車椅子での暮らしを考えるとき、多くの方はまず段差や廊下幅、トイレや浴室などの動線を思い浮かべます。
しかし、実は意外と見落とされがちなのが「収納の問題」です。
収納の配置や高さ、開閉方式を誤ると、毎日の暮らしが不便になり、介助者の負担も大きくなります。
ここでは、車椅子生活ならではの収納に関する落とし穴と、その解決策をお伝えします。
1. 使いたいものに「手が届かない」
車椅子生活では、立って使うことを前提にした収納が使いづらいケースが多くあります。
キッチンの吊り戸棚や高いクローゼット棚、洗面所の上部収納など、立位で使う設計になっている場所は特に不便です。
よくある失敗例
吊り戸棚に食器を収納 → 車椅子からは届かない
クローゼットの上段がデッドスペースに
洗面台下の収納が奥まって使いにくい
対策
使用頻度の高いものは 床から70〜120cm の範囲に配置
引き出し式収納やスライド棚で奥の物も取りやすくする
高い位置の収納は、昇降式の吊り戸棚や簡易的な可動ラックで解決
2. 車椅子の動線をふさぐ収納
収納家具やクローゼットの扉が、車椅子の動きに干渉するケースも多く見られます。
特に引き戸ではなく開き戸の場合、扉を開けると車椅子のスペースが奪われ、収納自体が使いにくくなることがあります。
よくある失敗例
廊下に設置した収納棚が通行幅を狭めてしまう
クローゼットの開き戸が回転半径に干渉
洗面所の収納扉を開けると車椅子が入れない
対策
クローゼットや収納の扉は引き戸や折れ戸に変更
廊下収納は奥行きを30〜40cm程度に抑える
洗面所や脱衣室では、収納扉よりも引き出し式収納が有効
3. 介助者との「使い勝手のズレ」
収納計画では、車椅子を使うご本人だけでなく、介助者の動線も重要です。
介助する家族が立ち位置を変えるたびに収納扉と干渉したり、モノを出し入れするたびに移動が必要になると、お互いにストレスが増えます。
よくある失敗例
ベッド横の収納が車椅子と介助者で取り合いになる
キッチンで車椅子と介助者がすれ違えない
洗面所での収納が高すぎて、結局介助者しか使えない
対策
「本人が使う収納」「介助者が使う収納」を分けて設計
収納扉の開閉方向を動線と逆に配置する
介助動作を想定した生活シミュレーションを実施する
4. 将来の生活変化を見据えた収納計画
お子さんが成長するにつれ、車椅子のサイズや収納する物の種類は変化します。
「今はこれで大丈夫」でも、数年後には使いにくくなる可能性が高いのです。
ポイント
成長後の車椅子サイズを想定してスペースを確保
衣類や学用品から介助用品まで、収納量が変わることを前提に設計
将来は電動車椅子を使う可能性も考慮し、充電設備や動線を先取り
まとめ:収納も「生活動線」の一部
車椅子生活における収納は、「使いやすさ」だけでなく、
動線・介助・将来性を考慮することが大切です。
手の届く高さに配置する
車椅子の回転半径を考えた家具・扉の選択
本人と介助者の双方にとってストレスのないレイアウト
将来を見据えた柔軟な計画
収納を単なる「物をしまう場所」ではなく、生活動線の一部として設計することで、
毎日の暮らしは格段に快適になります。