宅が建ち続けて欲しいとの想いを持って取組んだコンクリート打放しの箱なのである。
コンクリートという材料は二十世紀を代表する材料であるが、日本では施工技術はあるのに経済性に押された結果、
耐久性のある美しいコンクリートばかりかというと疑問が残る。
世間では環境問題が騒がれているが、これからは正にスクラップアンドビルドの時代ではない。
そういう意味でも、適切な施工をし、メンテナンスを施しながら、建物を大事に使っていく使命が建築に携わった人間たちにはあると思う。
私は、打放しという表現で "機能美を併せ持つ質素で豊かな空間"をつくるために、コンクリートという材料を使いたい。
"竜ヶ崎の家"のコンクリート打放しの壁が良いか悪いかは、個人の好み・価値観等により異なるため何とも言えないが、これから長い年月を静かに佇み無表情に主張し続けることを望む。
撮影:小林達実
コンクリート打放しの強い建築が建てたい!
建築だけではなく色々な話ができたこと
夫婦2人のために用意された"竜ヶ崎の家"は、閑静な住宅街である竜ヶ崎ニュータウンに建つ。
プライバシーを保ちながらの生活を確保するため、外部には閉じた無愛想な表情を持つが、内部にはプライベート空間である中庭を配し、大開口を確保した明るい空間が広がる。
1Fは、LDK・和の空間・浴室・洗面室・便所で構成され、2層の吹抜を持つリビングが中庭に面する。
リビングにはトップライトからの光がふり注ぎ、2Fへ続く階段部分を一層引き立てている。
2Fには、階段を上がるとフリースペースと名付けたホール的な空間があり、寝室・予備室、
そして屋外階段によりもう一つのプライベート空間である屋上へと導く。
色々な意味での素敵な家をありがとうございました。
これから末永くお付き合いの程どうぞよろしくお願い致します。
トップライトからの光
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