旗竿地でもレースのカーテンを閉めなくても良い家・アルファテクトアソシエイツ 青木 一成さん


 
旗竿地は土地の価格が周辺相場に比べ安い事が、お客様にとっては一番のメリットです。
総額の予算の中で土地の価格を抑えることが出来れば、その分建物本体や家具等に費用を掛けることも出来ます。
 
旗竿地についてアルファテクトアソシエイツ 青木 一成さんに伺いました
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー アルファテクトアソシエイツ 青木 一成 の写真
京都市中京区東洞院通押小路下ル船屋町403-303
075-708-5334

 

貴社が旗竿地の建物を手がけるようになったきっかけがありましたら教えて下さい

 
掲載事例は、あるコンペにて当社案をご採用頂いたことがきっかけです。
 
それまで「旗竿地」とは無縁でしたが、「採光」、「通風」、「プライバシー」という家づくりにおける3大要素を熟考する上で私自身にとりましてもとても良いきっかけとなった案件です。
 

旗竿地のメリットとは何ですか?

 
やはり、土地の価格が周辺相場に比べ安い事が、お客様にとっては一番のメリットかと思います。
総額の予算の中で土地の価格を抑えることが出来れば、その分建物本体や家具等に費用を掛けることも出来ますので。
 

旗竿地のデメリットを教えて下さい。

 
ほとんどの旗竿地は、四周を建物に囲まれておりますので採光、通風、眺望、プライバシー確保の問題など様々な諸条件を抱えています。
 
ただ、都心部での敷地の場合、旗竿地に限らず多かれ少なかれ同様の状況を抱えている敷地が多いものです。
それを「デメリット」と捉えるか、単なる「敷地条件」と捉えるかで家づくりへのモチベーションが変わるかと思われますのでデメリットとは捉えなくても良いのだと思っています。
 
唯一のデメリットとして考えられることは「工事費用」の面かと思われます。
竿部分の間口が重機が入らないような寸法や形状ですと資材搬入や施行面で、工事費がコストアップする可能性があります。
 
決して旗竿地一律のデメリットという訳ではなく、状況次第という内容ですが。
 
 

旗竿地の間取りで気をつけている点を教えて下さい。

 
私は、家づくりにおいては『レースのカーテンを閉めなくても良い家』ということを基本理念に常にクライアント様に提案を行っております。
“レースのカーテンを閉めなくても良い・・・”というのは、レースのカーテンでプライバシーを確保するのではなくプランニング上の工夫でレースのカーテンに頼らなくてもプライバシー確保が可能となる・・・ということです。
 
無論、全ての部屋が・・・というのはなかなか難しいものがありますので日中の生活の主体となる空間であるLDKを中心に、そのような状態を構築出来るようにご提案を差し上げています。
 
それは旗竿地の場合でも例外無く同様のスタンスです。
一概に旗竿地と言いましても、その広さや周辺環境により状況は大きく異なりますが得てしてプライバシー確保が難しい状況の敷地が多いかと思われます。
 
日中からレースのカーテンを閉め切り、周辺からの視線を気にしながらの生活は決して快適なものではありません。
 
せっかく家を建てられるのであれば心地良く過ごして頂けるように「レースのカーテンを閉めなくても良い家」となることを心掛けています。
やはり明るく且つプライバシーの確保が成されると、ゆったりと気持ち良い生活を送って頂けますので。
 

「shohji -二つの中庭を持つ、旗竿敷地の家」の設計で苦労したこと・工夫したことなどを教えて下さい。

 
旗部分の敷地のサイズが、約10m×12m程の決して広い敷地ではない上に四周は完全に建物で囲まれており、採光面で1階部分の生活環境は決して良い状況を創り出せそうもありませんでしたので、生活の主体となるLDKを2階に上げることを基本ベースとし、限られた敷地を「有効に使い切る」ことを念頭にプランニングを行いました。
 
「有効に使う」為に敷地を立体的に捉え、且つ「外部空間も重要な生活空間である」との考え方から外部空間と内部空間とを連動させつつ、その境界を曖昧にし敷地全体の中にそれらを立体的に配することで光を取り込みつつ、視線が伸びる伸びやかな空間を生み出し、且つプライバシーの守られた「レースのカーテン不要」の空間を実現しております。
 
大きくは以下の内容を組み込んで計画をしております。
 

【2つの中庭】

プライバシーと採光・通風を確保する為に、この限られた空間の中に2つの中庭を立体的に配し、外部空間との連携を図っています。
LDK空間はレースのカーテン無しの状態でサッシュを開け放していても完全にプライバシーが確保された状態を創り出しています。
 
2つの中庭という外部空間が、家の内部空間に大きなポテンシャルを生み出してくれています。
 

  

