YKK健康管理センター(診療所)

●設計事例の所在地: 
富山県黒部市
●面積(坪): 
296
●建物の種類(大分類): 
医療・福祉施設
●メインの画像: 
●メイン画像の説明文: 

森側外観
診療室の大きな開口に対してプライバシーを守るための装置として、木製スクリーンがあります。杉板を交互に弓なりに貼った板塀は、正面から内部は見えませんが、斜めに見ると撓んだ板の間に隙間があり風を通します。片流れの白い屋根は部屋の要所に配置され、内部に光を届けると同時に、外観にリズムを与えています。今は内外が森に覆われています。

撮影:吉田明弘

建てる前に依頼者が悩んでいた事・ご希望: 

敷地を森に再生するプロジェクトの中にあり、診療所機能というプライバシーが尊重される空間に対して、森の存在をどのように共存させて行くかが大きなテーマでした。また、年月とともに森に覆われ、建物自体がそれに合わせて魅力が増していくような仕上げやデザインが求められました。

依頼者があなたに依頼した決め手: 

以前から同じ企業の施設を私どもが設計し、建築賞など社会的な評価をいただいてまいりましたことに対して、大変信頼していただいております。そのことから、引き続きご依頼いただきまました。
わたくし達は、良い仕事に対してその後2度3度お仕事をいただくことがよくあります。

●建物の紹介文(依頼者のお悩み・ご希望を叶えるために工夫した点・採用した建材など): 

富山県黒部市にある企業診療所です。
地球環境への貢献として、何もない工場跡地に苗木から育てた木を植樹し、地域の本来の自然の姿である森を復元する広大な緑地(一部はYKKセンターパークとして一般公開)の中にこの建物は建っています。建物の西側に芝生による広大なオープンスペースを設け、「森」との境界線となる北から東にL型に連なる壁面を施設の壁面とすることでランドスケープと一体化された建築となることを意図しました。外壁面は時間と共に雑草が生えて錆びていく(自然と同化する)事を意図したRCラス捨て型枠打放しによる荒々しい仕上げ面で構成し、一方屋根面は内部機能を反映した凸形状を持つ白くて薄い板として軽快に浮かばせ、両者の隙間から採光をとることで、軽快で印象的な内部空間を作り出しました。
 このプロジェクトでは森の中に建築を建てるのではなく、建築のまわりが将来森となり、建物が森の中に埋没する。と言った数十年に及ぶ長い時間軸を想定してランドスケープを含めた建築デザインを考えていきました。この施設の機能である診療所という性格上から、芝生広場に対しては閉じ、一方、背後の森に対しては開いた表情となっています。一般に診療室はプライバシーの問題から外が見えない造りとなりますが、ここでは積極的に患者に自然を見せることによる心理的な効果「緑が望める病室では患者の治りが早い」(※Ulrichの調査)をテーマとして、診療室で医師の診断を受ける時に視界に樹々の緑が入るよう大開口としました。プライバシーへの配慮として、診察室の外部に森を杉を編んだ塀で仕切ることで安心して診察が受けられるようにしました。
 「壊さない時代」を迎えていますが、我々建築家はとかく長寿命化のための技術的な側面に着目しがちです。建築が周辺の環境も含めた時間の中で年老いても環境に調和して生きながらえ、更に一番大切な事はそんな中でもある種の新鮮さを失わない事、は今後私たちが考えて行くべき課題であると考えています。

 ここで試みた、光と影、自然建築の関係、などの普遍的なテーマは住宅にこそ発揮されるものと考えています。待合室や診療室はそのままリビングに置き換えることが可能です。

2008年度グッドデザイン賞、2010年日本建築学会作品選奨 、第8回環境・設備デザイン賞入賞作品

※Roger,S.Ulrich,1984,View through a win-dow may influence recovery from surgery,Science, 224:420-421(April 27)

依頼者の声: 

依頼者からは多くのお褒めをいただきました。
「森との調和と診療室への緑の導入はこの種の医療施設としては革新的です。」
「時間とともに味わいを増すメタルラス打ち放しの外観の今後が楽しみです。」
「多くの建築賞を受賞し、大変誇りに感じています。」
「内部で隙間から漏れる光が神聖な感じがして好きです。」
など、竣工後にご担当されていた方や、働いている方から大変うれしいご意見をいただきています。

その他の画像: 

入り口正面
メッシュ型枠による独特の外観。我々が開発した新しい仕上げで、時が経つと錆が浮き出て建物の外壁を赤茶に染めていきます。時間の経過とともに味わいが増す仕上げです。
薄くて白い屋根はわずかに壁から切り離されて浮いています。隙間から光が入り室内に光と影の空間を作り出します。

撮影:北嶋俊治

待合室
施設の機能上低い位置に大きな開口はつくれませんが、計算された屋根の隙間に設けた開口から教会のような印象的な光が入る空間です。開口と柱のコンポジションには「和」的な感覚を意識しています。

撮影:北嶋俊治

歯科診療室
将来は正面が森となり、プライバシーが保たれた空間です。緑を見ながら治療を受けることができます。片流れの屋根を要所に配置することで空間に陰影が生まれ、空間に変化を与えています。半透明のパーティションも空間を閉鎖的に感じさせないようにデザインいたしました。

撮影:北嶋俊治

診察室
片流れ屋根による大きな開口のある診療室です。通常診療室は閉鎖的な造りが一般的ですが、ここでは緑を見ながら治療をすることで回復が早くなる効果を期待しています。将来は窓の外は森で覆われます。このような手法は、壁面緑化スクリーンなどの手法を応用すれば都市部でも可能です。

撮影:北嶋俊治

職員休憩室
メッシュ型枠による外壁が室内に貫入しています。屋根の形状と壁が織りなす光の絶妙な制御はどこか和的な印象を与えます。季節や日の角度によって空間の印象が変わる「光と影」は、私どものデザインテーマとなっております。

撮影:吉田明弘

設計者

ユーザー 株式会社ヨシダデザインワークショップ 吉田明弘 の写真
オフライン
Last seen: 8ヶ月 1週 前
登録日: 2015-03-16 14:11

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