住宅密集地の家の採光を明かり床で確保

畳の小上がり

住宅密集地では隣家が迫っているため、窓の位置や大きさも制約を受けやすく、室内は暗くなりがちです。
解決する一つの策が、天窓から入り込む光を階下に通す明かり床です。
3階に明かり床を採用して、2階のダイニングキッチンの採光をしっかり確保したO様邸について、設計した増田健次さんにお話を伺いました。

お話を伺った建築家

 

ユーザー 増田建築研究所 増田健次 の写真
大阪市福島区福島3-1-39
06-6451-8186

 

外観

3方に隣家が近接した密集地

 
O様邸は東西約14メートル、南北約5.2メートルの長方形の敷地で、西側が幅約6メートルの市道に面しています。
1年以上かけて奥様の実家近くにようやく見つけた土地でした。
しかし、残り3方は、隣家が境界線から30数センチというぎりぎりに建っていました。
しかも、南北のお家はどちらも3階建て。さらに、駐車スペースが欲しいというO様の要望をかなえるには、1フロア当たりの建築面積が40平方メートルを切ることになります。
 

明かり床

2階にリビングとダイニングキッチン

 
O様宅はご夫婦と子供1人の3人家族。必要な部屋数やリビングの広さなどを考えて、増田さんがまず提案したのが3階建て住宅です。
そのうえで、リビングとダイニングキッチンの共用スペースを2階に配置することにしました。
1階は和室と納戸、バス・洗面所とトイレ。3階はプライベートゾーンで、夫婦の寝室と子供部屋、ご主人の書斎とウオークインクローゼットなどです。
 
2階は唯一開けた西側にリビングをつくり、建物幅全面にバルコニーを設けました。
しかも、バルコニー側は全面窓にしたうえ、バルコニーの屋根にも天窓をつくったため、採光は十分です。
 
ところが、奥のダイニングキッチンまでは、その光も届きません。
奥様は、カウンターキッチンにして朝食は向かい側に座って摂りたいというご希望も持っておられました。
ここに何とか自然の光を取り込みたいと考えたのが、明かり床です。
 

キッチン

明かり床で2階のキッチンにも日差しが

 
3階廊下部分に設けた明かり床は、難燃性で光透過率90%というポリカーボネート製で、長さ約1.3メートル、幅約80センチ。
廊下と階段の真上に設けた大きな天窓から入った自然光は、明かり床を通して、2階の朝食スペースに降り注ぎ、朝食時にも照明はいりません。
 
さらに、3階建てにして光が入りやすくしたため、温まった室内に上昇気流が生じて、洗濯物が乾きやすいというメリットがあると、増田さんは指摘します。
夏場には天窓を開放することで、室内にこもった熱気を放出することもできます。
 
明かり床の唯一と言っていいデメリットは、厚みがないと重みでたわむことです。
しかし、ポリカーボネートは一般的なガラスの200倍以上の強度があるうえ、O様邸では厚みが約10センチあるものを使っているため強度は十分。違和感なく歩けます。
 

バルコニー

2階リビングは部屋を広くできる

 
リビングを2階に配置することのメリットはほかにもあります。
1階だと建物全体の荷重がかかるため、柱や壁を多くして耐荷重性を高めなければなりませんが、2階だと壁を少なくして、部屋を広くすることができるのです。
 
くつろぎの場であるリビングが外から見えにくくなるという効果もありますが、増田さんはそれに加えて、バルコニーに高さ1.6メートルのスリット入りのフェンスを設けました。
これが、通気はありながら外から室内を遮る役目を果たし、夜はスリットから漏れる室内の明かりが、和のたたずまいを醸し出しています。

増田さんはこれまでに手がけた住宅でも2階リビングを採用しており、
「2階リビングのデメリットといえば、階段の上り下りくらいですが、O様はご夫婦ともまだお若いので、かなり長い間問題なく住んでいただけます」
と話します。
 
 

立面図

↑小さな窓が並んだ立面
 

窓を小さくして準防火地域の規制をクリア

 
住宅密集地に家を建てる際に気を付けなければならないのは、窓の位置と大きさです。
隣家との間が非常に狭いので、隣家と窓が向き合う形になると開けることもできません。
このため増田さんは、事前にきっちり南北の隣家の窓の位置と形状を測って、それとずらすような位置に小さめの窓を多くつくりました。
 
窓を小さくすることには、もう一つ大きな利点があります。
実は、奥様は土地探しの合間に、増田さんが手がけた多くの住宅を見学して回りました。
そこで気に入ったのが、古民家のように柱や梁を見えるようにする構造です。
 
ところが、O様邸は準防火地域になっています。
準防火地域では準耐火構造が必要で、一般的に柱や梁は壁や天井で隠すようにしなければならないのです。
 
しかし、特例があります。
それが、窓を小さくすることだったのです。
増田さんは、壁面積に対する窓の大きさをち密に計算して、奥様ご希望の焦げ茶色の柱や梁を見えるようにする構造を実現したのです。
 

小上がり

↑畳の小上がり
 

リビングに畳の小上がり、収納も十分

 
リビングにはさらに工夫を凝らしています。
O様の希望に沿って、畳敷きの小上がりを作ったのです。
35センチの高さを確保したため、中央は掘りごたつ式にし、夕食はここでゆっくり摂れるようにしました。
夕食後は横になってくつろぐこともできます。
 
さらに、畳の下は収納として使えます。
実は、敷地面積が狭いにもかかわらず、O様邸には収納スペースがとても多いのに驚かされます。
1階の納戸や3階のウオークインクローゼット、階段下収納は言うまでもなく、和室と主寝室・子供部屋の押し入れのほか、3階の階段室の一部はタンスもおける広さですし、子ども部屋にはロフトがあって収納スペースになっています。
 

外から壁工事ができないときは?

 
狭小地に住宅を建てる際に困るのが、隣家との間が狭すぎて、外側から壁の施工ができないときです。
O様邸は何とか外からの工事が可能でしたが、増田さんが手がけた物件の中にはそんな住宅がありました。
 
解決策の一つが、柱の間に鉄鋼版をはめ込んで上から落としていく工法です。
これなら内側から壁を作れます。
費用も外から行うのとあまり変わらないそうです。
 
ただし、難点は横長の鉄鋼版を使うため、強度が弱くなること。
増田さんは「工夫のしがいがありますが、あまり板を細長くすると建物としての限界に近づくので、ち密な構造計算が必要です」と話しています。
 

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