【境界の曖昧さ】

「境界の曖昧さ」を構築することで、実空間よりも広い感覚を得られるよう工夫しています。
 
具体的には、「造り付けのダイニングベンチ」、「2階中庭デッキ」、「スタディーコーナーテーブル」という、本来異なる機能、異なる高さに存在するモノを同じ材料で同じ高さで一続きのゾーンに構築し空間と機能の連続性を緩やかに創り出すことで、各々の箇所の境目を曖昧とし広がりを感じる状態を創り出しています。
 
言葉だけではなかなか想像が付かないですよね(笑)
 

 

【立体“離れ”の構築】

この家では、ご主人のご希望の「書斎」空間を“立体離れ”形式で2階に設けています。
生活空間から一度外に出てアプローチする、僅か1.5帖程のこの小さな「離れ」は、まるで茶室のような空間です。
 
従いまして、入り口は茶室の躙り口のごとくに小さな入口としていますが、内部は程良いサイズの空間となっています。
延床面積42坪程の住宅ですが、そこに日常と切り離された「離れ」空間を立体的に組み込み生活に変化を生み出しています。
 

 

【木造での2mのキャンティーレバー】

竿部分を駐車スペースとするには幅が狭い為、駐車スペースは旗部分まで入れ込んでいるのですが
その為空間の有効利用の為に、その上の2階部分を10m程に渡り、2mオーバーハングさせています。
 
ご覧になった方は皆さんが「鉄骨造ですか?」と聞かれるのですが、架構の工夫で木造で実現させております。
 

 

旗竿地にはなにか建築制限があるのでしょうか?

 
建築基準法上、建物を建てるには敷地が道路に2m以上接道している必要があります。
旗竿地は、この接道長さが2mから3m程度と狭いものが多いのですが通常の敷地と異なるのは、この接道長さにより建築基準法以外に、各都道府県や市町村による条例の規制が掛る場合が多いということです。
 
例えば、私が住んでおります京都市ですと、竿部分(路地状部分)の長さにより、その部分の必要な幅員も以下の通りの規制が掛ります。
 

路地状部分の長さ幅員
20メートル以内のとき2メートル
20メートルを超え35メートル以内のとき3メートル
35メートルを超えるとき4メートル

 
東京都の場合でも、路地状部分の長さが20m以下の場合は幅員2m以上、20mを超える場合は幅員3m以上となっています。
 
更に、耐火・準耐火建築物以外で延床面積が200㎡を超えるような場合には4m必要とされたり、4m未満の場合には3階建て以上の建物は不可であったり、路地状部分の幅員によっては共同住宅等の特殊建築物と言われる建物は不可・・・等、各地域により個別の規制が掛けられているのが実情です。
 
これは主に防災の見地から、条例により地域に即した規制が掛けられているということです。
従いまして、旗竿敷地を購入検討される方は、まずはその地域の条例を確認されてからご検討されることをお勧めします。
 

旗竿地の共同住宅なども設計していただけますか?

 
上記の通り、条例規制により共同住宅等の特殊建築物と言われるモノが建築不可となるような敷地条件のものでなければ設計はさせて頂きます。
共同住宅不可のエリアでも、重層長屋形式でしたら建築可能な場合もありますので、まずはお気軽にご相談頂ければと思います。
 

旗竿地に建物を建てたい方になにかアドバイスがあればお願いします。

これから敷地を購入される方は、前述の通り、まずは地域の条例の確認をされてから、ご自分の建築計画に合うかどうかのご判断をされる必要があります。
なかなか一般の方には分かり難い内容も出てくるかと思いますので、設計事務所等の専門家に依頼された方が安心かとは思います。
 
既に旗竿地を所有されている方、或いはその敷地の建物の建て替えを計画されている方も同様です。建築基準法や条例は改正されていっておりますので以前は建てられたものが、現在の条例では建築不可となる場合も珍しくありません。
事前の確認が重要です。
 
一律に「旗竿地」と言いましても、その状況によりまして条件は千差万別です。
どのような敷地でも様々なメリット・デメリットが存在するのですから、「所詮旗竿地だから・・・」とマイナス方向に捉えるのではなくその特徴をどのように活用していくか?という思考に転換されることをお勧めします。
 
設計事務所は、その特徴を的確に捉え、的確に展開していける集団だと自負しておりますのでご相談されてみては如何かと思います。
きっと想像以上の回答を得られるものと思います。
 

アルファテクトアソシエイツ 青木 一成さんの旗竿地設計事例

   

画像 建物の名称 紹介文
shohji -二つの中庭を持つ、旗竿敷地の家-

限られた敷地の中で、2つの外部空間を立体的に組み込み、内部空間との連続性により実空間よりも広がりを感じる建物となっています。

 

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