段差地にビルトインガレージのある家
敷地に段差がある場合、フラットに整地しようとすれば多額の費用がかかります。
しかし、間取りを工夫して建物の一部にガレージを設けることで、かえって段差地を有効活用できます。
段差地を上手に利用して半地下式のビルトインガレージを設けたK様邸について、設計した林泰介さんにお話を伺いました。
三方を取り巻く道路が下り勾配
K様邸の敷地は、隣家と接する東側を除いて道路に囲まれていました。
しかも、北側から西側、南側へと下り勾配になっています。
加えて、K様のご希望の一つが、車3台が入れる駐車場が欲しいということでした。
敷地を見てまず、南側は庭にしたいと考えたそうです。
しかし、庭をつくったうえで3台収納の平面駐車場にするのでは、せっかくの広い敷地が窮屈になってしまいます。
その問題を解消したのが、半地下式のガレージでした。
実は、コンペで決まった設計なのですが、他の提案はすべて平面に縦列駐車するスタイルだったそうです。
「僕にとっては、この案しか考えられなかったですね」
と林さん。
高低差だけではガレージの高さを確保できないため、1階を60センチ高くする工夫も施し、ガレージの高さは190センチを確保できました。
建物強度を確保するため、入り口は2台分と1台分に分かれていますが、内部はつながっています。
また、駐車スペース両側は物置にして、半地下空間を有効活用しています。
奇抜に見えてシンプルなプラン
K様宅は奥様とお子様2人の4人家族。
最初は林さんの提案は外されたそうです。というのも、敷地形状に合わせて西側を半円アールのデザインにしたためです。
しかし、検討を重ねるにつれ、一見奇抜なのにシンプルなプランが次第に存在感を増していったといいます。
「それこそ、私のモットーなのです」
と林さん。
「プランはシンプルに、内容はややこしく」
と言うのです。
「シンプルな方が、住む方は使いやすいでしょ。また、K様邸のように、形が一風変わっているとゴチャゴチャして見えるので、プランはシンプルな方が、バランスがとれます」
来客と家族の動線を分ける
工夫したのが、公私を分けた間取り配置と動線です。
ガレージからは屋内階段で直接玄関に入れます。
これも半地下式のメリットですが、そこで来客用と家族用の動線が分かれるのです。
家族は玄関わきのシューズクローゼットからダイニングキッチンに入れます。
このため、玄関に家族の靴が置きっぱなしになることはありません。
また、子どもへやや寝室などのプライベートスペースはすべて2階に配置しています。
一方、来客はすっきりした玄関から正面のリビングにまっすぐ入れるようになっています。
リビングとダイニングキッチンはL字型に配し、どちらからもお庭が見えるようにしています。
目を引くのが、1階から2階への階段です。
仕切りを開けておけば、リビングから見えるコンクリート打ちっぱなしの階段が、シンプルなリビングのちょうどいいアクセントになっているのです。
奥様お気に入りのキッチン
分けられたのは来客と家族の動線だけではありません。
ダイニングキッチンは奥様、リビングとリビングに隣接する書斎はK様と、それぞれが自分のゾーンを持てるようにしてあります。
奥様は、何度も打ち合わせを重ねたダイニングキッチンについて、いつお会いしても「本当に使いやすい」と言ってくださるそうです。
ポイントの一つは、アイランド式の調理台。
ここにはシンクがあるだけで、コンロは壁側に設置しました。
このため、アイランドの上に換気フードがなくて広々としているうえ、アイランドを作業台として存分に使えるのです。
もう一つが、愛犬のための足洗い場を含む水回りをキッチンの後ろ側に配置したことです。
これで、キッチンとダイニングがとてもすっきりし、収納スペースもいっぱいとれるようになりました。
K様も、リビングをシンプルにすることがお望みでした。
このため、R状の壁に沿った収納もテレビ台も作り付けにしています。
ビルトインガレージのメリット
何といっても、車で建物内に入ることができ、そのまま外に出ることなく家の中に入れることです。
逆に言えば、玄関につながらないと意味がありません。
雨に濡れる心配がありませんし、荷物の出し入れにも便利です。
また、シャッターを設ければ、いたずらや盗難の恐れもありません。
さらに、敷地の有効活用ができ、間取りの自由度もアップします。
K様邸もガレージの上はリビングと書斎、トイレ、2階への階段などが配置できました。
ビルトインガレージのデメリット
コストがかさむのは避けられません。
半地下にすると、湿気対策として換気が必要ですし、雨水が入らないよう傾斜を工夫しなければなりません。
また、どうしても階段が増えてしまいますので、お年寄りや障害を持った方が家族におられると、つらい構造になります。
ガレージの床材、シャッター
ガレージはコンクリートの打ちっぱなしですが、床はオイル漏れなどで汚れやすいので、撥水剤を施して、汚れが落ちやすくしました。
シャッターは、シャッターボックスが不要でデザイン的にもすっきりしたオーバースライダーを採用。
スチール製ですが、付近の住環境に合わせて高級感のあるものにしています。
住む人が生涯楽しめる家づくり
林さんは
「100点の家を作ったらだめ」
と考えています。
余地を残しておかないと、家に合わせた暮らしをしなければならず、それは疲れるものだからです。
実は、K様は当初、庭をつくることに乗り気ではありませんでした。
植栽すると、その手入れなどが大変だという理由からです。
ところが今では、
「いい芝刈り機を買った」
とおっしゃるほど、お庭のメンテナンスに打ち込んでおられます。
家は建てるまでは楽しいものですが、完成すると不満が出てくるものです。
ところが、住む人がライフスタイルに合わせてつくっていくものだと考えると、違ったものになります。
林さんは
「未完成の方が生涯にわたって楽しめると思うのです」
と話します。
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